起業家や中小企業に対して、さまざまな融資制度を実施している日本政策金融公庫(日本公庫)。代表的な制度としては、新創業融資制度や新規開業資金などが挙げられますが、「マル経融資」も小規模事業者向けの制度です。
マル経融資には、小規模事業者にとって魅力的な特徴がいくつかあるので、この制度を利用する中小企業は少なくありません。ただし、このマル経融資においても審査が実施されるので、利用を検討している方は審査のコツをつかんでおく必要があります。
そこで今回は、マル経融資の概要に加えて、審査のコツをご紹介していきましょう。
目次
■マル経融資とは?
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は日本公庫が融資を行う国の制度であり、最大で2,000万円の融資を受けられます。ただし、この制度を利用するためには、以下の条件を満たさなくてはなりません。
・従業員が20人以下の法人・個人事業主(商業やサービス業など、一部の業種に関しては5人以下)
・商工会議所地区内、もしくは商工会地区内で1年以上事業を行っていること
・商工会議所や商工会で、経営指導(経営・金融)を6ヶ月以上受けること
・所得税や法人税、事業税などの税金を完納していること
・属している業種が、日本公庫の対象業種に含まれていること
・商工会議所会頭、もしくは商工会会長から推薦を受けていること
上記の条件をひとつでも満たしていない場合は、マル経融資を利用できない可能性があります。利用を検討している方は、満たしていない条件がないかについて、自社の状況を一度整理してみましょう。
では、このマル経融資は、具体的にどのような特徴がある制度なのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。
【特徴その1】担保・保証人が不要
日本公庫のマル経融資では、担保と保証人が必要ありません。必ずしも上限額を借り入れられるわけではありませんが、担保・保証人不要で最大2,000万円の融資を受けられる点は、この制度の大きなメリットと言えるでしょう。
また、信用保証協会の保証が不要である点も、マル経融資の魅力です。
【特徴その2】資金使途が幅広い
マル経融資によって得た資金は、運転資金・設備資金のいずれにも使用することが可能です。従業員への給与・賞与、諸経費の支払いなどにも資金を充てられるので、資金使途が幅広い制度と言えるでしょう。
資金繰りに悩んでいる起業家・経営者にはぴったりな制度です。
【特徴その3】返済期間が比較的長い
マル経融資の融資期間は、以下のように定められています。
・運転資金…7年以内
・設備資金…10年以内
比較的返済期間が長いので、ある程度余裕を持った返済計画を立てやすい制度と言えるでしょう。
また、据置期間が設定されている点も、マル経融資の特徴です。据置期間とは、一時的に元金の返済が猶予される期間であり、期間内は利息分のみを返済していれば問題ありません。この据置期間に関しては、運転資金が1年以内、設備資金が2年以内となっています。
マル経融資にはこのような特徴があるので、長期的な資金計画を立てやすいといった側面があります。
【特徴その4】ビジネスローンなどに比べると低金利
マル経融資の金利は、一般的なビジネスローンなどに比べると低い傾向があります。融資を受ける時期によって異なりますが、適用される金利は0.5%~2.5%前後となります。
金利の高いローンは経営の負担になる可能性がありますが、マル経融資であればその負担を抑えやすいので、融資を受けても経営が安定しやすいでしょう。
このように、マル経融資には起業家や中小企業にとって魅力的な特徴がいくつか見られます。例えば、特に以下のようなケースでは、マル経融資による資金調達が効果的と言えるでしょう。
〇運転資金
・仕入れ費用が必要になった場合
・手形決算費用が必要になった場合
・従業員へ給与や賞与を支払う場合
〇設備資金
・事業用の車両を購入する場合
・事業に必要な機械を購入する場合
・店舗や工場を改装する場合
しかし、前述でも軽く触れましたが、マル経融資を利用するためには審査に通過しなければいけません。そこで次からは、マル経融資の審査を通すコツについてご紹介していきましょう。
■【コツその1】複数年分の書類を準備する
マル経融資の審査では、提出した書類をもとに法人・個人事業主の経営状態が判断されます。経営状態に不透明な部分があると、担当者を説得させることは難しくなるので、試算表や確定申告書、決算書などは複数年分を用意しておきましょう。
複数年分の書類をそろえることで、自社の経営状況を自覚することにもつながります。これらの書類は、必要な融資金額を算出する際にも活用できるので、自身でもきちんと分析をすることが大切です。
■【コツその2】可能な限り借入を返済しておく
