家を買う時、それは人生で最大のお金の決断です。
ほとんどの人がマイホームを持つ時に組むローンは35年ローンと言われており、「家を買う=35年ローンを組む」と言っても過言ではありません。
今回は35年ローンについての情報をまとめました。一長一短を踏まえて、家を買う時の参考にしていただけたら幸いです。
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目次
①35年ローンってそもそもどんなメリットがあるの?
住宅ローンは、手持ちの資金がなくともローンで自宅を買える仕組みです。長期のプランがあり、計画的に資金調達が可能です。
フラット35という35年の住宅ローンというのが最近流行っており、フラット35というのは民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する住宅ローンです。固定金利で計画がたてやすく、多くの人が選択しています。
メリットとしては、頭金を一部または0であっても、収入の何倍もの住宅を購入することが可能となります。数千万円の資金をいきなり用意することは難しく、ほとんどすべての人が住宅ローンを借りることになります。
ローンは今までは最長35年でしたが、最近は50年ローンと言うのも登場しています。
20代で契約したとしても完済は70代半ば。そんな長期のローンが成立する理由はなんでしょうか?それは返済の最初のうちは金利に充当されるので、住宅ローンは10年持てば銀行側はペイするのです。それ以上経ってから返済が滞ったとしても、担保にしている住宅を取り上げればいいだけですので、銀行は損しません。ですので10年程度の見通しが立てられる契約者ならばローンが通るということになります。
利用者のメリットとしては
①限られた生活費の中から固定の費用でローンが組めると言うこと、家賃と同じかそれ以下の負担で完済すれば自分のものになるということ
②また将来の返済額が常に把握できますので生活設計が立てやすいこと
などのメリットがあります。家計は計画的に予定を組めることが一番でしょう。また頭金なしでもフルローンで組むことが可能となり、資金の乏しい人でも新しい家を購入することが可能になります。
途中で返済が苦しくなれば、期間を延ばしたり一時的に返済額を下げたりなどの融通も効きます。
②数千万円を低金利で借りられる融資は他にない
35年ローンは非常に長期のローンです。雇用状況も不安定であり、実質賃金は低下、終身雇用も崩れており、年功序列もほとんどなくなりました。そんな中で長期のローンを組むのは不安だと思われるかもしれません。
ですが、人生において大きなお金が必要になるのは住宅だけではありません。
車の購入、結婚資金、出産子育て資金、教育資金、治療費、葬儀代など、さまざまです。そんな時、手元のキャッシュがない場合、借り入れてローンを組むことになります。
例えばみずほ銀行のフリーローンの場合、金利は変動金利で5.875%となります。そしてフラット35の長期ローンは1.670%。明らかに35年ローンの方が安いのです。
これはつまり、手元に現金を残しておいて不測の事態に対応し、ローンは住宅ローンのみに絞ったほうが圧倒的に有利ということになります。
これはマネーリテラシーの問題でもあります。例えば手元に300万円あり、住宅購入と車の同時購入を考えてる場合、住宅ローンをフルで組んで頭金ゼロにして300万円は自動車の現金購入にあてたほうが、住宅ローン頭金300万円とトヨタのオートローン5.8%を抱えるよりも有利なのです。
また、一度フリーランスや自営業、会社経営を行ってみると、多額の融資を引き出すのがどれだけ大変かと言うことは見に染みてわかります。特に数千万円を1.670%で借りられる融資など存在しません。それだけ住宅ローンは圧倒的にお得なローンとなっているのです。
これは住宅が生活にとって非常に重要なため、返済が行き詰る可能性が低いと見積もられているからです。教育ローンもそうですが、借り手にとって重要度が高い目的のローンは、破綻率も低いため、低金利で貸してもらえる傾向があります。それでも教育ローンよりも住宅ローンは遥かに金利が安いです。
3.団信という安心
そして最も大きな住宅ローンのメリットのひとつに、機構団体信用生命保険、通称「団信」があります。
団信は、住宅ローンの契約者が亡くなるか重度障害になった場合に残りのローンがチャラになる仕組みです。実質的に、住宅ローンの残債と同額の生命保険をかけたのと同じになります。ローン残高は毎年減っていきますので、掛け金も年々下がっていきます。
世帯主の名義でローンを組み、同時に団信に入ることで不慮の自体に備えることができます。数千万円クラスの生命保険をかけようと思うと毎月数万円はかかりますので、生命保険の観点から見てもだいぶお得な制度です。
ほとんどの方が加入し、銀行の35年ローンでは必須ですが、フラット35の場合は必須ではありません。中にはランニングコストを重視し入らない方もいらっしゃいます。
万が一の際に住宅ローンがチャラになってローンのない自宅が残りますので、残された家族は安心です。単身者の場合はそれほど必要ないかもしれませんが、扶養家族がいる場合は必須となるでしょう。共働きで名義を半々にしている場合でも、自分の名義分のローンがなくなりますので死亡時にリスクを最大限に回避することができます。
