金銭を支払う期日を設定し、支払うことを約束して発行する手形。手形は小切手とは違い、必要資金が手元になくても取引を行うことができるので、企業によっては重要度が高いものと言えます。
この手形を扱う上で、知っておくべき知識として「手形割引」が挙げられます。経費の支払いなどによって手元にすぐに現金を用意したい場合には、この手形割引を効果的に活用することで、短期間で現金を調達できる可能性があります。ただし、手形には期限が設けられているので、手形割引を利用するのであれば事前に現金化の手順を確認し、早めに行動を起こすことが大切です。
そこで今回は、手形割引に関する概要と、現金化の流れについてご紹介していきましょう。
目次
■手形割引とは?
手形は有価証券のひとつであり、主に企業が現金を用意することが難しい場合に使用されます。取引の際に手形額面と支払期日を設定し、「支払期日までに手形額面を支払う約束」をすることで、企業などは現金の支払いを先送りできます。
手形には「為替手形・約束手形」の2種類があり、以下のように特徴が異なっています。
・為替手形…三者間の取引を伴う手形
・約束手形…二者間で取引を行う手形
日本国内においては、上記の中でも約束手形を使用するケースが一般的です。為替手形は、主に送金のトラブルがある海外との取引時などに使用されます。
前述の通り手形には支払期日が記載されますが、手形を受け取った側は支払期日の前に現金を受け取ることもできます。その場合には、銀行に「割引料」と呼ばれる手数料を支払うことで、現金を受け取れます。このように、支払期日の前に手形を現金化することを「手形割引」と言います。
国内において、この手形割引が利用されるケースは珍しくありません。例えば、あなたの会社がA社に商品を販売し、A社が約束手形で費用を支払ったとしましょう。この場合、あなたの会社にはすぐに現金が入るわけではありません。
しかし、税金や経費など、会社を経営していく上ではさまざまなコストが必要となります。約束手形を受け取っているものの、現金が手元にない状態では、これらのコストを支払うことはできません。このように、取引先の入金と経費の支払いの時期がズレるなど、「すぐにでも現金を用意しなくてはならない」といった状況で、手形割引は多く利用されています。
ただし、手形割引をするにはいくつかの手順を踏まなくてはなりません。そこで以下では、約束手形の換金・現金化の手順を日本一わかりやすくご紹介していきましょう。
■【手順その1】裏書欄に記名・捺印をする
まずは、手形の裏書欄に記名・捺印をすることで、第三者に約束手形の受取権利を譲渡する意志を示します。この裏書欄には、主に以下の情報を記載します。
・手形を譲渡する年月日
・会社名と会社の住所
・代表取締役の署名
・手形を譲渡する相手方
・目的
裏書欄の記載方法が分からない場合には、銀行や手形割引業者に「手形割引をしたい」旨を伝えて、記載方法を尋ねるようにしましょう。なお、会社名や氏名などが間違っていると、手形の効力がなくなってしまう恐れがあるので注意が必要です。
■【手順その2】手形割引の申し込みをする
次は、手形を譲渡する相手方を探します。手形譲渡の相手方は、主に銀行と手形割引業者の2つに分けられます。どちらを選んでも問題ありませんが、銀行と手形割引業者には以下のような違いが見られるので、注意しておきましょう。
・現金化までのスピード…銀行は約3営業日、手形割引業者は最短で即日の現金化も可能。
・対応時間…銀行に比べると、手形割引業者のほうが営業時間が長い。
・担保の必要性…銀行では割引枠の増枠を希望する場合など、ケースによっては不動産の担保が必要になる。手形割引業者では原則不要。
手形譲渡の相手方を見つけたら、次は手形割引の申し込みを行いましょう。手形割引の申し込みは、電話やメール、FAX、来店などによって行えます。相手方によって申し込みの方法は異なるので、事前に調べておきましょう。
なお、手形割引を申し込む際には、一般的に以下の書類が必要となります。
・通帳など、普通預金口座や当座預金口座を確認できるもの
・登記簿謄本や不動産登記簿など、会社の概要が記載されている書類
・住民票や免許証など、代表者の本人確認書類
・代表者と法人の印鑑証明書
・3期分の決済書や納税証明の申告書など、会社の経営状況を確認できる書類
・源泉徴収書など、代表者の収入を証明できる書類
必要書類についても相手方によって異なる可能性があるので、申し込みの前にしっかりと確認しておくことが大切です。
■【手順その3】審査の結果を待つ
手形割引の申し込みが完了すると、銀行や業者による審査が行われます。当然ですが、この審査に通過しなければ手形を現金化することはできません。
