開業資金の融資を受ける5つのコツ!開業前に絶対知るべき審査ポイント

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物件費や設備費、人件費など、開業時にはさまざまな費用がかかってきます。これらの費用を、全て自己資金でまかなう方も見られますが、無理をして自己資金のみで用意するべきではありません。会社の経営には、多額に上る初期費用だけでなく運転資金維持費も必要となるので、多くの方は融資によって開業資金を準備しています。

しかし、融資元の選択肢は国内だけでも数多くあるため、融資元選びで迷ってしまう方も見られます。そのような場合は、日本政策金融公庫の新規開業資金の利用を検討してみましょう。

ここでは、新規開業資金についての概要や、新規開業資金の融資を受けるコツについて解説していきます。

■どこから借りる?迷ったら新規開業資金を検討しよう!

日本政策金融公庫(日本公庫)は政府系金融機関であり、銀行から融資を受けられなかった中小企業や起業家を中心に、支援することを主な目的としています。そのため、日本公庫は起業家向けの制度を複数実施しており、その代表的な制度が新規開業資金にあたります。

新創業融資制度も代表的な制度として挙げられますが、この2つの制度は融資限度額や返済期間などの面が異なります。まずは以下で、新規開業資金の特徴を見ていきまょう。

 

〇融資限度額

新規開業資金の融資限度額は、最大で7,200万円とされています。ただし、そのうち運転資金は4,800万円までと定められているので、資金使途によっては融資を受けられる金額が限られます。

また、実際の融資額は起業家によって異なっており、最初から7,200万円を借り入れられるわけではないという点にも注意が必要です。担保や保証人次第では1,000万円以上の融資を受けられる可能性もありますが、初めて融資を受ける場合の金額は1,000万円までが目安とされています。

〇自己資金によって融資額が変わる

新規開業資金で融資を受けられる金額は、基本的に自己資金の2倍までとされています。つまり、500万円の自己資金を用意している方は、1,000万円が融資額の目安となります。

自己資金が少ない場合は多額の融資を受けられないので、注意しておきましょう。

〇変動制の利率

金利の利率は変動制であり、経営状況や借入期間によって異なります。具体的な数値としては、年利0.7%2.3%が目安になると考えておきましょう。

例えば、1,000万円の融資を受けたとすると、1年間に7万円~23万円の利息が発生します。

〇返済期間

設備資金については20年以内、運転資金については7年以内が返済期間として設定されています。

 

このように、新規開業資金は初めての方でも1,000万円前後の融資を受けられる可能性がある制度です。ただし、この制度を利用するためには、以下の条件のうちいずれかを満たさなければなりません。

 

・現在勤務中の企業と同じ業種の事業を始める方のうち、同じ業種での勤続年数が6年以上であること

・始める事業の業種に関して、大学などで専門的な技能を習得しており、関連した職種に継続して2年以上勤めていること

・工夫した技術やサービスを生み出し、多様なニーズに対応できる事業であること

雇用を生み出す事業であること

・国から認定特定創業支援事業を受けた上で事業を始めること

地域創業促進支援事業からの支援を受けた上で事業を始めること

・日本公庫が参加している地域の、創業支援ネットワークからの支援を受けた上で事業を始めること

・日本公庫と金融機関の協調融資を利用して事業をはじめること

 

上記のいずれかを満たし、事業開始後おおむね7年以内の方であれば、新規開業資金を利用できる可能性があります。つまり、新規開業資金は起業後も利用できる制度なので、すでに起業している経営者の方にも融資を受けるチャンスがあります。

新規開業資金|日本政策金融公庫

 

■新規開業資金の融資を受ける5つのコツ!

新規開業資金は、上記でご紹介した条件を満たしていれば、必ずしも利用できるわけではありません。通常の融資と同じように、この制度でも申し込み後に審査が行われるので、利用するためには審査に通過する必要があります。

そこで以下では、新規開業資金制度の審査に通過するコツを5つご紹介していきましょう。

 

【その1】合理的な事業計画を練る

新規開業資金においても、やはり事業の内容は重視されるポイントです。事業計画書を活用して、ただ単に事業の内容を説明するだけではなく、審査担当者に事業の成功率が高いことを納得させる必要があるでしょう。

したがって、事業計画書を作成する際には、合理的根拠のある内容を心がけることが大切です。では、合理的内容のある事業計画を作成するには、どのようなポイントを意識すれば良いのでしょうか?

