起業資金の調達方法7選!借入・出資などメリットデメリット完全比較

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「借金は良いこと?それとも悪いこと?」という質問に「悪いこと!」と即答していませんか?それは一般的には正しい答えかもしれませんが、これから起業して経営者になろうという方にとっては「不正解」です。

正解は「前向きな借金は良いこと、後ろ向きな借金は悪いこと」です。全ての借金が悪いことだとお考えの方は、親や先生などから「借金したらとんでもないことになるぞ」と脅されたり、テレビ番組などで借金で失敗した事例をたくさん見聞きして「借金=悪」という洗脳をされてしまっているからかもしれませんよ。

もちろん、借金する必要がなければそれにこしたことはありません。「無借金経営」する自信がある方はこの記事はあまり役に立たないでしょう。でも、無借金経営にはトレンドに取り残されやすい、経営の自由度が限定されるなどのデメリットもあります。

そこで、この記事ではこれから起業したいけどそれを実現させるための資金が十分にない、という方がトレンドに取り残されないために選択できる7つの資金調達法をご紹介します。これにより、起業するまでの時間を大幅にショートカットできるのです!

【1】日本政策金融公庫

 

日本政策金融公庫とは?その概要

「会社を作ろうと思います。やる気はありますが、お金はありません。保証人もいません。でも、お金を貸して下さい。少しずつしかお金を返せないので金利も安くして下さい。」そんなことを言われてお金を貸してくれる赤の他人がいるでしょうか?銀行などだったら、確実に門前払いでしょうね。でも、そんなドラえもんに出てくるのびた君のような甘い考えを受け入れてくれる金融機関がある、と聞いたら信じられるでしょうか?実は、それこそが日本政策金融公庫なのです。

日本政策金融公庫とは「政府系」の金融機関です。前身である「国金」(国民生活金融公庫)の方なら聞いたことがある、という方もいらっしゃるでしょう。あくまで融資の一種なので返済の義務を負いますが、金利が安く返済まで長い期間も設定できます。起業資金の調達方法として、まず第一に考えるべき手段でしょう。

ただし日本政策金融公庫はあくまで起業を目指す人の助けであって、個人で借りる事はできません(教育ローンを除く)。また、投機目的の融資も受け付けていません。以下、日本政策金融公庫のメリットやデメリットについて見ていきましょう。

日本政策金融公庫のメリット

金利が安く、固定している

日本政策金融公庫はなんといっても金利の安さが光ります。また、民間の金融機関とは違い固定した金利で融資を受けることができます(融資制度や融資機関・担保の有無などによる金利の違いはあります)。

なぜこれが実現するのか、それは日本政策金融公庫は国が100%出資する政府系金融機関だからです。国の政策として新規起業は歓迎されていますので、その流れに沿って新しい会社を作るチャンスだと捉えましょう。

参考)新創業融資制度(無担保・無保証人)の利率一覧(平成28年11月16日現在、年利%) 基準 利率 特別 利率A 特別 利率B 特別 利率C 特別 利率E 特別 利率J    

基準利率 2.16 ~ 2.45%
特別利率A 1.76 ~ 2.05%
特別利率B 1.51 ~ 1.80%
特別利率C 1.26 ~ 1.55%
特別 利率E 0.76 ~ 1.05%
特別利率J 1.11 ~ 1.40%

 

さらに、税務申告2期以上などいくつかの条件を満たすと、さらに低い利率で借りる事ができるようにさえなってくるのです。

条件

1.税務申告2期以上

2.事業資金の融資取引が1年以上

3.当初の条件通りに、計画通り返済し続けている

4.最近2期が黒字決算(実態として黒字でなければならない)

5.債務超過ではない

6.法人から代表者への貸付金や仮払金がない

経営のことに少し詳しければ、これら6つの条件を満たすのがいかに困難かおわかりでしょう。ただ、とても有利なので利用しない手はありませんね。起業する前から、これら6つの条件を満たすような戦略を立てておくべきです。

