手形割引とは?4つの手順であなたもスグに手形を換金・現金化できる

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ある日突然現金としての価値を持つたった1枚の紙、それが手形です。支払期日になると数百万、数千万円の価値を持つのは不思議な感じがしませんか?でも、その理由は手形取引が高度の安全性に裏打ちされているからです。(1万円札だって日本という国がその価値を保証しているからこそ価値があるのと同じです。) 手形法という法律によって手形取引は厳格に規定されていますし、手形の不渡りを出すことは会社にとって即時の銀行取引停止にもつながる、つまり手形の不渡りは倒産と同等の状態ともいえるのです。

それだけ安全な手形だからこそ、手形は換金・現金化することが容易です。そして、すぐにでも現金がほしい状況になったときには支払期日前に現金化することさえ可能です。それが手形割引という方法です。会社の売上が減少するなど、手形を受け取ったときに比べて資金繰りが苦しくなったときに、手形割引が利用できる場合があります。 そこで、手形割引の仕組みのことを詳しく知りたい方向けに、手形を換金・現金化するための4つの手順、そして手形割引に失敗しないための3つのポイントをご紹介します。

手形割引とは?金券ショップを例に徹底解説

手形の仕組み、約束手形、手形割引を詳しく解説

手形の仕組み

手形とは、「○月○日に○円のお金を支払います」という証明をしてくれる有価証券の一種です。会社同士では数百万円、数千万円の商取引を行いますが、それだけの現金を持ち歩くのは不便ですし、必要な時すぐに調達できるとも限りません。ですので、企業にとって手形を発行することによって現金の支払いを遅らせるメリットがあります。(手形を発行することを「振り出す」と呼びます。)

手形には手形法の規定によって記載事項が定められています。

  •  「約束手形」と印刷された文字
  •  振出人の管理番号(印刷済みのもの)
  •  受取人(会社)の住所・社名または代表者氏名
  •  支払期日(満期日)・支払地・支払場所
  •  支払金額(金額の前に「\」マーク、後ろに「※」マークをつける。また印字する場合はアラビア数字、手書きの場合には漢数字で記載する)
  •  支払委託の文章(例:上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引換えにお支払いいたします)
  •  振出日・振出地・振出人住所・振出人会社名または代表者氏名・銀行印
  •  収入印紙の添付・消印・控えとの境目への割り印

また、手形を振り出す条件として、手形を振り出す銀行に当座預金口座を開設している必要があります。当座預金口座の開設には銀行からの審査があります。審査基準はその銀行との取引実績や会社の信用状態によって左右されます。手形を発行できるメリットは大きいので、銀行との日常的な関係は良好にしておきましょう。

当座預金口座とは? 

以上は手形の基本中の基本ですので、おさえておいて下さい。

約束手形とは

なお、手形には「約束手形」、「為替手形」などがありますが、この記事では手形=約束手形のことを指します。なぜなら、日本での手形取引の大半は「約束手形」ですし、会社における取引では「約束手形」を理解しておけば十分だからです。

手形と小切手との違い

「手形って小切手とどう違うの?」という質問はだれもが一度は抱くものです。手元に現金がなくても取引ができてお金の代わりをする紙、という共通点がありますが、両者は根本的な違いがあります。以下、表にまとめました。

  手形(約束手形) 小切手
支払期日 決まっている なし
支払う相手 決められた支払人 銀行に小切手を持っていった人
換金できる期間 支払期日以降 振出日の翌日から10日間

一番大きな違いは、小切手を振り出すときには銀行に小切手に記載する金額以上のお金を預けている必要がありますが、手形を振り出すときに銀行に十分なお金がなくても良いことです。支払期日までに必要な金額を確実に入金すれば問題ないのです。例外として、この記事のメインテーマである手形割引を利用する場合があるのです。

手形と小切手の違いを図解付きで分かりやすく理解しよう

これで手形割引を完全理解!金券ショップを例にして考えよう

手形割引とは

いよいよ「手形割引」について理解していきましょう。手形には支払期日があり、通常はその期日以降に払い戻しを行います。しかし、なんらかの事情で支払期日に現金の払い出しを行いたいとしましょう。本来、手形は期日前に現金化できませんが、銀行または手形割引の専門業者が支払期日前に手形を買い取るという方法によって期日前に現金化することができる、それが手形割引の仕組みです。少しでも早くお金がほしい、そんな時に強い味方になってくれるシステムといえます。

