一度に大量に買うことを表す俗語である「爆買い」ですが、2015年の春節(中国における旧暦の正月)に中国人が大挙して日本各地に豪華客船で押し寄せ、高額商品から日用品まで様々な商品を大量に買い漁ったため、「爆買い」は2015年の流行語大賞にまでなりました。
地方の観光地にも思わぬ特需をもたらしたこの「爆買い」は、日本経済に大きな影響を及ぼしました。
2016年に入ってもこの「爆買い」を当て込んで、多くの百貨店や家電店から地方のお土産屋に到るまで、商品の仕入れを行っている一方で、2015年の後半から2016年にかけて中国経済が失速しているという報道もあり、今後も「爆買い」が続くかどうか懸念されています。
しかし、そもそもこの「爆買い」は賢いお金の使い方なのでしょうか?
この「爆買い」は、実はバブル景気に浮かれていた頃の日本人が、かつて海外のブランド品を買い漁った現象に似ています。その時にも数々の問題点が指摘され、日本人は大いに反省したと思うのですが、今また中国人などの「爆買い」という現象を目の当たりにして、同じような勘違いをしてしまっていないか心配されます。
この記事では、5つの正しいお金の使い方を例にし、「爆買い」とは逆の行動をすれば賢いお金の使い方につながるということを明らかにしていきたいと思います。
目次
正しいお金の使い方① マナーを守る
お金さえ出せば、少々マナーを逸脱してもかまわない、そんな勘違いをしてしまってはいけません。
本物の大金持ちは、意外と質素で謙虚な性格だとも言われています。逆に、一時的に大金を得てしまった、いわゆる「成金」のような人は、お金を使うマナーを心得ていないためか、マナーを無視してでもお金を使うことで頭がいっぱいのようです。
頻発するマナー違反
「旅の恥はかき捨て」とは言いますが、海外に行って、自国のイメージを悪くすることは厳に戒めなければなりません。
日本人の中にも、海外のマナーを無視して観光や買い物をする人はいるのですが、もちろんそれらはやめるべきですね。
中国人の「爆買い」では下記のようなマナー違反が全国各地で相次いでいるようです。「お金を出すのだからこのぐらい当然」という意識は控えるべきです。
観光バスの路上駐車
全国各地の有名観光地で、大型観光バスの路上駐車や長時間停車が社会問題化しています。ドライバーに路上駐車をしないようにと啓発を促していますが、駐車場が絶対的に不足している以上、焼け石に水かもしれません。
特に銀座では、駐車禁止区域の中央通りで約500メートルに11台の観光バスが並ぶほどになっているそうです。加えて、買い物に夢中になった人が、待ち合わせ時間に30分以上は平気で遅刻するということもあるようです。
わりこみ
日本人は、2011年の東日本大震災の時でさえ、食料品やガソリンをもらうために一列に並んでわりこみはしないというほどの文化があり、世界に絶賛されましたが、そのような日本人にとっての常識はむしろ世界では少数派のようです。
列の友人に話しかけるふりをしてわりこんだり、列の間が空いていたら強引に体を入れる、といった行為が、「爆買い」の時に当たり前に起きているのです。
値切る
海外のお土産屋などでは、値切られることを前提にやや高めに値段設定していることがとても多いです。値切る文化も、日本では大阪などを除いてあまりないでしょう。
ところが、値切るのが普通である国の人は、値切るのが当然であるように値切ってくることがあります。値段交渉は悪いことではないでしょうが、過剰なまでに値切りる行為は迷惑なものです。
犯罪
その他にも、犯罪に相当するような行為は、当然やってはいけません。
代金を踏み倒す、 万引き、人混みにまぎれて商品をかっさらうといった行為は、賢いお金の使い方を論じる以前の悪行です。
