金融機関からの融資やファクタリングなど、企業が資金を調達する方法は数多くあります。「手形貸付」もそのひとつであり、手形貸付はその特徴から短期融資の調達方法として多く利用されています。
ただし、手形貸付を利用するためには、正しい手順を事前に理解しておかなければなりません。また、手形貸付にはメリットもありますが、その反面でデメリットも見られるので、手形貸付を利用するかどうかは慎重に判断するべきです。
そこで今回は、手形貸付の概要や利用の手順、メリット・デメリットなどについてご紹介していきましょう。
目次
■手形貸付とは?
手形貸付とは、簡単に言えば約束手形を担保として、銀行から融資を受ける資金の調達方法です。手形貸付は信用取引のひとつであり、ただ手形を発行しているだけでなく、融資を受けるには会社や代表者の信用力も重要なポイントとなります。
この手形貸付による融資では、返済方法を複数のプランから選べます。一括返済や分割返済などがありますが、手形貸付の返済が滞ると会社の信用力は大きく低下するため、融資を受けた側は基本的に支払期日を厳守する傾向にあります。
また、比較的手続きが簡単である点も、手形貸付の特徴と言えるでしょう。スピーディーに融資を受けられるので、頻繁に現金を用意する必要がある会社などに適した資金調達方法です。
では、手形貸付は具体的にどのようなケースで利用されているのでしょうか?
・売上金が入金されるまでに発生する、仕入れ費を支払うケース
・工事中に発生する、外注費を支払うケース
・一時的に多くの経費が発生したケース
会社が経営をしていく上では、上記のようにさまざまな費用が発生します。そういった費用が発生した場合に、必ずしも手元に現金があるとは限りません。手形貸付はこのようなケースで効果的な資金調達方法であり、必要な金額を短期間で用意できる手段となります。
ただし、手形貸付の返済が滞り、半年に2回以上不渡りの状態になると、銀行取引が停止されてしまいます。そうなると、倒産の可能性が一気に高まるので、手形貸付の返済には細心の注意を払わなければなりません。
■手形貸付と手形割引の違いは?
ここまでを読んで、「手形割引との違いが分からない…」と感じた方も多いことでしょう。手形を利用して現金を受け取る部分は共通していますが、手形貸付と手形割引では負担する利息が異なります。
手形割引では約束手形の受取権利を譲渡することになるので、融資金額が必要以上の金額に上る可能性が高まります。その全ての金額に対して利息がかかるため、自由に融資金額を設定できる手形貸付に比べると、多くの利息がかかってしまうでしょう。この違いをしっかりと理解した上で、適切な手段で資金を調達することが重要です。
では、手形貸付を利用するためには、どのような行動を起こせば良いのでしょうか?次からは、手形貸付の手順について解説していきます。
■【手順その1】融資元を探す
まずは、手形貸付を行う金融機関などを探します。手形貸付と聞いて銀行をイメージする方も見られますが、手形貸付を利用できる業者も存在しており、業者ごとに融資までのスピードや必要書類、申し込み方法などが異なります。
そのため、まずは自身の状況を整理し、「どれぐらいの金額がいつまでに必要になるのか」を明確にしておきましょう。その上で、条件に合致する融資元を選ぶことが大切なポイントです。
■【手順その2】申し込みに必要な書類をそろえる
手形貸付の融資元が見つかったら、次は申し込みに必要な書類をそろえます。融資元によって必要書類は異なりますが、一般的には以下の書類が求められます。
〇個人事業主の場合
・運転免許証や住民票などの本人確認書類
・2年分の確定申告書
・取引先の通帳の写し
・当座照合表
〇法人の場合
・代表者の本人確認書類
・2期分の決算書
・商業謄本
・取引先の通帳の写し
・当座照合表
なお、あなたの会社が赤字決算である場合は、ほかにもいくつかの書類が求められる可能性があります。融資元によっても必要書類は異なるので、融資元を決めた段階で必要書類を調べるようにしましょう。
■【手順その3】申し込みを行う
必要書類をそろえたら、申し込みへと移ります。近年ではインターネット上で申し込むことも可能になりましたが、融資元によって申し込み方法が異なる可能性もあるので、申し込み方法についても事前に確認しておきましょう。
■【手順その4】審査の結果を待つ
申し込みが完了すると、手形貸付に関する審査が実施されます。審査の傾向やスピードについても、融資元によって異なるので注意しておきましょう。
特にすぐにでも現金が必要なケースでは、審査のスピードにこだわる必要があります。最短で即日融資が可能な融資元も見られるので、お急ぎの方はそのような銀行・業者を探すことが大切です。
■【手順その5】契約を締結して融資を受ける
審査が完了すると、契約の締結へと移ります。融資金額や利息、返済期間、返済方法などに関して両者が合意したら契約が締結され、融資が実行されます。
■手形貸付のメリットは?
