経営者や起業家の方が、事業資金の融資を受けられる金融機関は数多く存在します。代表的な機関としては日本全国の銀行、日本政策金融公庫(日本公庫)などが挙げられますが、融資元に悩んでいる場合には「商工中金」も選択肢に含めるべきでしょう。より多くの融資元を知っておくことで、会社の資金調達はスムーズになります。
そこで今回は、商工中金の商工ローンに関する概要と、審査のコツについてご紹介していきます。
目次
■商工中金の商工ローンとは?
商工中金は特別法の特殊会社に該当する金融機関であり、正式名称は「商工組合中央金庫」です。出資者は政府と民間団体であり、預金や債権の発行といったサービスを利用できるなど、政府系金融機関の中では比較的民間の金融機関に近い特徴を持っています。
商工中金の店舗は、日本全国のすべての都道府県に最低1店舗は存在しており、出張所・営業所を含めると店舗数は100に上ります。メガバンクに比べても資産の質が見劣りしないとされており、信用性が比較的高い金融機関として評価されている点も、商工中金の大きな特徴です。
商工中金は、中小企業に対して積極的に融資を行っています。では、そんな商工中金の商工ローンには、どのような特徴が見られるのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。
【特徴その1】余計なコストを抑えやすい
商工中金の商工ローンは、一般的な融資に比べると金利が低く、利息を抑えやすい傾向にあります。具体的な適用金利はケースによって異なりますが、年利は1%~2%台が中心です。
この金利は一般的なビジネスローン(5%~18%前後)に比べても低いので、商工中金から融資を受けられれば、余計なコストを抑えやすくなるでしょう。
【特徴その2】融資期間が比較的長い
商工中金の商工ローンは融資期間が比較的長いので、余裕を持った返済計画を立てやすいと言えます。原則として、融資期間は以下のように定められています。
・設備資金…15年以内
・運転資金…10年以内
融資期間が長いローンには、長期の事業計画を立てやすいという魅力があります。例えば、これから始める事業が長期間に及ぶ場合などは、商工中金のローンは効果的な資金調達手段になるでしょう。
【特徴その3】据置期間が設定されている
据置期間とは、通常の返済金額が一時的に猶予され、返済初期には利息分の返済以外は不要な期間のことです。つまり、据置期間が設定されているローンを利用すれば、返済初期の負担を抑えられるので、会社によっては資金計画を立てやすくなります。
商工中金の商工ローンでは、以下のように据置期間が設定されています。
・設備資金…2年以内
・運転資金…2年以内
【特徴その4】中小企業でも融資を受けやすい
中小企業の中には資金繰りに苦しんでいる会社も多いので、融資を申請したものの審査に通過できないケースはよく見られます。しかし、商工中金は中小企業に向けて積極的に融資を行っているので、一般的な金融機関と比べると融資を受けやすいと言えます。
このように、商工中金の商工ローンには、ほかの融資には見られない特徴がいくつか見られます。そのため、多くの中小企業がこのローンを利用していますが、商工中金の融資においても審査が実施されます。
そこで次からは、商工中金の審査のコツについてご紹介していきましょう。
■【コツその1】早めに相談をする
商工中金の貸付条件には、「商工中金の株主になっている中小企業団体と、その構成員」という内容が含まれています。つまり、商工中金が株主になっていない場合は、構成員にならなければ融資を受けられない恐れがあります。
融資を相談する時点では構成員になっておく必要はないので、融資を希望する方は早めに相談し、構成員になる手続きなどについて尋ねておきましょう。
■【コツその2】自社の資産状況を確認しておく
これはどのローンにも当てはまりますが、会社の経営状況が悪いと審査に通過することは難しくなります。そのため、申し込みの前には必ず自社の資産状況を確認しておきましょう。
確認するべき具体的なポイントとしては、以下の点が挙げられます。
・決算書の内容
・金融機関からの借入状況
・現在行っている事業、将来行う事業の収支計画の内容
上記の点は、会社の返済能力を判断する上で必ず確認されるポイントです。もし、借入が多いなどマイナス要素が存在する場合は、可能な限りそのマイナス要素を解消する努力をするようにしましょう。
■【コツその3】相談時に必要な書類を尋ねておく
商工中金の商工ローンを利用する場合は、まずは相談を行います。この相談の場では、融資を希望する側から質問をすることもできるので、必要書類・必要資料についてきちんと尋ねておきましょう。
この際に伝えられた内容をもとに、申し込みに向けた準備を進めることになるため、疑問点・不明点はこのタイミングで解決しておく必要があります。
