会社の経営や融資に大きく関わる、「短期資金」「長期資金」という2つの言葉をご存じでしょうか?短期資金と長期資金は異なる特徴を持った資金であり、各資金の調達方法を間違えると、会社の経営が大きく傾いてしまう恐れがあります。会社の経営にはさまざまな資金が必要となりますが、これらの資金を短期資金・長期資金にしっかりと分けて、適切な方法で各資金を調達しなければなりません。
そこで今回は、短期資金と長期資金に関する概要と、この2つの違いなどについて分かりやすく解説していきましょう。
■短期資金とは?
会社の資金のうち、1年未満で回収する資金のことを短期資金と言います。短期資金は1年未満という短いサイクルで回る資金なので、基本的には毎年発生する資金と考えておきましょう。
では、この短期資金には、具体的にどのような資金が含まれるのでしょうか?短期資金に含まれる資金について、以下で詳しく見ていきましょう。
〇決算資金
国に納める法人税や株主に支払う配当金、役員賞与など、決算時期に支払う資金のことを決算資金と言います。会社の決算は年に1回であるため、決算資金は次回の決算までに回収し、毎年用意をしなくてはなりません。
〇賞与資金
多くの会社は、年に数回ほど従業員に対して賞与を支給しています。この賞与資金も毎年必要になるものなので、一般的には短期資金として扱われています。
ただし、決算資金とは違い、賞与が年に複数回ある場合にはその都度資金を用意しておく必要があるので注意が必要です。
〇季節資金
会社の事業によっては、特定の季節に必要な資金が増えることもあるでしょう。例えば、暖房器具を中心に取り扱う会社は冬場が近づくと商品の需要が高まるので、特定の時期に必要な仕入れ費が増えてきます。そのような、特定の季節に必要性が高まる資金のことを季節資金と言います。
会社によっては、季節資金に決算資金や賞与資金を含めるケースも見られます。ただし、決算資金や賞与資金以外にも季節資金が発生する場合は、各資金を明確に区別するために、決算資金・賞与資金・季節資金の3つに分けられるケースが多くなっています。
〇つなぎ資金
金融機関などから融資を受けている場合、会社の入金日と融資の支払日にズレが生じるケースは多々見られます。例えば、入金日が毎月月末であり、支払日が毎月20日のケースでは、入金日より前に支払資金を用意しなくてはなりません。
このように、入金日と支払日のズレによって、一時的に必要になる資金のことをつなぎ資金と言います。つなぎ資金が必要になると、ほかの金融機関などからさらに融資を受ける必要性が生じる可能性もあります。そのため、基本的にはつなぎ資金が発生しないように、決算条件や返済条件を工夫することが望ましいとされています。
上記の中でも、決算資金・賞与資金・季節資金の3つは、まとめて「臨時運転資金」と呼ばれることもあります。一般的な会社では毎年さまざまな資金が必要になるので、それぞれどの短期資金に該当するのかを一度整理しておきましょう。
■長期資金とは?
短期資金に対して、回収が1年以上の長期に及ぶ資金を長期資金と言います。短期資金とは違い、長期資金は毎年必要になる資金ではないので、回収までの時期が1年以上になっても大きな問題とはなりません。
では、この長期資金には具体的にどのような資金が該当するのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。
〇経常運転資金
経常運転資金とは、通常の経営状態で発生する経常的な資金のことを指します。会社が行う事業は、必ずしも1年単位で結果が出るわけではないので、経常運転資金の回収に1年以上かかるケースは多く見られます。
経常運転資金の具体的な金額は、以下の計算式によって算出することが可能です。
経常運転資金=売掛金+棚卸資産+受取手形-(買掛金+支払手形)
〇増加運転資金
会社が販売する商品やサービスの売上が増加すると、さらに多くの商品やサービスを提供する必要があるので、必要な運転資金は増加します。この経常運転資金から増加した分の資金を、増加運転資金と言います。
一般的に、会社にとって売上が伸びるのは良いこととされていますが、その反面で必要な運転資金が増えるので、増加運転資金が会社の経営を圧迫するケースも珍しくありません。また、運転資金を増加しても、商品やサービスの売上金がすぐに会社に入るわけではないので、増加運転資金は一般的に長期資金として扱われています。
長期資金は回収が長期にわたるので、短期の融資を利用して長期資金をねん出すると、会社の資金が不足する可能性があります。例えば、経常運転資金の回収に3年かかる事業を行っている場合、返済期間が3年未満の融資によって長期資金を用意すると、売上金が会社に入る前に融資の完済時期を迎えます。資金に余裕がない会社がこのような状況に陥ると、経営破たんのリスクが高まります。
そのため、長期資金は短期資金とは分けて考え、資金を慎重にやりくりすることが大切になるでしょう。
■短期資金と長期資金の違いを徹底解説!
