起業1年目の会社は、経営面で望ましい体制が整っていないケースが多いので、さまざまなトラブルに見舞われがちです。特に流行の変化による売上減少や、売れ残りによる一時的な資金難など、運転資金を失う恐れがあるトラブルには細心の注意を払わなければなりません。
体制を整えても思わぬトラブルは発生するものですが、事前にしっかりと準備をしておけば、トラブルへの対応もスムーズになることでしょう。つまり、経営におけるリスクは、起業前の準備によってある程度は抑えられます。
そこで今回は、起業を成功させる10の手順をご紹介していくので、起業を考えている方は参考にしながら準備を進めていきましょう。
目次
■【その1】独立の目的・目標を定める
起業を目指す前に、最初に確認しておくべきことがあります。それは、「独立の目的・目標」です。
目的や目標がきちんと定まっていないと、会社の方向性は定まりません。そのような状態では、事業や経営の計画を綿密に立てることは難しいでしょう。
独立の目的・目標に関しては、どのような内容でも良いというわけではありません。より良い会社にするためには、独立だからこそ達成できる目的・目標を設定することがベストです。
例えば、一般的なサラリーマンでも達成できる目的・目標を設定すると、事業へのモチベーションが高まらない恐れがあります。また、「見栄をはりたい」のような安易な考えで起業をすると、人目を気にし過ぎることにより、地味な仕事を積極的にこなす意欲が下がってしまうでしょう。
起業直後に経営を安定させるには、経営者の努力が必要不可欠です。どのような仕事に対しても積極的に取り組めるように、使命感を持てる目的・目標を設定するようにしましょう。
■【その2】自分に適した事業を見極める
どのような人にも、「適性」というものがあります。経営の才能があったとしても、あらゆる事業で成功を収められるわけではありません。
顧客や従業員に信頼され、スムーズに会社を経営していくためには、経営者が事業に対して多くの知識・スキルを備えている必要があります。自分の得意な分野を事業にすれば、知識やスキルの分アイディアが広がるので、その分成功する可能性も高まるでしょう。
そのため、独立を思いついたら冷静に自己分析をすることが大切です。自分に備わっているスキル・知識を今一度確認し、どのような事業なら成功しやすいのかをしっかりと見極めましょう。
あらかじめ取り組みたい事業が決まっており、その事業に関する知識・スキルが不足している場合は、現場で働いて知識やスキルを身につけてから起業するのも、効果的な手段のひとつです。
■【その3】徹底的に情報収集をする
どのような分野の事業でも、成功するためには情報収集が欠かせません。綿密な事業計画や経営戦略は、収集した情報を活かして立てるものなので、情報がなければ事業計画や経営戦略の質も落ちてしまいます。そのため、情報収集にはできるだけ時間をかけて、必要な情報は徹底的に収集するようにしましょう。
ただし、どのような情報でも役に立つわけではありません。不必要な情報を収集すると、その分時間やコストを無駄にしてしまうので、収集する情報を慎重に選ぶことも重要なポイントです。
例えば以下で挙げる情報は、ほとんどの事業において必要になる情報と言えます。
・競合店や類似の製品に関する情報
・その時の流行
・年齢や性別など、客層に関する情報
・会社を構える地域の特徴や将来性
もちろん業界によっては収集するべき情報がさらに増えるので、「どんな情報を収集するべきか」という情報収集も必要になります。
■【その4】事業に関する仕組みを作る
ひとつの事業で長年利益を得るには、その事業の「仕組み化」が必要不可欠です。仕組みを作っておかないと、かかる時間やコストなどが不安定になり、その結果として売上も安定しません。逆に事業を仕組み化することができれば、製品の大量生産にもつながるでしょう。
事業の仕組み化では、製品生産の流れを整えることはもちろん、従業員の仕事やお金の流れなども整えることが大切です。事業のスタートから製品販売までを仕組み化できれば、リスクやトラブルの可能性を抑えつつ、売上の安定性が向上するでしょう。
■【その5】資金調達の方法を用意しておく
会社の経営において、資金はいつ不足するのか分かりません。起業当初は売上が伸びていても、流行や客層の変化によって、一時的に売上が大きく下がる可能性もあるためです。また、売上が一時的に急増するケースにおいても、会社には仕入れ量を増やす必要性が出てくるので、必要な運転資金は増大します。
会社の経営では、設備資金や運転資金をはじめ、投資資金などさまざまなコストがかかります。どのような状況に陥っても営業できるように、資金調達の方法は常に考えておかなくてはなりません。
資金調達の主な方法としては、以下のものが挙げられます。
・金融機関からの融資
・ベンチャーキャピタルからの融資
・個人で金融機関などから借り入れる
・日本政策金融公庫からの融資
・補助金や助成金を利用する