 

〇1年分の収支予定表を記載する

収支予定表とは、会社の収入と支出の内訳を記載した書類のことを指します。この収支予定表は、実は申し込みの時点で必須になる書類ではありません。

しかし、具体的な収支計画を提出することにより、事業計画書の説得性が高まります。ただ数値を記載するだけでなく、「なぜその数値が算出されるのか」という点に注意しながら、根拠のある収支予定表を作成しておきましょう。

〇政府の各種統計を利用する

資料を参照して事業計画書を作成する場合、その資料に信用性がなければ意味がありません。そのため、記載する数値に根拠を持たせるために、政府などが公表している各種統計を利用するようにしましょう。

規模の小さい会社を設立する場合には、「小企業の経営指標」が使用されるケースが多くなっています。

小企業の経営指標

 

【その2】複数年分の計画書を作る

新規開業資金で融資を受けた資金は、数年間にわたって返済をすることになります。つまり、数年間は経営状態が良好でないと、スムーズに返済をすることができません。

したがって、1年分の事業計画書では審査担当者を説得できない可能性があります。審査担当者は会社の将来性も細かくチェックするので、最低でも3年分の計画は用意しておきましょう。

特に売上計画書など、会社の経営に直接関わってくる計画については、細かい予測を立てておかなくてはなりません。売上計画書については具体的な金額だけではなく、その売上を実現させるまでにかかる期間も分析しておきましょう。高い売上を実現できても、その売上を実現するまでに長い期間がかかるようであれば、会社の利益性は高いとは言えません

 

【その3】分かりやすくプレゼンできるように準備をする

前述でもご紹介しましたが、新規開業資金では申し込みの後に面接が実施されます。この面接は起業家にとってアピールのチャンスとなるので、事前にきちんと準備を進めておきましょう。

具体的な準備としては、まず必要資料を十分にそろえておく必要があります。数値に関する資料はもちろん、専門性の高い事業に関してはその内容を分かりやすく伝えられるように、情報を補足する資料を作成しておきましょう。ただ単に数値を並べるのではなく、グラフや図表を上手に使うことで、審査担当者の理解度を高められます。

また、面接当日に質問される内容を想定して、答えをあらかじめ考えておくことも大切です。事業内容だけでなく、起業家の能力も判断材料になる可能性があるので、全ての質問にスムーズに答えられるようにしておきましょう。

 

【その4】借入金返済のシミュレーションを考えておく

融資の審査では、「借入金を返済できるかどうか」というポイントが何より重視されます。計画通りに返済されなければ、融資元は損をしてしまうリスクがあるためです。そのため、借入金返済のシミュレーションを事前に立てておき、それに関する資料も事前に作成しておくことで、審査担当者を安心させられる可能性があるでしょう。

法人に関しては、当期利益が予定返済額を超えていれば、問題なく返済できる計算となります。ただし、個人事業者に関しては、当期利益を計算する際に自身の給料を差し引かないので、以下の式を満たさなければ返済能力があるとは認められません。

 

当期利益>予定返済額+事業主本人の給与

 

上記の事業主本人の給与とは、すなわち「生活費」のことを指します。1年間にかかる自分の生活費を大まかに計算し、上記の式に当てはめて成立するかどうか確認しておきましょう。

なお、シミュレーションをした資料を改ざんする行為は、もちろん望ましくありません。審査担当者の信用を失うどころか、毎月の返済が苦しくなることが予測されるので、資料の改ざんは結果として会社の倒産リスクを高めてしまうでしょう。

 

【その5】経営の問題に直面した時の打開策を考えておく

質の高い事業計画書を作成したとしても、その計画書通りに経営が進むわけではありません。消費者の需要は変化しますし、思わぬ経営トラブルが生じる恐れもあるためです。

そのため、審査担当者も提出された事業計画書通りに経営が進むとは考えないでしょう。しかし、経営の問題に直面した時の打開策を考えておけば、会社の経営リスクを抑えることができます。

例えば、これから始める事業が低価格戦略に該当する場合は、差別化戦略に変更する手段などを記載することで、経営リスクが低いことをアピールできるでしょう。経営のリスクヘッジを考える際には、将来的に起こる可能性があるあらゆる事象を想定して、全てのリスクに対して対策を立てることが重要です。もちろん、根拠のある具体的なデータを記載しておくことも忘れてはいけません。

政府の統計や市場などを徹底的に分析した上で、説得性の高い打開策の作成を目指しましょう。

 

■まとめ

新規開業資金は、これから初めて事業を始める方にとって大きな助けとなる制度です。ただし、初めての方でも1,000万円の融資を受けられる可能性があるとは言え、審査に通過しなければ次に進めません。

審査では、事業計画に関するさまざまな内容が確認されるので、今回ご紹介したコツを押さえた上で説得性の高い事業計画を作成していきましょう。

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