他にも、立ち入り禁止の場所に入る、ゴミをあちこちに捨てるといったことも、もちろんダメです。
文化や宗教の違いも理解しよう
上記のようなマナー違反は、文化や宗教的な違いも関係する場合があります。ですので、一概に批判できない場合もあるかもしれません。
日本の商習慣としてもマナーと、宗教観に根ざしたこととは区別し、よく理解すべきでしょう。
正しいお金の使い方② 見栄をはらない
家族・親戚・友人に対する見栄
メンツ
中国人はメンツを重んじる国民性があります。特に、親族にお土産を買って帰ると言った手前、手ぶらでは帰れないとむきになって、マナーを無視してでも買って帰るという事情もあるのでしょう。
ただ、これは日本人が海外ブランド品を、なんでもいいから買い漁ってしまうという行為とよく似ています。それは正しいお金の使い方ではないですよね。
お土産を要求する側にも問題があるのかもしれませんが。
身の丈に合ったお金を使う
ですので、見栄やプライドよりも、もっと大事なことにお金を使うべきでしょう。
お土産を何にするか、血眼になって探すだけで旅行の日程が終わってしまっては、それこそお金の無駄遣いです。
体験活動や日本の文化にふれる活動にお金を使う旅行者も、ここ数年増えています。その体験談をお土産ばなしとして語ってあげる方が、よほど有意義でしょう。
ブランド信仰もほどほどに
メイドインジャパン信仰
中国人は、自分の国の製品に不安を持っていると言われています。そのため、品質の良い「メイドインジャパン」の製品を持ちたいという考えがあるようです。そんな「メイドインジャパン信仰」とも呼べるような現象が、爆買いにつながっているようです。
日本人は世界一ブランド品好き
かつてパリのルイ・ヴィトンショップに入場制限を導入させたなど、日本人のブランド品好きは世界的に有名でした。
高度経済成長と、ニクソンショック以降の円高の進行もあり、また社員旅行や慰安旅行などで海外旅行に出かける人も増えたこともあり、一時は日本人が世界中のブランド品を買い漁るという現象がありました。
今、当時の日本人と同じようなことを中国人が行っていますが、日本人のブランド品好きもまだまだ健在のようです。
自分自身の価値観を持とう!
そのような見栄やブランド信仰は、自分に対する自信の無さから生まれてくるのだと思います。
自分の中で、何が価値のあるものなのか、重要なのかがはっきりしていれば、見栄を張らなくても済みますし、ブランド品も最小限で満足できることでしょう。
ブランド品は、長い時間をかけて品質を保証されているものです。それを所持し身につけるには、自分自身をまず磨くことが大事でしょう。
一時的にお金があるからブランド品に飛びつく、という行為は、あまり賢いお金の使い方だとは言えないのです。
正しいお金の使い方③ 流行の物にすぐとびつかない
流行にふりまわされないで
上記のブランド志向とも関わりがありますが、流行の物にすぐとびついてしまうのは賢いお金の使い方とは言えません。日本人は特に「限定品」という言葉に弱いと言われていますので、注意が必要です。
中国人は何を買っているか?
「温水洗浄便座爆買い」という現象が起こりました。文字通り、温水洗浄便座が大量に買い込まれたそうです。
2015年の春節に買われた品目で、医薬品、化粧品に次いで3位にランクインするほどでした。
なぜ温水洗浄便座が売れたのか?噂や口コミで温水洗浄便座を買うことが流行になっただけかもしれません。
日本でも、某有名なお昼のテレビ番組で取り上げた商品があっという間に全国的に品切れになるということがありましたが、情報に踊らされて物を買い込むのは正しいお金の使い方でしょうか?