■【コツその4】担保や保証人を用意しておく
商工中金の商工ローンでは、必ずしも担保や保証人が必要になるわけではありません。担保や保証人の必要性は、融資を受ける企業によって異なります。経営状況に問題がない企業であれば、担保・保証人なしで融資を受けることもできるでしょう。
ただし、担保や保証人を用意しておいたほうが、相手からの信用を得やすくなります。担保や保証人の有無は、融資の可否だけでなく融資金額にも影響を与えるので、特に多くの資金を調達したい方は、事前に担保・保証人を用意しておきましょう。
■【コツその5】築浅物件を購入したタイミングを狙う
商工中金の商工ローンでは、所有している不動産も審査の対象になるとされています。規模や価値も重要ですが、不動産に関しては「耐用年数」が重視されやすい傾向にあるので、可能であれば築浅物件を購入したタイミングで申し込むようにしましょう。
もちろん、これから不動産を購入する場合には、築年数が短い物件を中心に選ぶことが大切なポイントになります。
■【コツその6】自社をアピールできるように準備しておく
商工中金の商工ローンに申し込むと、必要書類を提出した上で、審査対象者による質問に答える場が設けられます。この場においては、会社概要や事業内容、今後の計画など細かい点について尋ねられるので、全ての質問にスムーズに答えられるように準備しておきましょう。
申し込み時に必要な主な書類としては、以下のものが挙げられます。少なくとも、以下の書類の内容については、見なくても答えられるようにしておきましょう。
・会社概要をまとめた書類
・3期分の決算書
・商業登記簿謄本
・事業計画書
・設備資金の融資を希望する場合は、見積書
また、「自社のアピールポイント」について事前に考えておくことも大切です。何が自社の強みなのかを冷静に分析した上で、その部分を上手にアピールできれば、審査に通過する可能性も高まるでしょう。
■【コツその7】融資金額の設定は慎重に行う
商工中金の商工ローンに限った話ではありませんが、融資金額は審査において重要なポイントとなります。融資金額を高めに設定し過ぎると、「返済能力に乏しい」と判断されてしまう恐れがあるためです。
そのため、融資金額については事業計画や収支計画を踏まえて、現実的な金額に設定するようにしましょう。
■【コツその8】設備資金の場合は資金使途を明確にしておく
前述でも軽く触れましたが、商工中金の商工ローンで設備資金の融資を希望する場合は、見積書の提出が必須となります。したがって、設備資金の融資に関しては、資金使途を明確にしなければなりません。
設備の概要や金額、導入時期を可能な限り明確にし、不透明な部分がないように見積書や資料をきちんと作成しておきましょう。
■【コツその9】準備期間を十分に設けておく
商工中金の商工ローンでは、申し込んだ後に必要書類が追加されることもあります。追加される必要書類は、審査において重要な位置づけとなる可能性が高いので、追加書類の作成に関して手を抜かないようにしましょう。
また、ほかの一般的なローンに比べると、商工中金の商工ローンは融資実行までのスピードが早いとは言えません。相談から審査まで慎重に行われるので、融資実行までにはそれなりに時間がかかります。
そのため、準備期間は十分に設けるようにしましょう。
商工中金の商工ローンは、特に審査が厳しいローンではありません。ただし、代表者や会社の返済能力は確実にチェックされるポイントになるので、上記でご紹介したコツをしっかりと押さえた上で、準備を進めることが大切です。
また、融資実行までにある程度の時間がかかるので、融資を希望する場合は早めに行動を始めるようにしましょう。計画通りに審査が進まない可能性も考えられるため、余裕を持った計画を立てることが大切です。
■まとめ
今回は商工中金の商工ローンについてご紹介しました。いかがでしたか?
商工中金は中小企業の味方になる存在であり、一般的なローンに比べて良い条件で融資を受けられます。ただし、必ずしも融資を受けられるわけではなく、審査では代表者や会社のさまざまな部分が確認されます。融資を希望する方は、今回ご紹介したコツを意識しながら、早めに準備に取り掛かるようにしましょう。
また、会社の資金繰りを解消する手段は融資だけではありません。売掛金を売却する「ファクタリング」も効果的な資金調達方法であり、会社によっては短期間で多額の資金を用意できます。
ファクタリングには、バランスシート上で負債にならない、信用情報に影響が及ばないといったメリットもあるので、資金繰りに悩んでいる方は積極的に活用してみましょう。
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