融資と出資どちらが有利?起業家が知りたい3つの成功ポイント

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企業経営には何かとお金が必要になります。そのすべてを自己資金で賄えれば理想的ですが、現実にそんなことが出来るわけもなく、なんらかの形でお金を工面しなくてはなりません。多くの経営者が選択する方法としては、外部からの融資出資を募ることになります。

融資と出資にはそれぞれに違ったメリットとデメリットがあるので、それらを利用する前に両者を良く比較して検討することが大切です。そこで、融資と出資それぞれのメリット・デメリットを比較すると共に、融資と出資を成功させるため、それぞれの「3つの成功ポイント」をご紹介します

 

融資の3つのメリットと4つのデメリット

融資の3つのメリット

融資を受けるメリットは3つあります。

・融資をしても株主になるわけではないので経営権を握られない

・一定の財務内容の会社では金融機関から融資はほぼ受けられる

・金融機関との関係を築き良い経営実績を作れれば多くの融資を受けられるようになる

以下で詳しく見ていきましょう。

経営権が安泰

融資と出資を比べた場合、一番の違いは、経営権が関わってくるかどうか、です。 以下で詳しく述べますが、出資とは、出資者に株主となってもらうことです。そのため、多くの金額を出資してもらうことにより多くの株式を出資者に保有されれば、経営権を握られてしまうという危険性が伴うのです。

単純に考えて、50%を超える株式を保有されればその出資者が経営権を握ることになります。また50%を超えなくても多くの株式を保有されることになれば、経営にいろいろ口出しをされやすくなり経営者の自由な経営ができにくくなります。言わば、自分の会社ではなくなってくる、ということです。

その点、融資は、融資を実行した金融機関などが株主となるわけではないので、経営権を握られることはありませんし、経営に口出しをされることも少ないです(返済が厳しくなってくれば株主としてではなく債権者として経営に口出しされる可能性はあります。)

融資は資金調達のスタンダードな手段

特に中小企業にとっては出資による資金調達よりも融資による資金調達の方がずっと一般的です。融資には金融機関からの融資審査がありますが、金融機関は一社でも多くの会社に融資をしたいと思っています。決算書や試算表から分かる財務内容に問題がなければ、だいたい融資は受けられます。融資を行った金融機関などは、その後の返済により資金を回収し、利息をとることによって収益をえます。そのため融資審査で一番見られるのは企業の返済能力です。財務内容に問題がなければ返済能力はあると見られ、融資は受けられます。

銀行の融資審査マニュアル

一方で出資においては、出資者は出資後の株式上場もしくは高い金額での株式の他者への売却により出資金を回収するなどして収益をえます。そのため出資者は、上場の見込みがある会社なのか、もしくは他者へ高い金額で売却できる将来が見える会社なのか、を見てきます。しかし株式上場や他者への売却は、よほど急成長している中小企業でもない限り難しいのが現実です。そのため出資者は、中小企業への出資にたいしては消極的なのです。

出資者の代表格であるベンチャーキャピタルは、100社から話が来たらそのうち1社~3社しか出資しないといわれています。一方で融資は、財務内容に問題がなければ金融機関はほぼ融資することでしょう。そう考えると、企業は資金調達したいのであれば、まずは融資から考えることになります。 金融機関が融資を行って、返済を行っていくことができれば金融機関からのその企業への信用は高まります。そうすると金融機関は、信用できる企業としてより多くの融資を行おうとします。また一つの金融機関が融資を行っているのであれば、他の金融機関も安心してその企業に融資を行おうとします。

金融機関との良好な関係が大事

このように金融機関への返済実績をつけていけば、融資の総額を増やしていくことができます。金融機関から融資を受けやすい会社になっていくのです。また金融機関が企業にどれだけの融資を行うかの目安は企業の売上高が大きな要素となりますので、企業が成長して売上高が大きくなればなるほど、金融機関は多くの融資を行いやすくなります。このように、継続的に大きな金額の調達を行いやすいのが、融資なのです。

融資の4つのデメリット

資金調達が容易な融資にもデメリットが存在します。

返済する義務がある。

・融資をするかどうかは会社の将来性よりも過去の経営実績が重要となる。

経営者の過去によっては融資を受けることが困難となる。

・経営者は連帯保証人となり返済できなければ個人で返済しなければならない。

なにやらいろいろ条件がありそうですね。以下で詳しく見ていきましょう。

融資には確実な返済能力が問われる

出資に比べた融資のデメリットの第一は、融資には返済が伴うことです。出資の場合、返済を行うことは基本的にありませんが融資は返済が前提です。融資の返済方法は、毎月一定額ずつ返済していく、数か月後一括で返済するなどいろいろあります。そして返済が進んでいけば、新たに融資を受けることが可能となります。