正しいお金の使い方④ 必要のないものをまとめ買いしない
まとめ買いは意味がない
オイルショック
1970年、オイルショックの影響で、日本のスーパーからトイレットペーパーが消えた、という現象が起きました。石油が日本に輸入されなくなる可能性があるということで、トイレットペーパーもなくなるかもしれないから今のうちに買い込んでおこう、と主婦がスーパーに殺到したからです。
現実には石油の輸入はストップしなかったので、トイレットペーパーの買い占めは意味のない行為でした。
紙おむつのまとめ買い
それと似たような現象が、中国人による紙おむつの「爆買い」です。
日本製の紙おむつが安心できるということからか、必要以上に買い込んでいるケースがあるようです。
医薬品や目薬も多いですが、これも中国製のものは安心できないので、いざという時のためにまとめ買いしておこうということなのでしょう。
衝動買いはダメ
衝動的に物を買ってしまう時は、たいてい誤った判断をするものだと心得た方が良いです。
それを逆手にとって、販売する側はなるべく衝動買いさせようとしてくるものですので、事前に何を買うかを決めてから買い物に望むと、お金を使うときに判断ミスが少なくなります。
自己成長につながる物を買う
それでは、どのようなものを優先して買うべきでしょうか?それは、あなた自身の成長につながる物を買うことです。自分の成長につながるお金は、使ってもなくならない財産です。
本を買う
良書を読むことは、あなたの成長につながります。通常1,000円~2,000円で、先人の優れた知恵を得ることができるような本はお得な自己投資です。
旅行する
単にショッピングや観光地めぐりでなく、自分自身で言ってみたい場所をインターネットなどで調べ、実際に行ってみましょう。
世界遺産などの有名観光地も良いですが、秘境と呼ばれる場所や穴場スポット、エコツーリズムなど、一生の思い出になる旅行の経験はプライスレスの価値があります。
友人のためにお金を使う
友人のためにお金を使うことは、実はあなた自身のために重要です。
相手に対する感謝の気持ちを示すことは、あなた自身にとっての心の栄養になるのです。
日本にはお歳暮などの良い習慣があります。それらは形式ではなく、お世話になっている気持ちを表現するために、古くからある賢いお金の使い方なのです。
正しいお金の使い方⑤ お金を使い切らない
円安の罠
円安がお得な秘密
円安とは、円の価値が低くなることです。
2015年は極端に円安が進み、1ドル=120円を超えるまでになりました。他国からすると、より安い旅費で日本に行くことができ、しかも日本製品をより安価で手に入れることができたのです。
対中国でも、2014年前半には1人民元=16円台だったのが、2014年末に急騰し始め、2015年夏には1人民元=20円を越えるまでになりました。
単純に考えると、2014年夏に中国人が日本で旅費やお土産代に10万円かかったとしたら、2015年夏に同じ旅費やお土産代が8万円ですむことになります。
円高に支えられて日本人が海外ブランド品を買いあさったのとちょうど反対の現象が起きているのですね。
安物買いの銭失い
しかし、安物買いの銭失いということわざもあります。 事実、これまで述べてきたように、2015年に日本を訪れた中国人の多くが、明かに必要がないと思われるようなものまで買っているようです。
例えば、スーパーの安売りセールで500円のお弁当が半額になっているからと、つい3つも4つも買い込んでしまったとしましょう。でも、それらは賞味期限間近のものが多いです。賞味期限が切れないようにと無理して早めに食べきってしまうかもしれませんね。そうすると、普通に500円のお弁当を買うよりも余計にお金を使う結果になるかもしれないです。
保存の効く物だったら良い、というわけではありません。あなたの家に、100均ショップやバーゲンセールで安いからと買った、未開封の商品が山積みになっているということはないでしょうか?
中国の事情
参考までに、中国ではお金を使い切らなければならない事情もあることを申し添えておきます。それは、中国が社会主義国であるということと関係しています。
中国では本来、政府が認める以外の方法で資産を保有することが禁止されているのですが、それには多くの抜け道があります。さらに、中国に資産を持っていたら逮捕され資産を没収されることもあるようです。
だからこそ、日本でお金を使い切ってでも形のある物に変え、中国政府に没収されないようにしているという事情があるようです。
習近平の「爆買い禁止令」
「年間10万元(約180万円)以上の買い物を海外でしてはいけない」、そんな法律が成立する見込みのようです。 明らかに、日本での「爆買い」を意識した法律で、なるべく中国国内でお金を使わせるようにしたいという政府の意図があるようです。
今後の爆買いはどうなる?
大量の中国人観光客がクルーズ船に乗って来日し、ずらーっと並ぶ貸し切り観光バスに乗り込み、百貨店・ディスカウントストアなどに続々と入り込んではほとんど値札もみずに他の中国人と競うようになんでも買い漁る、そんなイメージが強い「爆買い」ですが、その傾向も少しずつ変化しているようです。
中国の経済が悪化していることもありますし、習近平の「爆買い禁止令」に備えてのことかもしれません。
いずれにせよ、2015年にかけて行われてきた「爆買い」が今後何年も続くとは考えられません。
ちなみに、日本に訪れる中国人観光客の主目的がショッピングから別の体験活動などに移行しているようです。つまり、正しいお金の使い方に中国人観光客も気づき始めたということでしょうか。マナーの方も徐々に改善していくと良いのですが。