無担保・保証人なしで巨額の融資を受けることが可能

銀行など民間の金融機関でまとまった額の融資を受ける場合、通常は担保や保証人を求められます。生命保険に契約することを条件として提示されることさえ有ります!しかし、日本政策金融公庫には、無担保で巨額の融資を受ける裏技もあります。それは、新創業融資制度を活用する方法です。

新創業融資制度を活用すると

・融資限度額が3,000万円

・起業資金(設備資金)の返済期間が15年以内

・利率が1%台~2%台

・担保・保証人が原則不要

新創業融資制度とは?

これらのメリットが享受できるのです。

自己資金が不要

これも、新規開業資金を活用する裏技の一つですが、ある条件を満たすと自己資金がほとんどなくても起業できてしまいます。その条件とは「創業する業種で6年以上のキャリアがある」ことです。すでにノウハウを持っているため貸し倒れのリスクが少ないからでしょうが、太っ腹な条件ではないでしょうか?

ただし、趣味でスイーツ作りがプロ並みにうまくて友達から「ケーキ屋さん開いたら?」と言われた専業主婦が、いくら「ケーキ作り歴10年です」と言ったところで自己資金不要の条件には当たりません。なぜなら材料の原価計算や集客のノウハウ、労務管理などに関しては全くの素人だと考えられるからです。

日本政策金融公庫のデメリット

このように魅力いっぱいの日本政策金融公庫からの融資ですが、いくつかのデメリットもあります。

担当者によって当たり外れが大きい

日本政策金融公庫の評判は二分化しています。「簡単に融資が受けられたよ」という意見と「うんざりするほど厳しかった」というものです。一般的に都心部よりも地方都市の方が審査条件が厳しい傾向にあるとも言われています。そのため、相手に応じてこちらの対応も変える必要があります。根掘り葉掘りいろいろなことを聞いてくる融資担当者に対して「そんなことまで聞くんですか?」と逆ギレしてしまったら、受けられる融資も受けられなくなってしまいます。

担保や保証人が必要な場合もある

メリットとして「担保・保証人不要」を挙げましたが、全てのケースで不要なわけではありません。融資金額が大きければ大きいほどより確かな担保が必要になりますし、初回の融資ではより難しくもなります。

もしあなたが女性であれば、「女性向け小口創業支援」を利用できます。300万円以内の融資しか受けられませんが、担保や保証人不要の条件が緩和されています。

審査期間が長い

日本政策金融公庫の審査は結構長いです。一ヶ月以上はかかると考えた方がよいでしょう。また、融資の条件として様々なアドバイスがあり、それらをクリアする必要もありますので、相談に行ってから審査の結果が得られるまで数ヶ月を見た方が良いかもしれません。

それだけ長い期間の審査を受け、挙げ句の果てに融資が受けられなかったら落ち込んでしまいますし、起業への意欲も減退してしまうかもしれません。

日本政策金融公庫のからくり

国が保証する形の日本政策金融公庫。しかし、返済期間が長いということは、長い間会社をつぶさずに経営できるということはとても大きな条件となります。逆に言えば、その条件を満たせばとても有利な融資が受けられるのです。

「税務申告2期以上」という条件の理由

国の立場で考えてみましょう。国策として日本国内に多くの企業があるということは、税収が増えるということです。長い間赤字が続いている日本という国家にとって多くの企業がつぶれずに税金を払い続けてくれると言うことは、国にとって大きなメリットなのです。

そう考えると、政府系金融機関である日本政策金融公庫が「税務申告2期以上」「最近2期が黒字決済」などの条件を満たしてくれる企業はありがたい存在ですし、だからこそ低い金利でも返済まで長い期間かかってでも融資してくれるのです。