マル経融資は、消費者金融や高利の金融機関からの借入があると、審査に通りづらいとされています。特に消費者金融からの借入には注意をする必要があり、消費者金融から少額でも融資を受けていると、それだけで審査に通過できない可能性があります。
そのため、まずは自社の借入状況を整理し、可能な分についてはきちんと返済を済ませておきましょう。消費者金融以外の金融機関からの借入については、金利が10%を超えていると印象が悪くなります。
また、過去に消費者金融から融資を受けたという事実も、マル経融資ではマイナス要素です。マル経融資の利用を検討している方は、基本的に消費者金融の利用を控え、別の方法で資金調達を検討することが望ましいと言えます。
■【コツその3】経営指導前に必要書類をきちんとそろえる
商工会議所や商工会による経営指導の前には、きちんと必要資料をそろえておきましょう。書類や資料に不備があると、経営指導後に推薦状を受け取れない可能性があるためです。
経営指導に必要な書類・資料としては、主に以下のものが挙げられます。
・最近4ヶ月以内の登記簿謄本、もしくは登記事項証明書
・総勘定元帳や現金出納帳、仕入帳などの帳簿類
・主に取引を行っている銀行の預金通帳や、借入金の明細
・直近2期分の決算書と確定申告書
・法人税や事業税など、税金に関する領収書
・代表者が住んでいる不動産と、会社の不動産の1ヶ月以内の登記簿謄本、賃貸借契約書、家賃領収書など
・お客様の情報の利用に関する同意書
・運転免許証や住民票などの本人確認書類
・決算後6ヶ月以上経過している場合は決算書
・業種に関する許可や認可、届出の証明書
・設備資金を申し込む場合は見積書
■【コツその4】経営指導員を説得できる資料を作る
マル経融資の審査では、経営指導員を納得させることがポイントとなります。そのため、上記の必要書類に加えて、事業内容や資産状況を確認できる分かりやすい資料があれば、その資料を積極的に作成しておきましょう。
不透明な部分を可能な限りなくすことで、経営指導員を信用させることができ、その結果として審査も通りやすくなります。
■【コツその5】提出したほうが良い資料を把握する
会社や代表者をアピールできる資料がある場合には、その資料も合わせて提出するべきです。例えば、新聞や雑誌などで紹介された実績がある場合には、その記事を添付することでイメージアップを図れるでしょう。
そのほかにも、提出することが望ましい資料としては以下のものがあります。
・表彰関係の資料
・許認可業でより上位の免許
・そのほか、第三者から評価された実績が記載されている資料
■【コツその6】業績悪化の理由が一過性のものであることをアピールする
マル経融資は、小規模事業者の経営改善を目的とした融資制度です。しかし、あまりにも改善の見込みがない場合には、審査に通過することは難しいでしょう。
企業の業績悪化の理由には、一過性のものとそうでないものがあります。一過性の理由ではない場合、審査担当者から「改善の見込みはない」と判断されてしまう恐れがあるでしょう。そのため、一過性の理由であることをアピールできるよう、書類や資料に工夫を加えなければいけません。
業績悪化の一過性の理由としては、主に以下のものなどが挙げられます。
・取引先からの入金と仕入れのズレ
・長期に及ぶ事業計画を行っている場合
・現在行っている事業に、日常的に費用が発生している場合
上記の理由を参考にしながら、担当者を説得できる書類・資料作りを目指しましょう。
■時間がない方は「濃密指導」を受けることも検討してみよう
マル経融資の審査には、ある程度の時間を要することもあります。資金繰りに苦しんでいる会社に関しては、この審査期間が致命的なダメージになりかねません。
また、起業家や経営者にとっては、経営指導が必要になる点も大きなネックになるでしょう。しかし、実はこの経営指導は原則として6ヶ月受ける必要があるものの、必要書類をそろえて所定の手続きを行えば、受ける必要性がなくなるケースも見られます。
このようなケースでは、半年分の預金通帳などを提出することで、「濃密指導」として扱われます。濃密指導として扱われた法人・個人事業主については、6ヶ月間の経営指導は必要ありません。
融資実行までの期間に悩んでいる方は、この濃密指導を受けることも検討してみましょう。
■まとめ
今回は、日本公庫を通じて国が実施しているマル経融資について紹介してきました。いかがでしたでしょうか?
マル経融資は比較的審査が緩いとされていますが、きちんと準備をしなければ審査に通過できる可能性は下がります。また、日本公庫の融資では、申し込みから融資実行まで2ヶ月ほど要することもあるので、時間に余裕を持って行動を始めるようにしましょう。
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