借用書の書き方完全ガイド!法的に効果が高い金銭消費貸借契約書の作り方

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法人にとって借用書は、切っても切り離せない存在です。特に、資金繰りに悩まされやすい中小企業や個人事業主は、金銭の貸し借りをするタイミングが多いので、借用書に関する知識をしっかりと身につけておく必要があるでしょう。

では、借用書の正しい作成方法をご存じでしょうか?借用書は正しい方法で作成しなければ、深刻なトラブルにつながってしまう恐れがあります。また、金銭消費貸借契約書も借用書に似た性質を持つ書類ですが、厳密に言えば両者は異なる書類となるので、その違いも理解しておくべきでしょう。

そこで今回は、借用書と金銭消費貸借契約書の概要や、書類の作成方法についてご紹介していきます。

■借用書って?借用書と金銭消費貸借契約書の違いを解説

By: 2Tales

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金銭の貸し借りがあった場合に、その事実を証明する書類が借用書です。金銭の貸し借りに関する取り決めは、基本的に口約束でも成立するとされていますが、口約束の場合は取り決め内容に食い違いが生じる恐れがあります。一方、借用書に関しては取り決めに関する内容を記載しておけば、お互いの意見が食い違うことはありません。
万が一トラブルが発生した場合、この借用書は裁判において有力な証拠となります。金銭のやり取りにおいては、ほかにもさまざまな書類が使用されることがありますが、その中でも借用書は最も簡易な方式です。
この借用書に似た書類としては、金銭消費貸借契約書が挙げられます。では、借用書と金銭消費貸借契約書には、具体的にどのような違いが見られるのでしょうか?

 

両者の決定的な違いは、作成をする原本の数です。一般的に、借用書は原本が1部であるのに対し、金銭消費貸借契約書では2部の原本が作成されます。
借用書の場合は、金銭を貸した側が原本を保管するケースが多くなっています。一方、金銭消費貸借契約書は貸主と借主の双方が、それぞれ原本を保管する形式がとられます。
法的効力に関しては、借用書も金銭消費貸借契約書も変わりません。ただし、双方が同じ原本を保管することで、未然にトラブルを防ぐ効果があります。
具体的なルールは定められていませんが、多額の金銭を貸し借りする場合には、より確実性の高い金銭消費貸借契約書を選ぶことが望ましいと言えるでしょう。

 

■借用書のメリット・デメリット

借用書と金銭消費賃借契約書は異なる書類となるので、当然ですが書類としてのメリット・デメリットも異なります。各書類のメリット・デメリットを理解した上で、シーンに適した書類を選ぶことが望ましいと言えるでしょう。

そこで次からは、まず借用書のメリット・デメリットについてご紹介していきます。

 

〇借用書のメリット

【その1】作成の手間を省ける

借用書は1部を作成すれば問題ないので、金銭消費賃借契約書に比べると作成の手間を省けます。現金不足に悩んでいる借主にとって、時間を節約できるという点は大きなメリットと言えるでしょう。

 

【その2】余計なコストがかからない

借用書に法的効力を持たせる場合、収入印紙が必要となります。収入印紙は1部ごとに必要ですが、借用書は基本的に1部しか作成されないので、余計な収入印紙代がかかりません

また、印刷コストを抑えられるという点も、借用書のメリットと言えるでしょう。

 

【その3】貸主に関してはほとんど手間がかからない

一般的に借用書は、借主が作成するものです。借主が作成した借用書をもとに、貸主は現金を貸すと同時に借用書を受け取ります。

つまり、借用書の作成については、貸主はほとんど手間がかかりません

 

〇借用書のデメリット

【その1】貸主に不利な条件が定められる可能性がある

借用書は借主が作成するので、借主は借用書を作成する時点では、ある程度自由な条件を定められます。仮に、その内容を貸主がきちんと確認しなかった場合、貸主は不利な条件で金銭を貸してしまうかもしれません。

そのため、貸主は借用書の内容をきちんと確認した上で、金銭を貸す必要があります。

 

【その2】貸主が紛失すると、条件が分からなくなってしまう恐れがある

借用書の原本は貸主しか保管しないため、仮に貸主がその借用を紛失すると、貸し借りの条件が分からなくなってしまう恐れがあります。そうなると、深刻なトラブルに発展する可能性も考えられるでしょう。