上記のように資金調達にはいくつかの方法がありますが、方法を選ぶ際には調達金額はもちろん、「スピード」も重視することが大切です。例えば、補助金や助成金は申し込み期間が限られているので、どのようなタイミングでもすぐに利用できるわけではありません。
困った時にすぐに資金を調達できるよう、可能な限り多くの資金調達法を確保しておきましょう。
■【その6】将来を意識した事業計画を立てる
ここまで準備が進んだら、起業後に始める事業の準備はある程度整っているはずです。しかし、会社の経営を安定させるには、このままの事業計画では不十分と言えます。
経営者としては、やはり日々の利益は気になるところでしょう。しかし、短期的な売上ばかりに目がいっていると、5年後や10年後まで会社を存続させることは難しくなります。
例えば、日々の利益ばかりを重視していると、その事業が失敗した時に次の事業へとスムーズに移ることができません。商品やサービスの売上は、流行や客層の変化によって大きく変わってくるので、ひとつの事業にこだわり過ぎると大きな失敗を招くこともあります。
そのため、事業計画を立てる際には短期的な計画に加えて、5年後や10年後も見据えた中長期的な計画も一緒に立てるようにしましょう。
■【その7】アイデアに固執せず、常に新しいものを考える
ひとつの事業やアイディアにこだわり過ぎると、状況の打開は難しくなります。例えば、流行を反映した事業は一時的に成功する可能性はありますが、流行が廃れると売上を回復させることは難しいでしょう。
そのため、経営者は常に新しいものを考える必要があります。日々変化する流行や市場を分析した上で、その時期に望ましいビジネスを見極めることが大切です。
商品やサービスの認知には、多くの時間やコストがかかります。見込みのないビジネスにおいて、そのような時間やコストをかけてもメリットはありません。
売上が伸びる可能性が下がったら、その時点でひとつの事業計画に見切りをつけて、新しいアイディアを考案することも積極的に検討してみましょう。
■【その8】従業員を確保する方法、教育する方法を考える
会社を経営するには、経営者以外に従業員も必要です。そのため、従業員を確保する方法、スムーズに教育する方法についても、早いうちから考えておくべきでしょう。
ただし、従業員を雇うにはコストがかかるので、安易に従業員を選ぶべきではありません。従業員の質は経営状態に直結するポイントなので、条件を定めた上で雇用を決めるようにしましょう。
一般的な企業が従業員に求める条件としては、主に以下のものが挙げられます。
・コミュニケーション能力が高い
・会社に対して責任感を持っている
・経営者が備えていないスキルを補完してくれる
・経営者の理念や会社の方向性に共感している
もちろん、企業によって従業員に求めるべき条件は異なります。上記を参考にしながら、自社のケースに当てはめて必要な雇用条件を検討してみましょう。
■【その9】資金の流れを予測して行動する
経営者の方は、常に資金の流れ(キャッシュフロー)を予測して行動をする必要があります。経営状態が悪化し、資金が不足した状態で融資を受けようとすると、会社そのものや事業が評価されず審査に落ちてしまう可能性が高まるためです。運転資金をねん出できなければ、あとは倒産という道しか残されていません。
したがって、経営者は自社のキャッシュフローを常に予測し、本格的な資金不足に陥る前に資金を調達することが必要です。必要なタイミングで必要な金額を用意できるように、早めに行動することを心がけましょう。
■【その10】常に将来に向けて準備をする
事業をスムーズに進めるためには、事前の準備が欠かせません。準備不足の状態で新しい事業を始めると、客数が予測より少なくなったり、生産が遅れたりなどのトラブルが生じます。逆に、準備を万全にしておけば、事業の開始直後から売上を安定させることも可能です。
事業内容によって必要な準備は異なりますが、以下で挙げる準備は多くの事業において必要になるでしょう。
・顧客を確保しておく
・取引先となる人脈を築いておく
・効果的な方法で宣伝をしておく
・運転資金のねん出方法を探しておく
一般的な会社はひとつの事業が成功しても、そこでゴールを迎えるわけではありません。目標や目的は人によって異なりますが、ほとんどの経営者はさらなる成功に向かって準備をしています。
つまり、会社の経営が続く限り、常に何かしらの準備が必要になります。事前に定めた目的や目標を踏まえて、常にどのような準備が必要になるのかを考えておきましょう。
■まとめ
いかがでしたか?今回ご紹介した10の手順の中に、現時点でまだ取り組んでいないものがあると、あなたの会社には深刻なリスクが潜んでいる可能性があります。
どのような会社にもリスクはありますが、経営リスクはしっかりと対策を立てることである程度は抑えられます。経営リスクを抑え、安定した経営を長期間続けるためにも、今回ご紹介した10の手順を実践してみましょう。