金券ショップを例に「手形割引」を完全理解

手形割引がまだ少し理解しにくい方向けに、多くの方が利用したことがある金券ショップを例にして手形割引を徹底的に理解しましょう。 あなたが新幹線回数券を50,000円分もっていますが、それを使う前に現金化したい、という状況だとしましょう。そうしますと、以下のような関係になります。

  • 手形:新幹線回数券
  • 手形振り出し元:JR
  • 手形振り出し先:あなた
  • 支払期日:回数券の有効期限

あなたがJRから購入した新幹線回数券50,000円分は、購入時は有効期限内に全て使い切る予定でした。しかし、新幹線を使う必要がなくなったまたは急に現金が必要になったという場合に、その新幹線回数券を金券ショップに買い取ってもらうことができます。

その時に手数料が取られますので、あなたは50,000円ではなく減額され、例えば45,000円しか受け取ることができません。手形割引においても手形の支払期日までの金利(年利)を割引料として支払うきまりになっていますので、実際に受け取る金額は引かれてしまうのです。

また、店によって買い取り価格は違いますし、売る時期や場所にも左右されます。それは金券ショップも手形割引も同様です。どの銀行、または専門業者に依頼するか、支払期日までどのぐらいの期間があるかなどによってあなたが受け取ることができる金額が大きく異なる場合もあります。

手形を現金化するための4つの手順

手形割引を利用してスピーディーに手形を現金化するには、できる限り最小限の労力で行うべきです。早急に現金を手に入れてそれをビジネスに活用する時間を確保する必要があるからです。手形の換金・現金化を最速にするため、以下の4つの手順を頭にたたき込んでおきましょう。

手順その1:手形割引の申し込み

銀行または手形割引業者に申し込む

あなたが所有している手形を換金・現金化するには2つのルートがあります。1つは銀行に申し込む、もう一つは手形割引業者に申し込むルートです。銀行に申し込む場合は、手形割引は新規の融資案件として取り扱われます。それに対し、手形割引業者はその道のプロですので銀行よりもスムーズに換金・現金化が可能です。どちらがおすすめか、それぞれの特徴については次章の「これで失敗しない!手形割引3つのポイント その1」をご参照下さい。

申し込み方法

手形割引業者に申し込む場合は、ネットや電話・FAXなどで申し込みます。つまり自分の会社にいながら申し込みが完結できます。最近ではスマートフォンを数回クリックするだけで申し込みが可能です。一方、銀行の場合は決算書の書類などを提出するために実際に足を運ぶ必要がありでしょう。

手順その2:手形割引の審査

審査をクリアするためには「信用第一」

手形割引は必ずしも受けられる保証はありません。断られることも十分有り得ます。断られる原因はなにより「信用」があるかないかです。この審査基準は、手形割引を銀行に依頼するかそれとも手形割引業者に依頼するかによって異なります。詳しくは次章で説明しています。

審査の時間は手形割引業者が圧倒的に早い

審査基準の違いから、手形割引業者に申し込んだ場合は数分~1時間以内に審査結果が判明します。「最短5分」をうたっている業者も多く見られます。とにかくスピーディーに現金を手に入れたい経営者にはとてもありがたい存在ですよね。それに対し銀行では新規融資案件として審査しますので、相当の日数がかかることを覚悟しなければなりません(2度目以降の手形割引は審査が早くなります)。

割引料や取引日が決まる

振出人(つまりあなた)の与信審査が行われ、無事に手形割引が受け取れることが決定したら、最終的な割引料や取引日が決定されあなたに見積もりが通知されます。手形割引業者に依頼した場合はその日のうちに決定されることがあります。銀行の場合は最短でも2営業日はかかります。

参考)ある手形割引業者の割引率

手形の銘柄

割引レート

上場(配当あり)

年3.5%〜6.0%

上場(配当なし)

年4.0%〜7.5%

その他の企業

年6.0%〜9.5%

手順その3:契約書類の作成

必要な書類を確実にそろえよう

せっかくスピーディーに審査をクリアしても、書類に不備があっては現金を受け取るまでに余計な時間がかかってしまいます。手形割引を利用したい方は一刻も早く換金・現金化したいはずですので、契約書類は一発クリアするようにしましょう。

必要となる書類

手形割引に必要となる書類は、銀行に申し込んだときの方が多くなる傾向にあります。また手形割引業者に申し込んだときも、業者によって必要な書類に差があります。一般的に必要な書類を表にまとめました。