融資を受ける対策

しかし、多くの企業が年末調整でなんとか黒字に見せかけている中で、黒字決済を継続することは非常にハードルが高いのが現状です。ですので、日本政策金融公庫と長いつきあいをしていく上で

・支出を徹底しておさえる

・単年度で大きな利益を得ない(年度をまたいで平均して利益を出すようにする)

・むやみに事業を拡張しない

などの対策が必要になります。

ケース別調達額目安

担保もしくは保証人がある、自己資金がない場合:最大7,200万円 「新規開業資金」を利用しましょう。

担保・保証人なし、自己資金が創業資金総額の10分の1以上:最大3,000万円 「新創業融資制度」を利用しましょう。

融資までのスピード

デメリットの面でものべましたが、日本政策金融公庫では融資までに時間がかかりがちです。おおむね行政サービスのほとんどは「なぜこんなに時間がかかるの?」と思ってしまうぐらい時間がかかるものですので、そういう意味では標準的なスピードとも言えますが、一刻も早く起業資金がほしい場合には困ったものですよね。

ただ、前向きに捉えればこれは起業後に行政と交渉する練習とも考えられます。行政もコンピュータ化など効率も重視して昭和の時代に比べたらスピーディーになってきましたが、民間のスピードに比べると劣ってしまいます。民間では顧客サービスを高めるためにスピードがとても大事な要素だからです。基本的に残業や休日出勤がなく、競合相手も原則的にいない行政のスピードが遅いのはある意味当然なのです。その練習と考えると良いでしょう。

日本政策金融公庫が向いている人

・融資が受けられるまで気長に待てる人

・起業の動機がきちんとのべられる人

・長期間にわたって事業を続ける自信がある人

【2】制度融資

制度融資とは?その概要

金融機関は困った経営者にお金を貸してくれない?

起業資金を調達するために、銀行などの民間の金融機関を利用しようと思っても、そう簡単にはいきません。銀行を揶揄した有名な言葉として「銀行は晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を返せと言う」というものがあります。これは言い得て妙です。困っていない人にお金を貸したがり、困っているときにお金を取り立てようとするのです。

そのくせ、銀行自身の経営がピンチになると「公的資金」によって助けてもらう、といったこともありましたね。 とはいえ、銀行とけんかしても始まりません。「雨」の状態であっても起業資金を引き出す方法はあります。その一つが制度融資なのです。

制度融資の仕組み

制度融資とは簡単に言うと、金融機関から起業資金の融資を受けるときに「地方自治体(都道府県、市町村)」と「信用保証協会」の助けを得る方法です。銀行などの金融機関としては、信用のならない新規起業者に傘を貸したら帰ってこないのでは?と疑っているのです。そこで、きちんと傘を返すことを証明し、もし返ってこなかったら弁償してくれる、そんな親切な存在、それが「信用保証協会」です。

勘違いしてはいけないのは、実際に融資をするのはあくまで金融機関であるということです。信用保証協会は信用保証をしてくれるだけの存在です。

全国信用保証協会連合会とは

制度融資のメリット

長期・低金利融資

制度融資を活用すると、通常の融資よりも金利が安くなり、さらに返済までの期間が長期にすることが可能です。金利や返済期限の例は以下の通りです。

名称 保証限度額 保証期間 信用保証料率
流動資産担保融資保証制度(ABL保証) 2億円 1年間 年0.68%
小口零細企業保証制度 1,250万円 信用保証協会により異なる 信用保証協会により異なる
信用保証協会により異なる 経営力強化保証制度 2億8千万円

運転資金:5年以内

設備資金:7年以内

0.45~2%
特定社債保証制度 4億5千万円 7年以内 0.45%~1.90%

その他にも、「創業者向け融資」や「倒産対策融資」など、一般の金融機関では扱っていない種類の融資を取り扱っています。詳しくは自治体の信用保証協会に問い合わせましょう

