多くの経営者や起業家に利用されている制度融資。制度融資は中小企業にとって重要な資金調達方法であり、制度融資で得た資金によって独立をする方も珍しくはありません。
しかし、制度融資は誰もが利用できる制度ではなく、申し込みを行うと審査が実施されるケースが一般的です。この審査に通過しなければ、もちろん融資を受けることはできません。
そこで今回は、この制度融資に関する概要に加えて、制度融資の審査のコツをご紹介していきます。
目次
■制度融資とは?
現代の日本では、銀行などの金融機関や企業、団体など、さまざまな融資元が存在しています。また、国や自治体も融資制度を実施しており、その中でも都道府県や市区町村などの地方自治体が実施する融資制度を「制度融資」と言います。
ただし、制度融資では自治体が直接融資を行うわけではありません。自治体から預託金を預かった銀行などの金融機関が、自治体に代わって融資を行う形がとられています。
では、この制度融資はどのような特徴が見られる制度なのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。
【特徴その1】金利が比較的低い
一般的なビジネスローンなどに比べると、制度融資は金利が低い傾向にあります。具体的な金利は制度によって異なりますが、中には年利が1%未満の制度融資も存在しています。
金利が低いということは、支払う利息が少ないことを意味します。特に資金繰りに悩んでいる中小企業にとって、月々の負担が減ることは大きなメリットと言えるでしょう。
【特徴その2】固定金利・長期返済が主流
制度融資の多くは、固定金利・長期返済が主流です。固定金利とは、返済開始時から完済時までの金利が変動しない方式であり、固定金利には借入前から返済計画を立てやすいといったメリットがあります。
また、制度融資は返済期間が比較的長いので、余裕を持った返済計画を立てられるでしょう。
【特徴その3】創業時に利用しやすい
資金力に乏しい起業家や中小企業の場合、一般的なローンの審査に通過できないケースは珍しくありません。それに対して、多くの制度融資は起業家や中小企業を支援する目的で実施されているので、制度融資は創業時に利用しやすい傾向があります。
もちろん、最終的に返済する必要はありますが、実績の少ない方でもまとまった資金を調達できる可能性があるので、積極的に活用を検討してみましょう。
制度融資には上記のような特徴が見られるので、多くの起業家・経営者が活用しています。ただし、税金を滞納していたり、多重債務に陥ったりしている場合には利用できない可能性が高いので、その点には注意をしておきましょう。
また、制度の具体的な内容は実施されている地域によって異なります。まずは会社が存在する地域の情報を調べて、どのような制度が実施されているのかを調べてみましょう。
■制度融資を利用する手順
利用したい制度融資が見つかった場合には、どのような行動を起こせば良いのでしょうか?以下では、制度融資を利用する手順について簡単に解説していきます。
【手順その1】自治体に申し込みをする
希望する制度融資を見つけたら、まずはその自治体に申し込みを行います。必要書類をそろえた上で申し込みをすると審査が実施され、審査に通過した者には紹介状が渡されます。
【手順その2】指定の金融機関に出向く
紹介状を受け取ったら、その紹介状を持参して指定の金融機関へ出向きます。窓口で紹介状を提出すれば、融資の申し込みが行われます。
【手順その3】担当者と面接をする
金融機関で融資の申し込みが完了すると、信用保証協会に保証の申し込みが行われます。その後、信用保証協会との面接の場が設けられ、担当者の質問に答える形で面接が実施されます。
【手順その4】融資が実行される
面接において問題が見つからなかった場合には、金融機関から融資が実行されます。
上記が制度融資の流れとなりますが、具体的な手順は地域によって異なる可能性があります。また、融資実行までにかかる期間も制度によって変わるので、事前にきちんと情報収集をしておきましょう。
一般的に、制度融資は融資実行までにある程度の期間を要するとされているので、十分な準備期間を設けて、早めに行動を始めることが大切です。
では、次からは制度融資の審査のコツをご紹介していきます。
■【コツその1】可能な限り多くの候補を探しておく
各自治体で実施されている制度融資は、ひとつだけとは限りません。地域によっては、複数の制度融資が実施されている可能性もあるので、まずは可能な限り候補を見つけるようにしましょう。
制度融資を探すには、インターネットを活用すると便利です。「〇〇県 制度融資」「〇〇市 制度融資」のように、自治体の名称と制度融資という言葉を組み合わせて検索し、地域の情報を収集してみましょう。
多くの選択肢を作ることで、審査に通りやすい制度が見つかるかもしれません。
■【コツその2】審査基準を把握しておく
希望する制度融資が見つかったら、次は審査基準を把握することが大切です。審査基準を把握することで、審査への対策を立てやすくなるためです。