 

詳細

手形割引業者

銀行

手形

割引を依頼する手形であること

預金口座

普通預金口座・当座預金口座が確認できるもの

会社に関する書類

登記簿謄本、不動産登記簿の原本、印鑑証明書など

代表者に関する書類

住民票、運転免許証またはパスポートなど

印鑑証明書

会社の実印、代表者個人の認印

会社の業績証明

決算書、会社の納税証明の申告書、代表者の収入が証明できる源泉徴収書など

担保

不動産担保、保証人や保証協会の保証など

 

手順その4:現金を受け取る

審査に通り、必要な書類も整理できたら、郵送または直接持ち込んで提出しましょう。受け渡しが正常に完了することで、晴れて現金を受け取ることができます。郵送の場合は、手形等が銀行または手形割引業者に到着してからの手続きになりますので注意しましょう。 現金を受け取るには、対面振り込みがあります。振り込みの方が便利ですが、すぐにでも現金が手元にあったほうが良い場合は対面を選択しても良いでしょう。

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これで失敗しない!手形割引3つのポイント

ポイントその1:信頼度の高い専門業者に申し込む

銀行と専門業者の違い

手形割引を利用する場合、銀行と手形割引業者のどちらかに申し込むことになります。どちらが良いでしょうか?おすすめなのは手形割引業者です。その理由についてご説明しましょう。

そもそも銀行と手形割引業者とでは、審査の方法が全く違います。あなたが所有している手形で手形割引を申し込む場合、銀行は「あなたの会社の信用状況」を審査するのに対し、手形割引業者は「手形そのものの信用状況」を審査するのです。普通に名前を聞けば誰でも知っているような大企業からの手形であれば、その手形自体が担保になるのですぐに手形割引を適用してくれるのです。

銀行には金利が安いなどのメリットもありますが、あなたの会社がよほどその銀行との信頼が強く、財務状況が健全である必要がありますし、それでも審査で少なくとも数日は待たされてしまうのです。 それよりは、手形割引のプロである専門業者に依頼した方が良いでしょう。スピードも速く、審査や担保も不要で、手続きも簡単な手形割引業者を利用すべきなのです。以下に銀行と手形割引業者の比較を掲載します。

 

銀行

手形割引業者

審査対象

手形の持込人の信用度

手形の振出人の信用度

割引率

定期預金や依頼人の信用力(与信)との兼ね合いにより上下する

手形の銘柄によって設定される

担保の有無

定期預金の他、不動産の抵当権や保証人が必要な場合あり

原則として不要

審査時間

最短でも2~3営業日

最短で即時

良い業者の見分け方

注意点として、銀行と違って手形割引業者には当たり外れが大きいという問題点があります。見分ける目安のひとつは、その業者の「登録番号」を確認することです。登録には都道府県知事または財務局の認可の2通りがあり、財務局の審査の方がより厳しい基準がもうけられているためより信頼度が高いです。

また、複数の金融商品を手がけているよりも手形割引を専門に行っている業者の方が良いでしょう。なぜなら、手形割引のプロの方が余計な説明をせずに必要な手続きをしてくれるからです。もし他の金融商品を手がけている業者に申し込む場合、手形割引の相談に行ったのに他の金融商品をすすめられることもありますので、はっきりと手形割引をしたいという確固たる意思をもって交渉に臨むことが大事です。

【優良手形割引業者の例】

株式会社日証

  • 東京、大阪、名古屋に拠点あり
  • 個人事業主であっても手形割引を行える可能性がある
  • 手形割引のみの専門業者である ・財務局の認可あり

株式会社日本保証

  • 東京、大阪、名古屋に拠点あり
  • 幅広い客層に対応している
  • 手形割引以外にもビジネスローンなども手がける ・財務局の認可あり 

ポイントその2:低い割引率を選ぶ

できる限り低い割引率を選ぶことも大事です。銀行の場合は比較的低い割引率が適用されますが、あなたの会社の信頼性が高いことが条件となります。 手形割引業者の場合は手形自身の信頼性が基準となります。言い換えると、手形割引業者が追うリスクが低いほど割引率も低くなります。業者の立場からすると、不渡りを出す可能性が高い手形を格安で割引してくれるわけはないですよね。

【割引率が低くなる条件】

  • 手形の信頼性が高い(配当があるなど)
  • 大手優良企業の手形であること

【割引料の計算方法】

額面×レート(割引率)÷365×決済日までの残り日数

例)

手形の額面:100,000円

決済日まで残り日数:80日

レート:5.5%

銀行取立料:648円

100,000円×5.5%÷365×80日=1,205円

上記の場合、あなたが受け取ることができる現金は 100,000円-1,205円-648円=98,147円 となります。

ポイントその3:「でんさい」の活用

「でんさい」って何?