 

 

■金銭消費賃借契約書のメリット・デメリット

では、次は金銭消費賃借契約書のメリット・デメリットについて見ていきましょう。以下を見て分かる通り、借用書とは異なるメリット・デメリットを持っています。

 

〇金銭消費賃借契約書のメリット

【その1】借主と貸主の双方が納得できる

金銭消費賃借契約書は、借主と貸主が内容に合意し、署名を行うケースが一般的です。したがって、お互いが納得する形でなければ、金銭のやり取りが発生することはありません。

借用書に比べると、トラブルを未然に防ぎやすい書類と言えるでしょう。

 

【その2】どちらか一方が紛失をしても、特に問題が生じない

金銭消費賃借契約書の原本は2部作成されるので、仮にどちらか一方が紛失したとしても、条件が分からなくなることはありません。ただし、双方が紛失をしてしまう可能性も考えられるので、紛失に気付いた時点で早めに相手方に連絡を取ることが大切です。

 

〇金銭消費賃借契約書のデメリット

【その1】作成に手間がかかる

金銭消費賃借契約書の作成には、借主と貸主の確認や署名が必要になるので、借用書に比べると手間がかかります。「少しでも早く現金を用意したい」という借主にとっては、この時間が致命的なダメージになるかもしれません。

 

【その2】借用書に比べてコストが高い

金銭消費賃借契約書は2部の原本を作成するので、借用書に比べると収入印紙代や印刷コストが高くつきます。これらのコストを、借主と貸主のどちらが負担するのかについても、事前に話し合っておくことが望ましいでしょう。

 

■法的に効果が高い金銭消費貸借契約書を作る5つのコツ

法的に効果が高い借用書・金銭消費貸借契約書を作成するには、いくつかのコツを押さえておく必要があります。そこで以下では、書類作成時に心がけておきたいコツをいくつかご紹介していきましょう。

 

【コツその1】必要な項目を把握しておく

まずは書類の作成にあたって、最低限必要になる項目を把握しておく必要があります。必要になる主な項目としては、以下のものが挙げられます。

 

・契約書の作成年月日

・借主と貸主の氏名と住所、押印

・貸し借りをした金額

・貸し借りをした年月日

・返済期日と返済方法

 

上記の中でも、忘れがちなポイントが貸し借りをした年月日です。金銭消費貸借契約は、貸し借りをした時点で発生する契約となるので、貸し借りをした年月日は必ず明確にしておかなければなりません。

また、返済期日は必須となる情報ではありませんが、未然にトラブルを防ぐためにも記載しておくことが望ましいでしょう。

 

【コツその2】利息や遅延損害金がある場合は、さらに項目を増やす

利息や遅延損害金がある場合は、上記に加えてさらに項目を増やします。増やす項目としては、以下のものが挙げられます。

 

・利息

・遅延損害金

・期限の利益の喪失

 

利息と遅延損害金に関しては、利息の支払い方法と利率を明記しておきましょう。この部分が曖昧になっていると、貸主は利息などを請求できない恐れがあります。

また、期限の利益とは、借主の返済が支払期日まで猶予される、時間的な利益のことを指します。例えば、税金を滞納した場合、元金や利息の支払いを1度でも怠った場合など、期限の利益を喪失する条件を定めておけば、貸主のリスクを抑えることにつながります。

 

【コツその3】連帯保証人がいる場合は、連帯保証人の情報も記載する

契約に連帯保証人が存在する場合は、連帯保証人の氏名と住所押印も記載するようにしましょう。連帯保証人とは、万が一借主が返済不能に陥った場合に、借主の代わりに返済義務を負う人物のことを指します。

この連帯保証人を設定することで、貸主は貸し倒れのリスクを抑えられます。

 

【コツその4】氏名や印鑑にもこだわりを持つ

氏名に関しては、基本的に直筆が望ましいとされています。プリンタなどで印刷するよりも、直筆のほうが法的効力が高いとされているので、借主・貸主ともに基本的には直筆で氏名を記載するようにしましょう。