ここまで、短期資金と長期資金について、基本的な知識をご紹介してきました。では、次からはこの2つの違いをより深く理解するために、具体的な違いについて見ていきましょう。
【違いその1】金額
一般的な会社では、短期資金と長期資金の金額は大きく異なります。上記でご紹介したように、短期資金にはさまざまな種類の資金が含まれるので、「短期資金のほうが金額が大きいのでは?」と感じている方もいることでしょう。しかし、長期資金のうち経常運転資金には、土地や建物などの不動産購入費用や会社の設備費用など、金額が大きい費用も含まれてきます。
これらに加えて、商品やサービスに関する仕入れ費も、経常運転資金のひとつです。つまり、長期資金には商品やサービスの製造に関するほとんどの費用が含まれるので、短期資金に比べると長期資金のほうが高額と言えるでしょう。
【違いその2】適した資金の調達方法
金額や回収時期が異なれば、もちろん資金の適した調達方法も変わってきます。1年未満で回収できる短期資金については、短期の融資を利用しても問題ないでしょう。
一方、長期資金は回収まで長い期間を要するので、自己資本や長期負債で調達する方法が一般的です。特に、長期資金は具体的な回収時期がはっきりとしない可能性もあるので、慎重に調達方法を選ぶようにしましょう。
【違いその3】融資を受けた場合の金利
資金の調達方法が変われば、当然融資を受けた場合の金利も異なります。一般的に、融資では返済期間が短いと金利が安くなる傾向にあるので、短期資金は金利を抑えやすい資金と言えます。
ただし、金利のみを重視して調達方法や返済期間を選ぶと、会社の経営を圧迫しかねません。会社によっては、金利が高くなっても返済期間を多少延ばし、月々の返済の負担を軽減することが望ましいケースも見られます。
そのため、各資金の調達方法は会社の経営状態から慎重に判断するようにしましょう。
■短期資金と長期資金のバランスを考えよう!
短期資金と長期資金のバランスは、会社の経営に大きな影響を及ぼします。例えば、短期資金に比べて長期資金が多すぎると、資金の回収までに長い時間を要するので資金のやりくりに困ってしまうでしょう。
では、短期資金と長期資金のバランスを整えるには、どのような行動を起こせば良いのでしょうか?ケースによって起こすべき行動は異なりますが、以下では短期資金と長期資金のバランスを整える基本的な方法をご紹介していきます。
【手順1】各資金を分類し、各資金に関して今後の対策を立てる
まずは、会社の各資金を短期資金・長期資金に分類しましょう。会社の貸借対照表を確認すれば、会社にどのような資金が生じているのかを把握できるはずです。
各資金を分類し終わったら、次は短期資金・長期資金に関する対策を立てていきます。対策の具体例としては、以下のものが挙げられるでしょう。
・短期資金…有価証券を売却する、短期融資の条件を変更する
・長期資金…遊休不動産がある場合は売却する、資本金を増資する、長期融資の条件を変更する
【手順2】キャッシュフロー計算書を整理する
キャッシュフロー計算書とは、会社のキャッシュフロー(お金の流れ)を一会計期間でまとめたものです。この計算書において、お金が流れる順番を正しく整理することで、各資金を支払った後の経営状況を確認できます。
仮にいずれかの費用を支払った後に、会社に残った資金が少ない場合は、【手順1】で検討した対策を実行する必要があるでしょう。
このように、短期資金と長期資金のバランスを整えるには、会社のキャッシュフローを明確にする必要があります。資金が減少すると、その分会社の経営リスクは高まることになるので、経営者はお金の流れを細かくつかんでおく必要があるでしょう。
■まとめ
今回は、短期資金と長期資金について解説してきました。
短期資金・長期資金はそれぞれ異なる特徴を持った資金であり、特に適した調達方法が異なる点には注意をしなければなりません。会社の経営リスクを抑えるには、「いつどのような資金が必要であり、どのように調達するのが望ましいか」を常に考えておく必要があります。会社の運営には資金が必須となるので、今回ご紹介した方法を参考にしながら、短期資金・長期資金のバランスを定期的に整えるようにしましょう。
また、短期資金と長期資金を見直した結果、中には「資金調達の方法が見つけられない…」と悩んでしまう方もいることでしょう。そのような方には、売掛金を売却することで資金を調達できる、「ファクタリング」と呼ばれる方法がおすすめです。ファクタリングであれば、信用情報が残ることはありませんし、ケースによっては短期間で多額の資金を調達することも可能です。
ファクタリングにはほかにもメリットがあるので、興味を持った方はファクタリングに関する無料診断も行える「資金調達プロ」のホームページへアクセスしてみましょう。