全国信用保証協会一覧 

自治体が借り手の負担を軽減してくれる

都道府県や市町村が信用保証協会に対する保証料を補助してくれたり、金利を一部負担してくれる場合があります。要件は自治体によって様々ですので、起業したい住所が属する自治体に問い合わせるかホームページで探してみましょう。

代位弁済

起業は100%予定通りうまくいくものではありません。もし融資を受けたものの金融機関からの借入金が返済できない、という状態に陥ったらどうなるでしょう。ご安心ください。制度融資の場合は、信用保証協会が代わりにお金を払ってくれるのです。これを「代位弁済」といいます。 ただし、借金がチャラになる、というわけではありませんよ!借金を肩代わりしてくれるだけですので、信用保証協会に対してお金を返す義務が生じます。

制度融資のデメリット

通常の金利の他に保証料の負担が発生

信用保証協会は、ボランティアで信用保証や代位弁済をしてくれるわけではありません。そのため、金融機関に対する通常の金利の他にも、信用保証協会に対する保証料の負担が発生します。それによって信用保証協会が成り立っているのですから、当然支払うべきお金ですよね。

わかりにくさ

メリットの項でも述べたとおり様々な制度が利用できますが、その反面わかりにくい、というデメリットもあります。制度の種類は非常に多く、素人にはわかりにくいです。さらに悪いことに、内容が頻繁に入れ替わってしまいます。

自治体による格差

都会と地方との格差はここにも現れています。特に制度融資の仕組みは信用保証協会と申込先となる金融機関の双方で審査を行なう仕組みであるため、どちらか一方がOKでも他方で断られる場合があります。起業者育成に積極的な自治体もあれば、たいして興味が無い自治体もあるのです。

融資までのスピード

制度融資は審査期間がとても長く、1~2ヶ月程度かかってしまいます。なぜなら、実際に金融機関からの融資を受ける前に自治体や信用保証協会からの保証を受ける必要があるからです。

制度融資が向いている人

・融資が受けられるまで気長に待てる

・自治体や信用保証協会という後ろ盾がほしい 

【3】ローン、信販会社

ローン、信販会社とは?その概要

ローンと言ってもいろいろな種類がありますが、起業資金として活用できるのがビジネスローン(事業系ローン)です。銀行と同じく民間の金融機関ですが、金利が高い反面、スピーディーに資金が得られます。  

例えばアイフルの事業者ローンであれば、無担保でも年6.0%~18.0%で融資を受けることが可能です。

アイフルについて詳しくはこちら

 

ローン、信販会社のメリット

無担保・無保証人で良い

担保や保証人がいなくて起業資金がえられない、そんな事態は避けたいですよね。ローンは学生や主婦などでもお金を貸してくれる最後の砦ですが、起業をめざすあなたにとっても同様に助けになるでしょう。

急な出費に対応

インターンネットからの融資申し込みが可能ですので、金策に忙しい最中でも簡単にお金が得られます。また、いったんカードを作成するとコンビニなどで24時間お金を引き出すことも可能になります。

ローン、信販会社のデメリット

金利が高い

借入限度額などによっても大きく異なりますが、金利がとても高いのが特徴です。ほとんどのローン・信販会社が最大金利を18.0%にしています。これは、単純に考えると、100万円を1年間借りると、

100万円×18%=18万円

つまり元本をあわせて118万円の返済義務を負うのです。

借り入れ限度額が低い

例えば上記のアイフルの無担保事業者ローンは、上限金額が500万円です。それ以上の起業資金が必要であれば、他の調達方法と併用するなどの手段が必要です。

借りているという意識が希薄になりがち

金利が高いので、早期返済しないと借金が積み上がるシステムなのですが、簡単にインターネットで借りられる分、自分がお金を借りているという意識が希薄になりがちです。返済計画をきちんと立てないと、日々の業務に忙殺されてついつい借金が積み上がるという結果になってしまいかねません。