万が一の際は、自分が個人的にかけていた生命保険と、団信で負債がなくなりさらには遺産が残りますので、残された側も安心です。しかも繰り上げ返済をせず、頭金も少なければ、持っている不動産がまるまる資産として手元に残ると考えることもできるのです。
④繰上げ返済の是非。繰り上げ返済は善かというとそうでもない。
繰上げ返済をがんばっているご家庭は多く、できるだけ短期で繰り上げ返済しようとしている人も多いでしょう。ですがこれは良い面と悪い面があります。
まず、繰上げ返済を考える動機のひとつとして、支払金利の総額を抑えたいと言うのがあります。繰り上げ返済は元本に充当されますので、一気に残債を下げることが可能になります。いくら金利が安いといっても35年もローンを組んでいると支払う利息は数百万円以上になります。できるだけ金利を抑えたいのは当然です。
ですが、サラリーマンには住宅ローン減税があります。
所得税が還付されますので、この10年間の住宅ローン減税がある間は繰り上げ返済しないほうが絶対に良いです。これは断言できます。
問題は10年目以降に繰り上げ返済を行うかということなのですが、手元にキャッシュを置いておいたほうが心強いと思います。とくに子育て世帯では何が起こるかわからず、お子さんが計画外に私立に進学したりなどの出来事は起こりえるものです。その時になって手元のキャッシュが足りず別でローンを組むのであれば、安い金利の住宅ローンを残しておいたほうがいいでしょう。
また、万が一のことがあって名義人が亡くなった場合、とうぜん給与はストップしますが住宅ローンは即座に免除にはなりません。手続きの数ヶ月は住宅ローンが引き落とされますので資金繰りが大変になります。何が起こるかわかりませんので貯金をすべて繰り上げ返済にするのはやめてください。
大きな借金になりますので早く返さねばと焦りますが、冷静に考えてみると必ずしも繰り上げ返済が善だとはいえないのです。特に、フィナンシャルプランナーで、日頃1円でも安くスーパーをはしごして、家族の楽しみも我慢して、せっせと繰り上げ返済を薦める人もいますが、まったく持っておかしな意見だといわざるを得ません。何のための住宅で、何のためのお金なのか、考えてみると、繰上げ返済が良いとは言い切れないのです。
繰り上げ返済を行った場合、残債が減りますので、ローンの期間そのものを短くするか、それとも毎月の返済額を減らすか、どちらかを選ぶことになります。また繰り上げ返済には大抵の銀行で事務手数料がかかります。
⑤キャッシュでの家の購入に向いているのはこんな人
では、一方でキャッシュでの住宅購入に向いているのはどのような人でしょうか。それは例えばフリーランスや始めて間もない自営業の方、非正規労働の方、相続で住宅取得等資金の贈与を受けられる方、どうしても借金がいやな方などです。借りたくても借りられないのか、借りられるけれど借りたくないのかは別物です。
また持病があって団信に加入できない方は、亡くなると大きな負債が家族に残りますので注意が必要です。そういった条件下にある人は、あまり長期のローンは組まず、賃貸に住んでできる範囲でコツコツ貯金して、キャッシュで住宅購入されるのが良いでしょう。
その場合は新築よりも中古のほうが狙い目かもしれません。自分自身が有利な借入をできない信用状況の方は、キャッシュで購入がおすすめです。少し考え方は変わりますが、一度ローンを組んでしまうと売却がなかなか簡単にはいかないため、生活環境が変わりやすい独身の方は、あまりローンを組まないほうが良いかもしれません。結婚したら貸せばいいし、と思われるかもしれませんが、仕事と家庭生活と大家業をこなすことになるので、大変なわりに実りは少ないです。
⑥結論。35年ローンは組むべき?
結論です。この記事では、【35年ローンは組んだほうが得】【繰上げ返済も必要ない】という結論を出したいと思います。
世の中には、住宅をキャッシュで購入できる余力があってもあえてローンを組む人も大勢います。特にマネーリテラシーの高い高所得者層は、都心の利便性の高いタワーマンション等をローンで購入するケースが多いです。中には相続した資産や自分で築き上げた莫大な資産でキャッシュで購入する方もおられるでしょうが、かなりの低金利で数千万円規模のお金が借りられるのは住宅ローンだけです。
とくに会社経営をしている方にとっては、これだけの好条件で数千万円を調達するのがどれだけ困難か良くわかっているはずです。ですので、例えばフリーランスや自営業になる予定があっても、会社員のうちに住宅ローンを組んでおくことは非常に有利な戦略となります。実際にそのようにやっている方も大勢おられます。
住宅ローンが怖いといわずに、正しい金融知識を持って、多額のローンと正面から向き合いましょう。住宅ローンにまつわる知識はそれほど難しいものはありません。金利の計算、審査、確定申告、保険などの周辺知識だけで十分対応できます。この記事では、35年の住宅ローンは、組める状況にあるのであれば組んだほうがお金の面では圧倒的にお得ですよ、とお勧めします。
ですがローンを組む・組まないは、もはや考え方の問題ですので、強制はしません。住宅ローンって不安だなと思う方に、このようなメリットとデメリットがありますよ、ということをお伝えして記事を終わろうと思います。
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