「起業して自分の夢の実現に向けて挑戦したい」「独立して自分の力を試してみたい」など、積極的に起業を考えている方はいませんか?社長になって自分の会社のかじ取りをすることは、とても魅力的な仕事と言えます。自分の努力次第では、どんな夢にもチャレンジすることができるでしょう。
起業のタイミングは人それぞれであり、仲間との出会いや事業への投資のオファーなどがきっかけとなり、あなたも急に会社を設立することになるかもしれません。そんなチャンスを逃さず、絶好のタイミングで起業するためにも、起業の仕方を知っておくことは重要です。
そこで今回は、初めての方でもスムーズに起業するための6つの手順をご紹介いたします。
■起業の手順を徹底解説!
一般的に、起業をするときには法人を設立しますが、法人には株式会社や合同会社、NPOや社団法人など、さまざまな形態があります。それぞれ設立の条件などは異なりますが、今回は一般に最もなじみがある、株式会社を設立するための手順を中心にご紹介していきます。
【その1】会社名を決定する
最初に決めるのが会社名です。現在では英語表記での登記も認められるようになりましたので、自分の思い通りの社名をつけることができます。ただし、会社名の前後どちらかに「株式会社」と表記する必要があります。
会社名は、会社の顔とも言えます。これから事業を継続して行くうえで常に前面に出てくるものなので、事業を連想させる社名、サービスや商品と同じ社名など、社長の想いをしっかりと表現した社名をつけるようにしましょう。
【その2】定款に記載する事項を決定する
会社を設立するためには、定款を記載する必要があります。定款とは、会社の根本規則を記載するための書類であり、定款を記載するにもさまざまな決め事をしなければなりません。
まずは事業目的です。事業目的は、設立した会社が、どのような事業を行っていくのかを明文化したものです。事業目的に記載されていない事業は行うことができないため、しっかりと検討したうえで決める必要があります。記載する数は、一般的には4項目~5項目前後であり、多くて10項目が目安となります。
続いて、本店所在地を決めます。会社を設立するためには、会社の本店(本社)の場所を決めなければなりません。本店は1か所だけであり、自宅や貸事務所、レンタルオフィスなど、基本的には自由に登録できますが、賃貸の場合は本店所在地にできない契約になっている場合がありますので、事前に確認するようにしてください。
次に、出資者や取締役などを決めます。資本金は1円でも認められますが、実際に事業を行う上では、最低半年分の運転資金を用意しておくことが望ましいとされています。資本金を決めたら、この資本金を誰が出資するのかについても決めておきましょう。
さらに、誰が取締役になり、その任期は何年なのかも明文化することが必要です。通常は、出資者や取締役は創業時のメンバーになることが一般的です。
そのほかにも、取締役会設置の有無、事業年度の設定など、会社に関する詳細をひとつずつ決めていきます。
【その3】類似商号調査を行う
上記の内容が決まったら、類似商号調査に取りかかります。類似商号調査は必須になるものではありませんが、基本的には行っておくことが望ましいと言えます。
新会社法においては、所在地が同じでなければ、近隣にある会社と同じ名前をつけても問題ありません。しかし、そのようなケースでも先にこの社名を使っていた会社から、「不正競争防止法」により訴えられる危険性があります。
また、同じ会社名では取引先やお客様が間違えてしまう可能性もあるため、本店所在地を管轄する法務局で類似商号調査を行って、同じような会社名の登記がないかを事前に確認しておきましょう。
【その4】定款の認証を受ける
類似商号調査で問題がなければ、会社名や事業目的、出資者、取締役などを記載した定款を作成します。定款は、「会社の憲法」と呼ばれることもあり、会社を経営していくうえでのさまざまな決め事を記載します。この定款は作成義務がある書類であり、設立登記に必要となります。
定款が完成したら、公証人に定款を認証してもらいます。定款認証とは、正しい手続きにより定款が作成されたことを公証人が証明することであり、定款認証を行うのは公証人の権限となります。つまり、公証人以外が定款認証することはできません。
定款の認証に必要なものは以下の通りです。
・定款3部
・出資者(発起人)全員の印鑑証明
・40,000円の収入印紙
・公証人に支払う手数料、50,000円
・定款の謄本(写し)交付手数料、約2,000円
・代理人が定款認証を行う場合には委任状
【その5】発起人の預金口座に出資金を振り込む
次は発起人になる人の預金口座に、資本金となる出資金を振り込みます。発起人の名義の口座であれば特に指定はありませんが、預金口座の残高では認められないため注意してください。銀行口座に振り込んだ証明が必要になるので、口座の残高を資本金にする場合には、自分の口座に振込み直す必要があります。