ケース別調達額目安

例として、上記のアイフルの無担保事業者ローンで15%で100万円借りたとすると、毎月26,000円で53回(4年5ヶ月)返済し続ける必要があります。

融資までのスピード

ローンの融資スピードは最短レベルで、即日お金を得られる可能性もあります。信販会社にとっても、貸し倒れのリスクが大きい個人にお金を貸すよりも事業系ローンとして安定した経営者に貸した方が良いので、積極的に相談にのってくれて審査もスムーズにいく可能性もあります。

ローン、信販会社が向いている人

・すぐにお金がほしい

・早めに返済できる見込みがある

・つなぎ資金が必要

【4】ファクタリング

ファクタリングとは?その概要

ファクタリングのしくみは、ファクタリング会社があなた(企業)から売掛金を買い取るという方法によってあなたに現金を渡すという方法です。つまり、借金をせずにお金を借りることができてしまうという、日本ではあまり知られていないサービスなのです! このファクタリングを活用すると、あなたの会社のキャッシュフローが良くなります。そのため、設備資金の返済もスムーズにいくのです。

売掛金って何?

ここで、売掛金について整理して理解しましょう。売掛金とは、すでに相手に対して納品(サービス提供)が完了し、請求書を出しているにも関わらず手元に入ってきていない現金のことです。ですので、まだ売れていない「売れるはずの商品」を売ったお金は売掛金ではありません。

ファクタリングのメリット

未入金の売り上げを先に資金化できる

現金商売でない限り、いくら売り上げがあっても手元にお金がない状態は、とても危険です。友人同士のお金の貸し借りであれば「ツケがきく」こともありますが、会社同士の取引だとよほど親密な関係でもない限り支払を猶予してくれるわけではありません。ですので、未入金の売り上げが資金化できるというのは大きなメリットなのです。

金融機関からの融資とは審査基準が違う

「お金が払えない」という状況が一度でもあると、いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまう可能性があります。金融機関は、お金のことについてはかなりシビアにみてきますので、「ブラックリスト回避」のためにもファクタリングは優れています。 ファクタリングにおいては、取引履歴と取引先の審査が重要ですので、他社からの借り入れ状況などで金融機関からの融資が難しい場合であっても利用できる可能性があるのです。緊急時に資金ショートを回避することも可能なのです。

インターネットからの申し込み可能

ファクタリングはインターネットからのスピード申し込みが可能で、最短で即日、お金を得ることも可能です。

売掛金を売却した事実を取引先に内緒にしておける

「売掛金を売ったことを取引先にばれたらまずいのでは?」という心配はご無用です。ファクタリングでは売掛金を売却した事実が取引先にばれてしまうことは基本的にありません。 

ファクタリングを利用してみよう!

ファクタリングのデメリット

安定的な売掛金が必要

とてもお得なファクタリングですが、利用するには安定的な売掛金があることが条件です。「入るかどうかわからないお金」を買ってくれるわけでは決してありません。「未払いだけど確実に入ってくるお金」を買ってくれるのです。

売掛金の範囲内でしか資金調達できない

他の起業資金の調達方法は、うまく使えば「将来稼ぐ予定のお金」を担保にしてお金を稼ぐことが可能ですが、ファクタリングはあくまで「その時点で稼げているお金」の範囲内でしか資金が得られません。「取らぬ狸の皮算用」は通用しないのです。

調達コストが高い

ファクタリングの調達コストはけっこう高めで、調達金額の5%~25%です。その理由は、ファクタリング会社としてもリスクが大きい取引だからです。そのため、素早く支払を終えなければなりません。ちなみにファクタリングの分割払いはできません。

ファクタリングをわかりやすく解説

例えば、人類に役立つ画期的なロボットの開発・製造に成功し、その買い手が付いたとしましょう。その企業はあなたの企業が作ったロボットを1億円で買いたい、と言っています。しかし、実際にお金が入ってくるまでに一ヶ月のタイムラグがあるとしましょう。

