日本では家を建てる、リノベーション工事を行うという大掛かりな工事をする場合、建設業の許可申請を行う必要があります。現在営業している建設業者は、基本的にこの許可申請をもらって営業しています。
しかし許可申請というと、難しいイメージはありませんか?そこで今回は、これから建設業許可申請を行う人のために、必要な書類や手続きの手順についてご紹介します。
目次
■建設業許可とは?
建設業許可とは建設業法に定められている許可申請のことであり、軽微な建設工事以外の工事を行う建設業者に必ず必要なものです。軽微な建設工事とは、
・建築一式工事で、請負金額が1,500万円未満の工事
・建築一式工事で、木造住宅で延べ面積が150平方メートル未満の工事(ただし半分以上が店舗用である場合には、150平方メートル未満でも許可申請が必要)
・建築一式工事以外で、請負金額が500万円未満の工事
上記の3つを言います。これ以外の工事を行う場合には必ず建設業許可が必要です。申請を行う場合には定められた28種類の中から、自社で行う工事に合わせて業種を選びます。要件を満たしていれば、申請する建設業の種類は重複が可能です。
もし許可なしで工事を行った場合、建設業法違反として懲役や罰金などの罰則を科せられます。刑が科せられた場合には、5年間は建設業許可を取得できません。また下請業者が違反した場合、元請業者にも罰則が及びます。つまり、確実に500万円未満の工事しか請け負わないと分かっている業社以外の建設業者は、許可申請を行わないと上記のような罰則を科せられる可能性があります。
ただし、確実に500万円未満の工事しか請け負わないと分かっていても、建設業許可を取得する業者も多いです。なぜなら、建設業許可を持っていると社会的信用がアップし、銀行からの融資を受けやすくなったり、公共工事を請け負えるようなったりとメリットが多いためです。
もし社会的信用を得たいと思うなら、軽微工事しか請け負わない場合でも建設業許可を取得しておいた方が良いでしょう。
■建設業許可申請に必要な書類
建設業許可申請に必要な書類は非常にたくさんあります。ただ基本的にはフォーマットが決まっており、それに記入をしていく書類と、自分で取得して提出する書類の2種類があります。また個人か法人かで用意すべき書類が違います。
フォーマットが決まっている書類で、法人個人ともに必要なものは、
・建設業許可申請書(様式第一号)
・営業所一覧表(新規許可等)(様式第一号 別紙二)
・収入印紙等の貼付用紙(様式第一号 別紙四)
・工事経歴書(直前1期分)(様式第二号)
・直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)
・使用人数(様式第四号)
・誓約書(様式第六号)
・経営業務の管理責任者証明書(様式第七号)
・専任技術者証明書(新規・変更)(様式第八号(1))
・国家資格者等・監理技術者一覧表(新規・変更・追加・削除)(様式第十一号の二)
・許可申請者の略歴書(様式第十二号)
・営業の沿革(様式第二十号)
・所属建設業者団体(様式第二十号の二)
・健康保険等の加入状況(様式二十号の三)
・主要取引金融機関名(様式二十号の四)
・営業所所在地案内図
・営業所写真貼り付け用紙
上記の17種です。専任技術者の要件を実務経験によって証明する場合には、実務経験証明書(様式第九号)も必要です。
さらに個人の場合は上記に加え、以下の書類も必要になります。
・財務諸表貸借対照表(個人用)(様式第十八号)
・財務諸表損益計算書(個人用)(様式第十九号)
また、法人の場合は基本の17種のほかに、以下の書類が必要です。
・役員の一覧表(様式第一号 別紙一)
・株主(出資者)調書(様式第十四号)
・財務諸表貸借対照表(法人用)(様式第十五号)
・財務諸表損益計算書・完成工事原価報告書(法人用)(様式第十六号)
・財務諸表株主資本等変動計算書(様式第十七号)
・財務諸表注記表(様式第十七号の二)
・財務諸表附属明細表(様式第十七号の三)
様式第十七号の三の財務諸表附属明細表は、資本金が1億を超えているか、もしくは負債が200億以上ある場合以外は提出の必要はありません。
また基本の17種にある許可申請者の略歴書は、個人の場合は申請者本人のみの略歴で構いませんが、法人の場合は監査役を除く役員全員分の略歴が必要となります。
次に、自分で取得して提出をする書類ですが、基本的には以下の書類が必要です。これらは個人か法人かのほかに、状況に応じて必要なものとそうでないものがあります。
・修業(卒業)証明書のコピー
・資格認定証明書写し
・定款
・登記事項証明書
・納税証明書
・印鑑証明書
・預金残高証明書
・登記されていないことの証明書
・身分証明書
修業(卒業)証明書のコピーは、学校等で専任技術者が勉強してきたことを証明するものです。これにより、実務経験の期間を短縮できるかを判断します。資格認定証明書写しも、専任技術者の要件で国家資格が必要な場合に、きちんと資格を持っているかを証明するためのものです。
定款、登記事項証明書は法人の場合に必要です。ただし登記事項証明書は個人でも必要になる場合があります。