手形割引の審査では、会社の経営状況がひとつのポイントになりますが、申請者の信用情報も審査には影響を与えます。過去に何らかの金融事故を起こしていると、審査に通過できる可能性が下がってしまうので注意しておきましょう。
■【手順その4】契約書類を作成する
審査によって手形の見積もり結果が判明したら、契約書類の作成へと移りましょう。契約書類は申請者が作成し、銀行や手形割引業者に提出をすることになります。
契約書類の作成においても、上記でご紹介した登記簿謄本などの書類が必要です。相手方によって必要書類は異なるので、審査が完了した段階で必要書類について尋ねておくことが望ましいでしょう。
■【手順その5】手形が現金化される
契約書類が相手方に受理され契約が締結されると、約束手形が現金化されます。
上記でご紹介した手順は一般的なケースとなりますが、相手方によっては具体的な手順が異なることもあるので、申し込みの前に手順を尋ねておくことが望ましいでしょう。
■手形を現金化する時の注意点
約束手形を現金化する際には、注意するべきポイントがいくつかあります。下記でご紹介するポイントを軽視すると、「現金化ができない」「現金化が間に合わなかった」などの事態に陥りかねないので、申し込みの前に必ず確認しておきましょう。
【注意点その1】手形をしっかりと管理する
手形は紛失をすると、支払いを依頼できなくなります。もちろん、手形割引も利用できない恐れがあるので、手形はしっかりと管理するようにしましょう。
なお、中には期日まで手形を管理してくれる銀行なども見られます。「紛失が心配…」という方は、そのようなサービスを利用することも検討してみましょう。
【注意点その2】銀行では割引枠が設定される
銀行の手形割引については、代表者や会社の状況などによって、一定の「割引枠」が設定されます。この割引枠を超えた金額を現金化したい場合には、基本的に増枠を申請しなければなりません。
一般的に割引枠の増枠では、別途担保が必要になるとされています。多くの金額を現金化したい方は、増枠のために不動産などの担保を用意するか、もしくは上限が設定されない手形割引業者の利用を検討してみましょう。
【注意点その3】新規の取引では日数がかかりやすい
初めて手形割引を利用する場合は、慎重に審査が行われるケースが多いので、現金化までに長い日数がかかってしまうこともあります。そのため、手形割引を検討し始めたら、早めに行動することを意識しましょう。
「普段から手形の期日取立をしている」という場合でも、審査に長い時間を要するケースは珍しくありません。手形の期日取立は、手形割引の実績とはみなされない可能性もあるので注意が必要です。
なお、「少しでも早く現金化したい」という方には、銀行よりもスピーディに現金化ができる手形割引業者の利用がおすすめです。
【注意点その4】手形割引の審査のポイントをつかんでおく
手形割引の審査基準は、相手方によって異なります。ただし、多くのケースでは以下のポイントが重視されるでしょう。
・振出人の決済能力
・申請者が不渡りを買い戻す能力
振出人とは、約束手形を発行した者のことを指します。約束手形の受取権利を譲渡された銀行などは、振出人から現金が支払われなければ、利益を得ることはできません。そのため、振出人の決済能力は審査の重要なポイントと言えます。
また、振出人の支払いが滞ることを「不渡り」と言いますが、不渡りの状態になると手形割引が成約した後であっても、申請者は約束手形を買い戻さなくてはなりません。したがって、審査では「申請者に不渡りを買い戻す資金があるかどうか」も重要なポイントとなります。
【注意点その5】契約書類の提出方法に注意
契約書類の提出方法は、郵送と来店の2つに分けられます。通常の郵送では、書類が受理されるまでに時間を要してしまう恐れがあるので、急いでいる方は速達、もしくは来店による書類の提出を検討しましょう。
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
手形割引は資金繰りの問題を解消する手段ですが、現金化までの手順を正しく理解しておかないと、スムーズに現金を得ることはできません。また、相手方選びによって手順や必要書類、現金化までのスピードなどが異なるので、その点にも注意しながら今後の計画を立てていきましょう。
また、手形割引以外にも資金の調達方法はいくつかあり、代表的なものとしては売掛金を売却することで資金を得られる「ファクタリング」が挙げられます。あなたの会社に安定的な売掛金がある場合は、ファクタリングを利用することで短期間で多くの資金を用意できる可能性があります。
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