金融機関の側からみると企業に融資を行うことによって利息収入を収益源として得られます。つまり融資し続けなければ、すぐに利息収入がとだえてしまいます。ならばなぜ金融機関は企業に対し返済を要求するのでしょうか?答えはおわかりですよね。返済を企業に行わせることによりその企業は誠実に返済しようとする企業か、また返済能力のある企業かを判断しているのです。そして、返済が進んでいく中で企業から新たな融資の申込みがあっても、その時に企業の業績が悪化していれば金融機関は融資をしないこともでき、金融機関は貸倒れのリスクを小さくすることもできます。そのため融資には必ず返済が伴うのです。

過去の経営実績が物を言う!

次に、金融機関が融資を行うかどうかは企業の返済能力を第一に見られてしまいます。返済能力を判断する大きな基準の一つとして、に過去の経営実績があります。それが一番分かる資料は決算書試算表です。過去の決算書の内容が悪ければ、その企業は返済能力がない企業と判断されてしまい、融資を受けることは困難になってしまうのです。

決算書の見方を正しく理解しよう

決算書の内容が問題ない企業であれば過去の経営実績は融資のデメリットにならないのですが、決算書の内容が悪い企業にとっては、融資を受ける際にとても不利になってしまいます。過去の実績が悪くても、きっちりとした将来の経営計画を作って金融機関に提出することにより将来は「業績が良くなる」、「会社が成長する」ことを示すことができますが、その計画内容の実現性をどう評価するかは金融機関しだいです。そのため、もし作るのであれば金融機関を納得させるような緻密なデータや明確な将来予測を示しましょう。希望的観測では金融機関は動いてくれないのです。

一方で出資は、過去の経営実績よりも企業の将来性を、出資者は出資を決める時に評価します。株式上場や、高い金額での株式売却ができるほど会社の将来性があるかどうかが出資者のポイントとなり、過去の経営実績は参考資料の一つにしかなりません。

経営者の過去も大事!

また経営者の中には、過去に経営上の問題を起こした経験がある人もいるでしょう。例えば、別の会社の経営に失敗し、金融機関に貸倒れを出してしまったなどです。そのような経営者が再起をはかろうと新たに会社を立ち上げても、金融機関は過去の貸倒れを大目に見てはくれませ。特に信用保証協会で過去に貸倒れを出した経営者は、新たな会社では信用保証協会保証付の融資を受けることはできません。日本政策金融公庫でも同様ですし、銀行でも同様です。

新たに会社を作って再起をはかろうという経営者の中には、自分は代表取締役や取締役にはならないで「裏の経営者」となり、配偶者や子ども、知人を「表」の代表取締役にしている人も多いものです。そうしなければ融資の道はなくなるからです。とはいえ金融機関や信用保証協会、日本政策金融公庫の調査能力を甘く見てはいけません。そのようなテクニックが軽々と通用しないと思った方が良いでしょう。あなたが裏の経営者だということがばれて、過去に融資の貸倒れを出したことが知られてしまえば、融資を受けることが絶望的となります。

最終的に経営者に全ての責任が!?

最後に、融資は基本的に、経営者個人は融資を受ける会社の連帯保証人にならなければなりません。連帯保証人になるということは、もし会社が融資の返済をできなくなった場合に、金融機関は経営者個人に取り立てる、ということです。経営者個人が会社の代わりに、金融機関に融資の返済をしていかなければなりません

連帯保証人について知っていますか?

返済ができなければ会社とともに経営者個人も自己破産して借入金を0にすることはできますが、そうなると財産は残せません。経営者が保有している自宅は持ち続けることはできません。破産は借入金が0になるメリットはありますが、一方で財産を手放さなければならないのです。それに対して出資は、経営者が連帯保証人になるわけではありません。会社がつぶれても、経営者個人で出資者に対し出資した資金を返す必要はないのです。

自己破産した後の人生とは?

出資の3つのメリットと2つのデメリット

出資の3つのメリット

返済する義務がない

・過去の経営実績よりも会社の将来性を出資者は見てくれる。

・経営者個人が出資金の連帯保証人になることはない

お金を借りているのに返さなくて良い?出資とはどのようなものでしょうか?経営者になるのなら詳しく知っておきましょうね。

出資は「返さなくて良い」お金?