なお、印鑑に関しては実印に加えて、印鑑証明を用意しておくことが望ましいです。

 

【コツその5】金額に関しては漢数字の大字を活用する

金額を数字や「一」などの漢数字で記載した場合、改ざんによってトラブルに発展してしまう恐れがあります。例えば、「一」に縦棒を1本加えれば「十」になるので、改ざんされる可能性がある形式で記載することは望ましくありません。

したがって、金額に関しては漢数字の大字を使用するようにしましょう。「壱」や「弐」などの大字を使用すれば、改ざんをしっかりと防げます。

 

■あなたが借り手の場合。返済が遅れそうになった場合はどうする?

上記では借用書・金銭消費貸借契約書の作り方をご紹介しました。では、仮にあなたが借主として金銭消費貸借契約を結び、返済が遅れそうになった場合は、どのような対処をすれば良いのでしょうか?

以下では、返済が遅れそうになった時の借主の対処方法をご紹介していきます。

 

【その1】資金の調達手段を探す

期日までに返済できないことが分かったら、まず考えたいのが資金の調達手段です。何らかの方法で資金をねん出できれば、問題なく返済ができるかもしれません。

法人や個人事業主が資金を調達する手段としては、以下のものが挙げられます。

 

・銀行など金融機関からの融資

・約束手形の現金化

・売掛金を売却するファクタリング

・資産の売却

 

仮に貸主から資産を差し押さえられると、その資産が競売にかけられてしまい、通常より安い価格で取引されてしまう恐れがあります。そのため、どうしても返済できないことが分かったら、自分から資産を売却することも検討してみましょう。

 

【その2】行政書士などの専門家に相談をする

弁護士や行政書士などの専門家に相談をすれば、返済への道筋を立ててもらえる可能性があります。その際には、一度自分の状況を整理し、金銭消費貸借契約書を持参した上で、専門家に状況をきちんと説明するようにしましょう。

 

【その3】貸主に相談をする

貸主に相談をする手段も、ケースによっては効果的です。真摯な態度で相談をすれば、一時的に返済を猶予してもらえるかもしれません。

ただし、その際には返済するアテがあるという部分を、貸主にしっかりと伝える必要があるでしょう。返済が難しくなった原因を正直に伝え、今後の対応策を分かりやすく伝えることが大切です。

 

■あなたが貸し手の場合。お金を返してもらえない場合はどうする?

では、あなたが貸主の場合に返済が行われなかった場合は、どのように対処をするべきでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。

 

【その1】仮差押えを行う

仮差押えとは、裁判後の強制執行(本差押え)に向けて、仮という形で相手の財産を差し押さえることです。初めから本差押えをするケースも見られますが、裁判中に相手方に資産を隠されてしまう恐れがあるので、強制執行を検討している場合は仮差押えの手続きを行うことが多くなっています。

ただし、仮差押えの手続きは簡単ではありません。仮とは言え、相手方の財産を差し押さえることになるので、仮差押えは厳正な手続きの上で成立しています。

一般的には、裁判所に対して申立てを行い、その後の面接や審理を経た後に、仮差押えの対象が決められます。手続きには時間を要するので、早めに行動することが望ましいでしょう。

 

【その2】譲歩できる条件を探してみる

後の人間関係などを考慮し、「差押えまではちょっと…」という場合には、譲歩できる条件を探してみましょう。例えば、利息や遅延損害金を減らすことで、借主が返済できる状況になるかもしれません。

ただし、譲れない部分を譲歩すると、貸主にとって不利な契約になってしまいます。譲歩できる部分を探す際には、具体的な計算も交えながら慎重に事を進めるようにしましょう。

 

■まとめ

いかがでしたでしょうか?

金銭の貸し借りが発生した場合には、法的効力を持つ借用書・金銭消費貸借契約書を作成することが大切です。貸し借りをする可能性がある方は、今回ご紹介したコツを押さえた上で準備に取り掛かるようにしましょう。

また、返済が滞った場合には、かかる時間やコスト、その後の人間関係なども踏まえた上で、適切に対処をする必要があります。不安を感じている場合は、弁護士や司法書士などの専門家に頼ってみることをおすすめします。

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