約束手形を振り出して支払いを延期する5つのコツとメリット・デメリット

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仕入れなどで費用が発生する際に、「手元に現金がない…」と困った経験はありませんか?そのような場合でも、約束手形を上手に活用すれば、現金の支払いを延期できる可能性があります。

ただし、約束手形による取引は、必ずしも成立するわけではありません。手形の受取人との間で交渉をすることになるので、交渉のコツをつかんだ上で、実際に行動を起こすことが大切です。

そこで今回は、支払いを延期する方法に加えて、支払いを延期するコツや約束手形のメリット・デメリットについてご紹介していきましょう。

■支払いを延期する3つの方法を解説

約束手形を発行し、受取人との間で取引が成立すれば、その時点で現金の支払いを延期できます。この場合、延期できる期間は約束手形に記載されている「支払期日まで」となりますが、約束手形を発行した後であっても、支払いをさらに延期することは可能です。

では、具体的にどのような方法で、支払いを延期できるのでしょうか?以下では、約束手形の支払いを延期する3つの方法をご紹介していきましょう。

 

【方法その1】支払い猶予の特約を交わす

支払い猶予の特約とは、約束手形外で交わされる契約です。この特約が交わされると、振出人は約束手形に記載されている支払期日より支払いを遅らせることができます。

ただし、裏書譲渡により約束手形が第三者に譲渡されると、その特約は基本的に効力を持ちません。また、「遡求権保全手続き」と呼ばれる別の手続きが必要になる点も、この手段のデメリットと言えます。

 

【方法その2】約束手形の支払期日を変更する

手形のすべての関係者から承諾を得られれば、約束手形は支払期日を変更することが可能です。関係者全員に効力が発揮されるので、この手段は約束手形の支払いを遅らせる方法としては、最も一般的な手段とされています。

 

【方法その3】約束手形の書替を行う

書替とは、約束手形を新たに発行することを指します。新手形の支払期日を旧手形より遅い時期に設定すれば、振出人は支払いを延期できる可能性があります。

ただし、受取人が第三者に旧手形を譲渡すると、新手形の支払期日は効力を持ちません。また、旧手形を回収してから新手形を発行する場合、旧手形の効力はないものとされます。例えば、旧手形のほうが支払金額が少なかったとしても、実際に効力を持つのは新手形となるので注意しておきましょう。

 

このように、約束手形を発行した後であっても、振出人は支払いをさらに延期できる可能性があります。ただし、上記の通り手続きや関係者の承諾などが必要になるので、必ずしも支払い延期が成功するわけではありません。

また、そもそも約束手形自体を、相手方に受け取ってもらえない可能性も考えられるでしょう。そのようなケースを防ぐため、経営者の方は支払いを延期するコツをつかんでおくことが大切です。

そこで次からは、約束手形によって支払いを延期するコツについてご紹介していきましょう。

 

■【コツその1】裏書人を記載しておく

約束手形の裏書人とは、その手形が不渡り(支払いが行われない)の状態になった場合に、額面の金額を支払う義務がある人物のことです。裏書人になる予定の者は、約束手形の裏書欄に署名・捺印をすることで、裏書人になることができます。

この裏書人が記載されていれば、万一手形が不渡りの状態になっても、受取人は裏書人に対して金銭を請求することが可能です。つまり、裏書人の存在は受取人の安心へとつながるので、振出人は基本的に記載しておくことが望ましいでしょう。

 

■【コツその2】担保を用意する

土地や建物などの物的資産を保有している場合は、その資産を担保にする手段も考えられます。担保があれば、万一資金不足に悩まされたとしても、その担保を売却すれば支払い面では問題ありません。

ただし、物的資産を担保にすることは、担保を失うリスクを抱えることを意味します。例えば、営業を行っている店舗や土地など、事業に必要な資産を担保にすると、最終的に事業を進められなくなってしまうかもしれません。

したがって、担保を設定する場合には、その対象物を慎重に決めるようにしましょう。

 

■【コツその3】資金不足に陥っていることを悟られない

資金不足に陥ってることを悟られると、相手方に「不渡りの状態になるのでは?」といった不安を感じさせてしまいます。嘘をつくことは厳禁ですが、基本的には資金不足に陥ってることを悟られないようにしましょう。

仮に、仕入れと入金の時期にズレが生じており、近い将来取引先から入金される場合には、正直にその事実を受取人に伝える方法もひとつの手段です。約束手形の取引を成立させるには、相手方に信用されつつ、支払い面での安心感を与えることが重要になるでしょう。

 

■【コツその4】普段から良好な関係を築いておく

もし、初めて取引をするあまり知らない会社から、「支払いを延期して欲しい」と相談された場合、積極的に約束手形による取引を成立させるべきでしょうか?もちろん、答えはノーです。