融資に比べて出資の一番のメリットは、返済する義務がない、ということです。融資は、毎月の返済や一括の返済があったりするため、返済時期にはその資金を必ず用意しておかなければならないですが、出資は返済する義務がないため、返済の資金を用意する必要がなく資金繰りは安定します。なぜ返済する義務がないか、それは出資とは出資者に株主となってもらうことだからです。つまり、出資者からすると、あなたの会社に投資をするということになります。

出資者が太鼓判を押してくれる

また融資は必ず返済しなければならないことから確実に売上となる事業、安定して売上が入る事業を経営者は優先することになりますが、出資は返済しなくてもよいため、当てたら大きくなるような事業にその資金を使うことができます。出資者も会社が大きく成長することに期待しているため、事業を大きく当てて成長してほしい、と思っていたりするものです。

そのため、今までは赤字であるが将来的に大きく成長できる事業のネタを抱えているというタイプの企業は、融資を受けることは不向きで、出資の道を探る方が合っています。そもそもそのような企業に金融機関は融資をしたがらないため、現実的に出資者を募らなければならないようになってしまうものです。

経営者のリスクが低い!

また経営者個人が出資金の連帯保証人になるわけではないため、経営者個人のリスクは融資に比べて小さくなります。そのため会社を大きくするために事業に打ち込みやすくなるものです。

出資の2つのデメリット

・出資したら株主になるため経営権を握られるか、握られなくても経営に口出しされる。

・出資者を探すのがなかなか難しい。

もちろん、お金を借りて返さなくて良い、という話がそう都合良く見つかるわけではありません。デメリットも詳しく知りましょう。

出資によって会社が乗っ取られる?

融資に比べた出資の一番のデメリットは、経営権の問題です。出資は、出資者に自分の会社の株主になってもらうことです。出資によりその出資者の持ち分が50%を超えたら、その出資者に経営権を握られます。せっかく思い入れのある自分の会社が他人のものになってしまうというのは大きなショックですよね!出資者の持ち分が50%を超えなくても、株主となることは経営に口出しをされる、ということです。

経営者としては自分の会社ではないように感じられ、自分のやりたいように経営できなくなるかもしれません。また将来、会社が成長して上場した場合、経営者としては持ち分が少なくなってしまうため、それだけ自分の創業者利益が少なくなります。自分の思うように経営したい、自分が創業した会社は自分の会社のままであってほしい、と考える経営者であれば、出資に対して慎重な態度をとったほうが良いでしょう。

創業時や創業して数年経った時、資金が足りないからと安易に出資を募り、その後経営を口出しされることになり経営者が思うように経営できなくなってしまうケースは多数存在します。後になって株式を買い戻そうとしても、出資者から売らないと言われたり、高い金額を要求されたりしては目も当てられません。融資であれば融資を受けた金額を返済したらそれで終わりですが、出資の場合はいったん出資して保有した株式を手放すのはその出資者しだいなので、経営者の自由にはできないのです。

出資者探しは想像以上に困難かも!?

一方で、経営に口出しされたり、創業者利益が少なくなってもよいから自分の事業を大きく成長させたい、そしてむしろ自分の経営についていろいろアドバイスして口出ししてほしい、と経営者が考える場合は出資による資金調達は問題ありません。 ただ融資に比べて、出資者を見付けるのはなかなか難しいです。

出資者の代表格と言えばベンチャーキャピタルですが、ベンチャーキャピタルの人と知り合うことからして難しいと考えるべきでしょう。方法としては、すでにベンチャーキャピタルと付きあっている知人の経営者からベンチャーキャピタルを紹介してもらうか、またはマスコミに自社の記事を書いてもらってベンチャーキャピタルから自分の会社を見付けてもらうなどが考えられますが、いずれにせよ時間もかかりますし、運にも左右されます。

ベンチャーキャピタルとは?

さらに、こちらからベンチャーキャピタルに直接連絡しても足元を見られて相手にされないことが多いです。ベンチャーキャピタルのホームページを見ると分かりますが、直接の連絡を避けるため電話番号を書いておらず、問合せフォームを一個置いているだけのベンチャーキャピタルも多いのです。そしてベンチャーキャピタルは、出資をしてくれと言ってくる企業の100社に1~3社しか、実際に出資をしません。このようなことから、ベンチャーキャピタルを諦め、豊富に資金を持っている企業や知人に、自社への出資を頼む経営者は多いです。ただ上場や高い金額での株式売却ができなければ出資金は回収できないため、それらの出資者候補も実際に出資することは慎重になるものです。

融資と出資の違いを徹底比較!