もちろん、制度融資の審査基準は地域によって異なります。応募要件や必要書類から、どのような部分が重視されやすいのか自分なりに分析してみましょう。
なお、制度融資は起業家・中小企業向けの制度となるので、実績よりも事業計画に目を向けることが大切です。事業計画の内容にこだわり、担当者を説得できるように努力しましょう。
■【コツその3】銀行の担当者と連携をする
信用保証協会による保証が必要な場合は、銀行の担当者と連携し、より良い書類を作成することが大切です。信用保証協会に提出する書類は、基本的に銀行の担当者が作成することになるので、必要な情報や資料は全て共有するようにしましょう。
魅力的な書類を作成するには、銀行の担当者に会社の状況を明確に伝えて、自社の魅力を存分にアピールすることが大切です。
■【コツその4】面接で聞かれる質問を想定しておく
面接が実施される制度融資では、提出書類だけでなく面接への対策も重要なポイントとなります。どのような質問がくるのかをあらかじめ想定しておき、想定した質問に対して望ましい答えを用意しておきましょう。
基本的に面接では、提出した書類・資料に関する内容が問われます。自社の状況を今一度整理し、特に事業内容や資金計画に関する質問にスムーズに答えられるよう、しっかりと準備を進めておくことが大切です。
■【コツその5】会社を構える地域を選ぶ
一般的に制度融資では、都心部より地方のほうが審査が緩いとされています。これは地方のほうが希望人数が少なく、競争率が低いためです。
そのため、現時点で会社を構えていない方は、会社の所在地を地方にすることを検討してみましょう。もちろん、魅力的な制度融資がある地域を調べておき、その地域に会社を構える方法も効果的な手段となり得ます。
■オススメの制度融資をご紹介
ここまで、制度融資に関する概要や、審査のコツについてご紹介してきました。では、現在実施されている制度融資には、具体的にどのような制度があるのでしょうか?
ここからは、オススメの制度融資をいくつかご紹介していきます。
【その1】経営指導特例(東京都)
東京都で実施されている、小規模企業向けの制度融資です。資金使途は運転資金であり、最大で300万円の融資を受けられます。
申し込みには、中小企業診断士の実施フォローアップを受けることが条件とされていますが、専門家によるフォローアップはその後の経営にも役立つでしょう。
融資期間は2年以内であり、固定金利・変動金利のいずれかから選択する形式となります。
【その2】創業融資(東京都)
東京都で実施されている、創業者向けの制度融資です。融資を受けた資金は、運転資金・設備資金のいずれにも使用することができます。
融資限度額は最大で2,500万円であり、融資期間は運転資金が7年以内、設備資金が10年以内とされています。1年以内の据置期間も設定されているので、ある程度余裕を持った返済計画を立てられるでしょう。
【その3】チャレンジ(東京都)
東京都で実施されている、中小企業や起業家向けの制度融資です。新製品の開発や事業の多角化のサポートを目的としており、融資限度額は1億円(組合は2億円)に設定されています。
融資期間は10年以内と比較的長く、2年以内の据置期間がある点も特徴的です。ただし、融資期間によって適用される金利が異なるので、その点には注意をする必要があるでしょう。
【その4】開業サポート資金(大阪府)
大阪府で実施されている、起業家や中小企業向けの制度融資です。自己資金額などの利用条件が定められていますが、女性や若者、シニアに対して金利の優遇措置が取られているなど、幅広い層に対して積極的なサポートを行っています。
融資限度額は1,500万円であり、金利は1.4%です。返済期間が7年以内と比較的長いので、こちらの制度融資も余裕を持った返済計画を立てやすいと言えるでしょう。
【その5】小規模企業等振興資金(愛知県)
愛知県で実施されている、小規模企業向けの制度融資です。小規模企業向けとしては比較的融資限度額が高く、通常資金では5,000万円、小口資金では1,250万円に設定されています。
また、担保や保証人が原則として不要である点も、この制度の魅力と言えます。返済期間はケースによって異なりますが、運転資金では最長で7年以内、設備資金では最長10年以内となっています。
■まとめ
いかがでしたか?今回は制度融資についてご紹介してきました。
実施されている制度融資は地域によって異なり、ひとつの地域に絞っても複数の制度融資が存在しています。制度ごとに応募要件や借入条件が異なるので、情報収集に時間をかけて、あなたの会社にぴったりな制度を見つけてみましょう。
また、制度融資も魅力的な資金調達手段ですが、企業によってはファクタリングも効果的な手段となり得ます。ファクタリングは会社の売掛金を売却する方法であり、最短即日で多額の資金を調達できる可能性があります。
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