発起人すべてから資本金が口座に振り込まれたら、振込み証明書の作成のため通帳のコピーを取ります。コピーをとる場所は、「表紙」、「最初の見開きの口座番号や氏名が記載されているページ」、「入金が記載されているページ」の3つです。
最後に振込み証明書を作成し、通帳のコピーとまとめて登記申請時の提出書類を作成します。
【その6】法務局で登記申請を行う
定款の準備ができ資本金の振込みも終了したら、いよいよ登記申請です。登記に必要となる書類は以下の通りです。
・定款:公証人により定款認証を受けたもの。
・資本金の払い込み証明書:定款で記載している資本金と同額の資本金が入金されていることを証明する書類。
・発起人の決定書:本店所在地が、発起人の同意をもとに決定されたことを証明する書類。
・設立時役員の就任承諾書:会社の役員になる人の承諾書。
・印鑑証明書:役員全員の印鑑証明書。
・株式会社設立登記申請書:法務局に設立登記するための申請書。
・登録免許税貼付用台紙:法務局に収める登録免許税分の印紙を貼る。
・登記すべき事項を保存したCD-R:会社の登記事項をまとめたものであり、紙で用意してもかまいません。
これらの書類をそろえて、会社の本店所在地を管轄する法務局に提出し登記申請を行います。登記には、登録免許税として150,000円必要になります。
■資金の調達法も考えておくべき
会社設立当初は、資本金を使いながら事業を行っていくことになります。しかし、潤沢な資本金がある場合を除いては、すぐにでも売り上げが上がらなければ、会社の運転資金はすぐに底をついてしまいます。
運転資金がなくなってしまっては、どのような素晴らしい事業でも続けていくことはできません。そのような事態にならないためにも、会社を設立する前から資金調達の準備を進めておくことも大切です。そこで以下では、資金調達の方法をいくつかご紹介していきましょう。
〇融資
資金調達で最も多く用いられるのが、銀行や信用金庫などによる融資です。しかし、設立間もない創業時の会社には実績や信用がないため、審査のハードルが高い傾向にあります。
〇制度融資
融資を利用できなかった場合に、候補となるのが「制度融資」です。制度融資による資金調達では、民間の金融機関の貸付に信用保証協会の保証を付けます。そのため、創業時でも借り入れがしやすくなります。
地域によっては、行政が支払利息や保証料の一部を負担してくれる場合もあります。借入の上限は3,000万円、金利は2.1%~2.7%前後、運転資金は7年以内、設備資金は10年以内が返済の目安です。
〇新創業融資制度
日本政策金融公庫による融資を利用する方法も、創業時では多く見られます。代表的な制度としては「新規開業資金」や「新創業融資制度」などがありますが、一般的には新創業融資制度のほうがハードルが低く、融資を受けやすいとされています。
〇補助金・助成金
補助金・助成金は、政府が公益上必要と判断した場合に交付される給付金であり、融資とは異なり原則的に返済不要です。
補助金と助成金の違いは受給のしやすさであり、補助金は採択の上限が決まっており公募期間も短く、申請しても受給できない可能性があります。対して、助成金は要件が合えば比較的容易に受給することが可能であり、申請期間も長く設けられているため、補助金に比べ受給しやすくなっています。
補助金や助成金は制度によって特徴が異なるので、以下では主な補助金・助成金制度についてご紹介していきましょう。
・創業補助金(創業・第二創業促進事業)
経済産業省系の補助金であり、新たな産業への需要や雇用創出を促し、日本経済を活性化させることが目的とされています。金額については、100万円~200万円に設定されています。
・小規模事業者持続化補助金
こちらも経済産業省系の補助金であり、経営計画に従って実施する販路開拓などに対して交付されます。上限は50万円となりますが、事業計画の作成や販路開拓の実施に関して、商工会議所の指導や助言を受けられるメリットもあります。
・ものづくり補助金
同じく経済産業省系の補助金であり、試作品の開発や設備投資などにかかる資金を支援するための補助金です。金額については区分によって異なりますが、100万円~500万円が目安となります。
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■まとめ
いかがでしたでしょうか?
起業をするためには、定款を作成するためにさまざまな事柄を決めなくてはなりません。定款は必ず作成する必要があるので、記載が必要な事項をひとつずつ確認しながら、起業に向けた準備を進めていきましょう。
また、会社をスムーズに経営していくには、起業準備だけでなく資金調達にも力を入れる必要があります。今回ご紹介した方法を参考にしながら、起業に必要な資金をねん出していきましょう。