  融資 出資
 返済の義務  あり なし 

経営権・経営への口出し

 基本なし(返済が厳しくなれば債権者として金融機関から経営に口出しされることも)。  持株比率が50%を超えれば経営権を握られる・超えなくても株主として経営に口出しされる。
 資金調達実現への期待  財務内容や業績に問題がなければ多くの場合、受けられる。  出資者を探すのが難しい。
 

調達金額を増やすことへの期待

 金融機関で返済実績を作れれば融資金額を増やしていくことは可能。  出資金額を増やすには既存の出資者に増資をしてもらうか新たな出資者を探さなければならない。
資金を出すか審査のポイント  返済能力を見られる。それは過去の経営実績、特に決算書や試算表で判断される。経営計画も見られるがその実現可能性は慎重に判断される。  会社の将来性。売上・利益が将来大きく膨らむことが期待できる事業を営んでいるか、体制ができているか、経営者の能力があるか。
 経営者の過去の影響  過去にも経営者をやっていて金融機関で貸倒れを出していれば新たな会社での融資に大きな制約。  出資を決める参考の一つとして見られることはあるかもしれないが過去の経営の失敗自体が制約となるわけではない。
 経営者が連帯保証人になるか  原則として、連帯保証人になる。  連帯保証人にならない。

 

融資と出資どちらが良い?

経営者が資金調達を考えた場合、融資か出資か、以上のメリット・デメリットをふまえて考えてください。中小企業の資金調達は金融機関からの融資が一般的ですが、金融機関から融資がなかなか受けられなかったり、事業が成長して利益化するまでは赤字続きのような会社であったら、出資も検討する必要があります。ただ出資の大きなデメリットである経営権の問題はしっかり考えた方がよいです。

融資を受ける場合には金融機関をあたります。出資を受ける場合にはベンチャーキャピタルや出資してくれそうな企業・知人などをあたります。将来は資金が必要でも今は必要でないからと、のんびりと動かないでいると、資金が必要となった時になかなか資金調達できずに資金繰りがまわらなくなったりしますので、自分の会社が将来資金調達が必要と考えたのなら、すぐにでも動く必要があります

そしてやはり経営者自身が動くべきです。自社に別の役員や経理財務担当がいるからと、経営者が動かないのであればなかなか話が進まないこともあり、それが致命的になることさえあります。大企業ならまだしも、資金調達したい中小企業の経営者が動かないのであれば、融資や出資を検討する方としては、その経営者の本気度を疑ってくるからです。

最後に、融資と出資それぞれを成功させるためにどのようにすればよいかそれぞれ3つのポイントにまとめました。

融資を成功させる為の3つのポイント

・近隣の金融機関で預金口座を作成し、それをきっかけに金融機関担当者と面識を持ちましょう。そうすることによって、融資の相談ができる関係作りにつながります。

・経理をしっかり行って毎月の試算表を出し、決算書や試算表の内容は経営者自身が金融機関に説明できるようにしましょう。それに加えて経営計画や資金繰り表など作って、それらの資料により返済能力がある企業であることを金融機関にアピールしましょう。

金融機関がお金を貸したい会社になれるように常日頃から意識し、日々の経営をしっかり行って利益を出し、業績・財務内容を良くしましょう。

出資を成功させる為の3つのポイント

・出資者候補を探すために、人脈作りを常に意識しましょう。そのためには、とにかく多くの人との関係作りをこなしましょう。

・将来、どのように会社が成長していき、上場を実現するのか経営計画を何度も練り上げ、それをどのような場面でも説明できるようにしましょう。いつどこで出資のチャンスがあるかわからないからです。

・部下任せにせず、経営者自らが出資者候補を探し、出資者候補への説明を行い、この経営者になら投資をしてもよい、と思わせましょう。

まとめ

以上、融資、出資のそれぞれのメリット・デメリットを見てきました。それぞれのメリット・デメリットはあっても、現実的には出資のデメリットである出資者を探すハードルの高さと、経営に口出しされることを嫌がって、融資での資金調達が中小企業では一般的です。しかし融資・出資の方法、両方を知っておくことによって、資金調達の幅は広がるものです。

一方で融資を行う、出資を行う方から見ると、なぜその会社に融資・出資を行うか、それは返済が確実にされると思うから、もしくは将来会社が成長すると思うからです。つまり、相手の立場に立って物事を見る経営ができていなければ、どこもあなたの会社に融資・出資をしてくれません。資金調達の根本は、経営者が日頃から良い経営をできるか、そこに尽きます

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