ロボットを作るまでにすでに期間がかかっており、原材料費や人件費などもかかってしまいます。さらにその期間は工場も人も電力もほとんどそのロボットに使いってきりになってしまいます。しかも、ロボットはすぐにでも作り始めなければ間に合いません。

このケースで日本政策金融公庫や制度融資を利用した場合、1ヶ月以上の審査期間がかかるので、意味がありません。後述の出資なども間に合いません。そんな時に役に立つのがファクタリングなのです。売掛金が入ってくることが確実であればとても便利な制度なのです。 (ただし、ファクタリングを利用したからといって確実に1億円の資金調達ができるわけではありません)

ケース別調達額目安

3日以内に500万円が必要だとしましょう。その場合、「売掛金の範囲内でしか資金調達できない」ですので、500万以上の売掛金があれば起業資金の調達を受けることが十分可能です。インターネットで審査を依頼し、安定的な売掛金があることが証明できれば審査にすんなり通るでしょう。ただし、必要な金額が大きくなれば審査に時間がかかってきますので、背伸びしないようにしましょう。

資金が得られるまでのスピード

ファクタリングは、最短でその日に資金を調達することが可能です。ローン・信販会社に匹敵するスピード融資が可能なのです。

ファクタリングが向いている人

・売掛金があり、それを早く現金化したい人

・「負債」を出したくない人

・返済がスピーディーに行える人

・一時的につなぎ資金が必要な人

【5】出資を募る

出資とは?その概要

ここまでご紹介した起業資金の調達方法は、全て返済の義務がある方法でした。しかし、投資家から資金を調達する出資という方法は、なんと「返済の必要がないお金を第三者からもらう」という、ある意味究極の都合の良い方法なのです。そんな「あしながおじさん」のような人がほんとうにいるのでしょうか?もちろんなんらかのリターンを求められますので、以下のメリットとデメリットも熟読なさってください!

出資のメリット

返済する義務がない

お金を返済する義務がない、このメリットの大きさは誰もがうなずかれるでしょう。ではなぜ返済する義務がないのでしょうか?それは、出資の性質が「事業の成功を期待してお金を出す」ことだからです。相次ぐ原発がらみの不祥事などで再生可能な自然エネルギーの開発が求められていますが、それを実用化すると資金不足という壁がたちはだかっています。そのように人類の未来に役に立ちそうな事業が「お金が足りない」という理由でできないのはとてももったいないですよね。そんな時に、自然エネルギーの将来性に投資するのが出資だと考えると理解しやすいでしょう。

過去の経営実績よりも会社の将来性を出資者は見てくれる

上記の自然エネルギーの例で考えると、経営実績はほとんどないケースが多いでしょう。銀行などの民間の金融機関は、いくら事業内容がすばらしくても返済の可能性が低ければ融資してくれません。日本政策金融公庫の場合は多少可能性が高くなりますが、それでも確実ではありません。 一方で出資の場合は、過去の経営実績をそれほど問いません。火力発電や原子力発電に偏りすぎで様々な問題が2011年3月11日以降発生し続けている日本(世界も)のエネルギー事情を考えると、出資したいというお金持ちはかなり多いと考えられます。

経営者個人が出資金の連帯保証人になることはない

融資を受ける場合は様々な条件が必要になります。その典型が連帯保証人になることなどです。それに対し出資は、基本的にお金を出すのは出資者の自由意思なので、責任も出資者のものになるのです。

出資のデメリット

経営権を握られる可能性

出資を受けた場合、その出資者はあなたの会社の「株主」になります。もし「株主」になったら大きく分けて以下の3つの利益が得られます

1.会社の経営権の一部が得られる

2.配当金の利益配分が得られる

3.会社の解散時に残った資産の分配を受け取れる

株主の権利について

このうち、「1.会社の経営権の一部が得られる」は、言い換えると「出資したら経営権を握られるリスクがある」ことを意味します。もっと言えば、ある日突然あなたの会社がのっとられてしまう、という可能性が高くなるのです。ですので、調子に乗って多くの出資を募っていたら、経営がうまく行き始めたとたんに大事な会社を失いかねないことを肝に銘じましょう。