約束手形による取引では、2者間の信頼関係が重要なポイントになります。十分に信頼関係を築けている場合は、相手方に条件を聞き入れてもらえる可能性が高いでしょう。

したがって、普段からさまざまな会社と良好な関係を築いておくことが必要です。交渉時に無理難題を吹っかけたり、高圧的な態度を取ったりすると信頼関係は崩れてしまうので、普段から言動に注意するようにしましょう。

 

■【コツその5】相手方の要求も呑む

約束手形の支払期日や金額に関して、受取人となる相手方にも何らかの要求があるかもしれません。その部分を無視して発行を進めても、相手方に聞き入れてもらえる可能性は低いでしょう。

したがって、支払期日や金額を決める際には、相手方の要求を可能な限り呑むことも検討することが大切です。ただし、取引を成立させるために無理な要求を呑むと、将来的に経営が苦しくなる恐れがあるので、譲れない部分は事前に確認しておきましょう。

 

このように、約束手形による取引を成立させるには、さまざまなコツを意識しなければなりません。特に、不渡りに対する不安に関しては、優先して取り除く必要があるでしょう。

また、現金が不足しているからと言って、必ずしも約束手形を発行するべきというわけではありません。以下では、支払いを延期するメリット・デメリットを解説していくので、参考にしながら「約束手形の振出人になるべきかどうか」を慎重に判断するようにしましょう。

 

■約束手形で支払いを延期するメリット

■【メリットその1】利息がかからない

銀行から融資を受ける方法、創業融資などを利用する方法では、返済時に利息がかかってしまいます。この利息が、将来的に会社の経営を圧迫する可能性も考えられるでしょう。

一方、約束手形で支払いを延期する方法であれば、融資とは違い利息がかかることを防げます。ただし、不渡りの状態になると受取人から利息を請求される可能性もあるので、支払期日には細心の注意を払いましょう。

 

■【メリットその2】支払いが猶予される

振出人の最も大きなメリットが、支払いが猶予される点です。支払いが猶予されることにより、振出人は一時的に資金繰りの悩みが解消され、猶予期間中に資金の調達ができます

特に中小企業においては、現金不足に悩まされるケースが少なくありません。取引先からの入金の遅れ、トラブルで発生した費用、急に発生する経費など、経営ではさまざまなシーンで現金が必要になるので、約束手形の取引方法は必ず理解しておきましょう。

 

■約束手形で支払いを延期するデメリット

【デメリットその1】不渡りによるリスクを抱える

約束手形は半年に2回不渡りの状態になると、銀行取引が停止されます。新規の貸付はもちろん、不渡りの情報は信用情報センターや全国の金融機関に共有されるので、さまざまな取引が制限されてしまいます。この状態に陥ると、会社は倒産の危機を迎えることになるでしょう。

また、1度でも不渡りの状態になった場合、取引先からの信用は大きく低下します。その結果、取引先を失ってしまったり、ビジネスチャンスを逃したりといった事態に陥りかねません。

したがって、約束手形の振出人は支払期日をきちんと守る必要があります。

 

【デメリットその2】受取人に対して不利な立場になる

約束手形の振出人になることは、「支払いを延期してもらう立場になる」ことを意味します。つまり、受取人に自社の都合を押し付けることになるので、受取人にひとつの借りを作ります。

その結果、交渉時に強気に出られなくなり、理不尽な交渉を受け入れる必要性が生じるかもしれません。約束手形の発行によって、2社間の関係性が変わってしまう可能性があるので、その点はきちんと理解しておきましょう。

 

このように、約束手形の振出人にはメリットがある反面で、真剣に受け止めるべきデメリットも存在します。これらのデメリットがあるからこそ、受取人は安心して支払いを延期できると言えるでしょう。

振出人にとって特に注意が必要になるのは、約束手形を発行したからと言って支払い義務はなくならないという点です。支払期日までに必ず現金を用意する必要があり、その期日を一度でも破ると経営が傾きかねません。

また、約束手形の支払いが、将来的に会社の経営を圧迫する可能性も考えられます。そのため、振出人は受取人から承諾を得るだけでなく、将来の支払い計画も考えた上で、慎重に約束手形を発行することが大切です。

 

■まとめ

いかがでしたでしょうか?

約束手形は振出人・受取人の合意によって取引が成立するので、振出人は相手方を説得できるように、さまざまな部分に気を付ける必要があります。現金不足に悩んでいる方は、今回ご紹介したコツを参考にしながら、今後の計画を慎重に立てていきましょう。

 

また、会社の資金繰りを解消する手段は、約束手形の発行だけではありません。あなたの会社に売掛金が存在する場合は、その売掛金を売却することで資金を得られる「ファクタリング」も、効果的な資金調達方法となります。

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