手形貸付は運転資金のつなぎ資金など、さまざまなシーンで活用されています。では、ほかの資金調達方法と比べた場合、この手形貸付にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
【メリットその1】融資実行までの期間が短い
手形貸付は申し込み方法が比較的簡単であり、融資実行までにかかる期間が短い傾向にあります。融資元に専門の業者を選べば、最短で即日融資を受けることも可能です。
そのため、手形貸付は短期資金の調達手段として用いられるケースが多くなっています。ただし、必ずしも審査がスムーズに進むとは限らないので、早めに行動することを意識しておきましょう。
【メリットその2】返済プランを選べる
手形貸付では、一括返済と分割返済のいずれかを選べるケースが多くなっています。会社の経営状況に応じて、都合の良い返済プランを選ぶことができれば、返済の負担を抑えた形で融資を受けられるでしょう。
また、返済期間は基本的に1年前後となりますが、業者によっては1年以上の返済プランを用意しているケースも見られます。「売上金が1年以内に入金されないかもしれない…」などの不安を抱えている方は、そのような業者を探してみましょう。
【メリットその3】同額で借り換えをすることができる
手形貸付では支払期日が設定されますが、仮に期日までに完済できなかった場合でも、同額で借り換えをすることが可能です。したがって、万一「返済が厳しい…」といった状況に陥っても、焦り過ぎる必要はありません。
取引先や顧客からの入金と仕入れのタイミングがズレる場合は、借り換えを行うことで返済期間を延ばすことも検討してみましょう。
上記のほかにも手形貸付には、
・印紙税などのコストを抑えられる
・満期に手形を呈示するだけで、支払いを請求できる
などのメリットが見られます。そのため、手形貸付は証書貸付よりも利用されるケースが多いとされており、賞与・経費の支払いや運転資金など、幅広いシーンで活用されています。
■手形貸付のデメリットは?
手形貸付は短期資金のねん出に適した手段と言えますが、ケースによっては以下のデメリットに注意しなければなりません。手形貸付が会社の経営を悪化させる恐れもあるので、事前にデメリットをしっかりと把握しておきましょう。
【デメリットその1】借入目的を見失いやすい
手形貸付は比較的容易に融資を受けられる手段ですが、その特徴によって借入目的を見失いやすい傾向があります。例えば、簡単に融資を受けられるからと言って、さまざまな資金を手形貸付によって調達すると、返済の負担は膨れ上がってしまいます。
そうなると短期返済であるという点が、経営を圧迫しかねません。手形貸付は融資のひとつであるため、事前に必要な金額と時期を明確にし、必要以上の資金を借り入れないことが大切です。
もちろん、手形貸付を行う前にはきちんと返済計画を立てて、その計画を必ず守るようにしましょう。
【デメリットその2】事業がストップするとリスクが増大する
手形貸付は短期返済であるため、入金の予定がある事業が何らかの理由でストップすると、返済リスクが一気に増大します。借り換えを行うことはできるものの、返済義務がなくなるわけではないので、滞納をすることは望ましくありません。
特に注意が必要になるのは、事業を進めるために日常的に資金を投下しているケースです。例えば、ある工事の機材代が毎日発生しており、その資金を手形貸付でねん出している上に工事がストップしてしまった場合は、短期間で資金繰りが悪化してしまう恐れがあるでしょう。
このように、「短期資金のねん出に適している」という手形貸付の特徴は、場合によっては経営リスクへとつながります。その点をしっかりと意識し、資金繰りに困らないように返済計画を立てた上で活用するようにしましょう。
■まとめ
今回は手形貸付の概要とメリット・デメリットについてご紹介しました。いかがでしたでしょうか?
手形貸付は比較的容易に融資を受けられることから、多くの中小企業が利用している資金調達方法です。融資実行までのスピードも早いので、「すぐにでも現金を用意したい…」「現金が頻繁に必要になる…」などのケースにはぴったりな手段です。ただし、メリットがある反面でデメリットも見られるので、今回ご紹介した内容を参考にしながら、慎重に今後の計画を立てるようにしましょう。
なお、安定的な売掛金が存在している場合は、手形貸付ではなくファクタリングによる資金調達も効果的な手段です。ファクタリングであれば、信用情報に影響を与えるリスクがなく、短期間で会社の資金繰りを改善できる可能性があるでしょう。
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