出資者を探すのがなかなか難しい

そもそも、出資をしてくれる人をどのように探すのか、という大問題があります。融資などは窓口がきちんとあり、電話で問い合わせたり、ネットで検索すればそれほど苦労せずに連絡先や起業資金を得る方法などの情報が得られます。ところが出資者を探す方法はネットに公開されているわけではありません。

ケース別調達額目安

自己資金ほぼなし、実績なしの状態で1億円の融資を受けたい、短期間でお金を返す当てがない、という条件で起業資金が調達できる可能性があるのは出資ぐらいのものでしょう。その場合、「真剣にビジネスプランを練る」ことが絶対条件です。寝食を忘れるほどの情熱を傾けてそのビジネスの成功に注力しましょう

出資を受けるまでのスピード

まず出資者を探すところから始まりますので、何ヶ月も探したあげく結局見つからない、ということも考えられます。しかしいったん出資者が見つかったら、すばやく起業資金が得られる可能性があります。出資者の多くは投資家や元起業家ですので、他のだれよりもスピードの大事さを重視しているからです。

出資を募ることが向いている人

・成長性・将来性のある事業をてがけている

・自分のビジネスプランを情熱的に、かつ論理的に語ることができる

・成功するまでやり続けることができる

【6】社債を発行する

社債とは?その概要

「社債を発行する」というのは、投資家から直接資金を調達する方法です。社債は証券会社に扱ってもらいます。銀行などの金融機関を間に介さないため、手数料などの金利がとられずに有利です。出資と似ているようですが、最大の違いは返済の義務があるということです。ですので、あくまで融資の一種と考えましょう。ただ、借りる相手が金融機関ではなく企業になるのです。

社債の仕組み

社債は、経営者であるあなたと投資家との融資契約です。「企業の借用証書」と言い換えても良いでしょう。そのため社債が発行されるときには必ず、償還日(満期までの期間)と金利が設定されています。あなたから見れば投資家からお金を直接借りることができ、投資家から見れば償還日に利息を上乗せしてお金が受け取れるのです。

社債の魅力について 

ちなみに、出資と違って経営権を奪われるようなことはありませんのでご安心下さい。

社債のメリット

リスクが少ない

社債は、契約時の融資金額に金利をのせた金額を期日に支払うという、オーソドックスな契約です。そのため、よほどのことがない限り計画通りに返済すればよいだけです。ただし、社債にもいろいろな種類のものが存在しますので、それぞれの特徴をよく知っておきましょう。

経営に干渉されず償還期間を長期間設定できる

出資と違い、経営に干渉されないのが社債発行の大きなメリットです。会社を乗っ取られることはもちろん、経営に関してあれこれ口出しをされることもないのです。投資家に対して利子を払えばそれでOKです。

社債のデメリット

返済の義務がある

社債は融資ですので、償還日までに返済しなければなりません。当然のごとく、償還のための積み立てをしておかなくてはなりません。また、金融機関を介さないため、事務手続きが煩雑になってしまいます。管理コストや作業の負担が多くなることは否めません。

金利がやや高め

社債は、ある程度金利が高くないと投資家にとって購入するメリットがありません。ですので、若干高めの金利を設定する必要があります

社債の種類

社債にはその種類に応じてリスクや金利、金額などが実に様々です。近年では投資の専門家だけでなく、個人投資家も気軽に手を出せるようになっています。

普通社債(ストレートボンド・SB)

社債の中でも一般的なのがこの普通社債です。額面が1億円やそれ以上のものが多いですが、各企業によって異なります。満期が設定されています。

転換社債(チェンジャブルボンド・CB)