納税証明書は法人の場合は法人事業税、個人の場合は個人事業税のものを用意します。印鑑証明は個人の場合必ず必要ですが、法人でも必要になる場合があります。預金残高証明書は、財務諸表で自己資本が500万円未満で提出をしている場合に必要です。
登記されていないことの証明書と身分証明書は、許可申請者の略歴書と同じように、個人の場合は申請者本人のみ、法人の場合は監査役を除く役員全員分のものを用意しなければなりません。
また以下の書類は状況に応じて提出するものが違います。
・経営業務の管理責任者の確認資料
・専任技術者の確認資料
・営業所の確認資料
・健康保険等の加入状況の確認資料
経営業務の管理責任者と専任技術者の確認資料は、現在勤務しているか、過去に勤務していたか、資格を持っているか、実務経験があるかで違ってきます。もし現在勤務しているのではあれば、住民票と事業所名が記載された健康保険証のコピーで証明できます。経営業務の管理責任者であれば過去に役員であったことや、個人事業主であったことが証明できる書類があれば十分です。
専任技術者で国家資格が必要な場合は国家資格者証のコピー、実務経験が必要な場合は、過去に従業員や経営者であったことが証明できる年金記録や健康保険証のコピーで証明できます。
次に、営業所の確認資料は営業所が存在しているかを判断するためのものです。自社の物件であれば建物の登記簿謄本や固定資産評価証明、借りている事務所などであれば賃貸借契約書のコピーで大丈夫です。ただし、賃貸の場合は目的が事業用や店舗用とされていない場合、貸主の承諾書も必要です。また営業所の案内図や写真なども提出を求められます。
健康保険等の加入状況の確認資料に関しては、健康保険や厚生年金保険の保険料の領収証書、納入証明書、労働保険概算や領収済み通知書で証明可能です。
基本的には、これらの書類一式が揃っていれば申請ができますが、地域によって要件が違うこともあるため、都道府県庁に確認しましょう。
これらの種類が準備できたら、いよいよ手続きに入ります。手続きの手順は次項でご紹介します。
■【手順その1】要件を満たしているか確認する
書類を作成する前に、まずは要件を満たしているか確認しましょう。書類が揃っていても要件を満たしていなければ、建設業の許可申請はできません。
建設業申請のための要件は、
・経営業務の管理責任者が常勤でいるか
・専任技術者が営業所ごとに常勤でいるか
・請負契約に関して誠実性があるか
・請負契約をきちんと遂行できる財産的基礎や金銭的信用があるか
・欠格要件に該当しないか
・建設業を営む営業所を持っているか
上記6つであり、これがきちんと満たされているかを書類で確認します。
■【手順その2】書類を用意する
要件を満たしていることを証明する書類を用意します。書類は各都道府県の建設業課等で購入可能であり、東京都の場合は東京都弘済会用紙販売所にて販売しています。また国土交通省や東京都都市整備局のホームページからもダウンロードできます。
用意する書類は「建設業許可申請に必要な書類」で示した通りです。
■【手順その3】予備審査を受ける
東京都で申請する場合には、都庁内の相談コーナーで予備審査を受けることになっています。正式審査の前に書類の不備がないか、必要な書類は揃っているかなどをチェックしてもらいます。予備審査は初めて申請をする人のみ必要です。
■【手順その4】書類を提出する
都庁に書類を提出して、審査を待ちます。東京都の場合、新規申請をする場合には東京都都市整備局市街地建築部建設業課に予約を入れなければなりません。書類は1番窓口で受け付けています。
■【手順その5】窓口審査・窓口形式審査
書類を提出したら、窓口審査もしくは窓口形式審査があります。
窓口審査は営業所が東京都内にのみある場合に行う審査で、都知事許可です。書類がきちんと揃っているか、不備がないかなどを窓口で厳密にチェックします。不備や不足があると何度も窓口に足を運ぶ羽目になるため、注意しましょう。窓口審査の場合、審査が通れば申請手数料を納付して受付完了です。
窓口形式審査は営業所が東京都外にもある場合に行う審査で、こちらは大臣許可です。窓口では書類が揃っているかの簡単なチェックのみを行います。実際の審査は関東地方整備局が行うため、不備についての確認には時間がかかります。都庁に書類を提出したら、1週間以内に「建設業許可申請に必要な書類」で記載した「自分で取得して提出する書類」を関東地方整備局宛に郵送します。
■【手順その6】許可通知書を待つ
審査が通れば手元に許可通知書が届き、許可となります。審査は都知事許可でおよそ1ヶ月、大臣許可でおよそ3ヶ月です。大臣許可の場合、さらにその後各都道府県の営業所に届け出を行います。
■まとめ
建設業許可は複雑な要件等をクリアする必要がありますが、書類を用意し手順を踏めば、きちんと申請ができます。ただし、申請には一定の資金が必要となるので、資金を準備してから申請を行うようにしましょう。
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