「でんさい」とは「電子記録債権」の略称のことです。手形取引のコストダウンや安全性の確保のために創設されました。「でんさい」は手形を電子化したもの、と勘違いされやすいのですが、違いますのでご注意下さい。「でんさい」は手形の問題点を克服した、2013年5月にスタートした新しい金銭債権なのです。

でんさいネット 

「でんさい」のメリット

  • ペーパーレスなので発行のコストや手間が省ける
  • 郵送代、印紙代がいらない
  • 紛失や盗難の危険がない
  • 領収書不要

「でんさい」は、取引相手の企業が「でんさいネット」に登録している必要がありますが、上記の理由から、「でんさい」を利用する企業は増加中です。平成27年末時点で、「でんさい」の普及率は全国の企業数の1割強の約43万社が導入しています。長い間紙の手形に慣れている企業が多いため導入に消極的な企業も多いようですが、電子マネーなどと同様に一気に広まる可能性を秘めているといえるでしょう。

でんさいの普及状況

「でんさい割引」がお得!

そして、「でんさい」を利用することによって、手形割引よりもさらにお得な「でんさい割引」を利用することも可能になります。手続きなどにおいて、手形割引と共通している部分もありますが、多くのメリットがあるのです。

「でんさい割引」のメリット

  • 必要な金額のみ現金化できる(手形割引は原則として額面金額の全額)
  • 現金化までのスピードが手形割引よりさらに早い
  • 割引率が手形割引より安くなる可能性がある
  • 銀行取立料、郵送料が0円
  • 紛失リスクがない 

手形割引とファクタリング

似ているようで全く違う、手形割引とファクタリング

手形割引とファクタリングが混同される理由

企業にとって緊急の資金調達方法として、手形割引と並んで有効なのがファクタリングです。両方とも現金の早期回収が目的ですのでよく混同されますが、別物として理解しましょう。手形割引はこれまで何度も述べたように「手形を期日前に現金化する」ことですが、ファクタリングは「売掛金を早期に現金化する」ことなのです。

手形割引とファクタリングの違い

手形割引とファクタリングには、2つの決定的な違いがあります。1つめは「返金義務」です。2つめは「不渡りリスク」です。以下、表にまとめました。

 

返金義務

不渡りリスク

手形割引

期日までに返却しなければならない

あなたも責任を負う

ファクタリング

ファクタリング会社に売掛金を「買い取ってもらう」ため、なし

あなたは責任を負わない(ファクタリング会社が負う)

 

上記2つの違いから、手形割引よりもファクタリングを利用する企業は増加傾向にあります。その分、ファクタリングの法が金利が高くなる可能性がありますが、まずは無料診断できますので、ファクタリングに興味がある方はご確認下さい。

ファクタリング「10秒無料診断」 

ファクタリングのメリット

売掛金を現金化できるファクタリングですが、他にもメリットがもりだくさんです。手形割引に断られた場合でもファクタリングが利用できる可能性があります

【ファクタリングには例えばこんなメリットが!】

  • 無担保・無保証 ・赤字経営でも売掛金さえあれば利用可能
  • 厳しい与信審査がない
  • 未回収リスクが軽減される
  • 資金繰りが楽になり、精神的にも楽になる

まとめ

手形は日本経済を長い間支えてきた制度です。そして、手形を早期に現金化する手形割引は資金繰りに困る経営者に長い間親しまれてきました。ところがバブル経済以降、金融機関の審査が厳しくなったことも影響して手形割引の取り扱いが大幅に減少しています。

「でんさい」の登場など手形割引の方法もよりスピーディーで安全性を高まるように進化していますが、手形割引以外のファクタリングなどの資金調達方法も普及しつつあります。それぞれメリットやデメリットがありますので、この記事に書かれた内容および、今後新たに登場する可能性のある最新の資金調達方法を比較しながら、よりあなたの会社に適した方法を探りましょう。

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