普通社債と似ていますが、ある一定の価格においてその会社の「株式」と転換することができる条件がくっついています。社債にも株式にもなるのが魅力です。

ワラント債

ワラント債は、転換社債よりも一歩進んで社債と株式がセットになっています。セットなのでお得ですが、その分ハイリスクハイリターンにもなりがちです。

劣後債

劣後債とは、債務の弁済順位が低い債券です。その分、金利を高く支払わなければなりません。債務の弁済順位が低いということは、言い方を変えれば自己資金に近いお金なのです。会社の経営状況がピンチの時にお金を持って行かれるリスクが軽減します。

社債の発行が向いている人

・金融機関からの融資よりも効果的に直接金融を活用したい

・経営権を奪われたくない

【7】助成金・補助金を利用する

助成金・補助金とは?その概要

助成金・補助金は簡単に言うと「日本政府がくれるお小遣い」です。「お小遣い」なので、返す必要はありません。助成金・補助金をくれる条件は「公益上必要があるかどうか」です。例えば子どもが勉強を一生懸命したり、家のお手伝いをたくさんしたら親からお小遣いをたくさんもらえるように、なんらかの役に立つ行為に対してお金を出すのです。  

助成金と補助金の違い

助成金と補助金の違いはそれほど明確ではありません。しいていうならば、 受給できる可能性・・・「助成金>補助金」 申請までのスピード・・・「助成金<補助金」 です。 ただあえて分ける必要もないので、まとめて「助成金・補助金」と記載しております。

助成金と補助金について詳細

助成金・補助金のメリット

原則として返済不要

「借りたお金を返済しなくて良い」というメリットはいくら強調してもしきれません。しかも、【5】で紹介した出資のように経営権を第三者にとられてしまう危険性もありません。うまく活用すれば最強の起業資金調達手段にもなりえます

助成金・補助金のデメリット

期間が長い

助成金・補助金の最大のデメリットは、申請してからもらえるまでの期間が非常に長いということです。これは、起業家にとって致命的ともいえます。創業してからしばらくの間は多額の設備資金や予定外の出費がでる上、思うように売り上げが得られないケースが大半です。そのため、資金がショートしてしまうリスクに常にさらされています。助成金・補助金がようやくおりたときにはすでに廃業していた、という笑えない話にもなりかねません。 それを回避するため、融資など他の起業資金の調達方法との併用が必要になります。

望む金額が得られない

以下にご紹介しているように、それぞれの助成金・補助金には限度額があり、希望する起業資金が確実に得られる保証はありません。

起業時に利用できる助成金・補助金の種類

  採択率 補助率 補助金額 概要 
創業補助金 5% 3分の2 100万~200万円 創業経費の一部が得られる
小規模事業者持続化補助金 不明 3分の2 上限50万 商工会議所の指導や助言が得られる
ものづくり補助金 30%~40% 3分の2 500万~3,000万円 革新的なサービスや試作品開発への補助

そのほかにも、雇用促進のための「キャリアアップ助成金」や自治体独自のもの、財団によるものなどもあります。

助成金・補助金が得られるまでのスピード

助成金・補助金は申請してから実際に受け取れるまでの時間がとても長いことを覚悟しましょう。ですので、起業してすぐにでも資金が必要な時には他の調達方法と併用するなどの工夫が必要です。

助成金・補助金が向いている人

・辛抱強く行政と交渉できる

・受給まで時間がかかってもかまわない

まとめ

様々な起業資金の調達方法をご紹介してきました。どれが適しているかは、実際に起業するあなた次第です。以下の表で7つの方法を採点してみました。ご参照ください。

  スピード 金利 手軽さ わかりやすさ 返済滞納リスク
日本政策金融公庫 B A C B B
制度融資 B A C C B
ローン、信販会社 A C A A C
ファクタリング A B B B B
出資 B なし C B A
社債 B B B C A
助成金・補助金 C なし B B なし

 

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