日本国内で会社を設立する際には、資本金が必要になるとされています。各企業は資本金の金額を公表しているため、「資本金」の文字は企業のホームページなどさまざまなところで見られますが、そもそもこの資本金とはどのようなお金なのでしょうか?
また、資本金と密接に関わる言葉として、「増資」が挙げられます。増資は経営戦略にもなる手段であり、現代では多くの企業が資本金の増資を行っています。
そこで今回は、資本金と増資の概要と、増資の方法などについてまとめてみました。会社に関する基礎知識となるので、これを機会にしっかりと身につけておきましょう。
■起業には資金が必要!資本金とは?
資本金とは、会社を設立して事業をスタートさせる際に保有している、運転資金(自己資本)のことを指します。なお、株式会社においては、株式の発行によって集められた資金を資本金と呼ぶこともあります。
2006年以前の日本では、会社法において「最低資本金」が定められていました。この制度により、株式会社では最低で1,000万円、有限会社では最低300万円の資本金が必要となっていたので、全ての企業はある程度まとまった資金を用意しなければ事業を始めることはできませんでした。
しかし、それ以降に新会社法が制定されてからは、株式会社の必要資本金は1円以上となっています。この改正により、現代の日本では少額の資本金でも起業が可能となり、幅広い層の方が起業へ挑戦できる状況になりました。
ただし、1円以上の資金があれば、問題なく起業できるわけではありません。株式会社の設立には、登録免許税や定款認証の費用などがかかってくるので、少なくとも30万円~35万円の資金が必要になるとされています。
また、資本金が少ないということは、会社の運転資金が少ないことを意味します。運転資金が少ないと事業の幅が大きく制限されるので、多くの起業家は計画した事業をスムーズに進めるために、ある程度の資本金を準備するケースが一般的となっています。
■資本金の増資って?
会社を設立した際に用意した資本金は、設立後に増やすことも可能です。これを「増資」と言い、一般的に株式会社では新株を発行することで増資を行っています。この増資には、主に以下のようなメリットがあります。
・会社の信用性が高まる
・事業に費やせる資金が増える
・企業買収に対抗できるようになる
現代の日本では、資本金の金額によって会社の信用度を判断する風潮が見られます。そのため、資本金を増資によって増やせば、結果として会社の信用性を高めることにつながります。信用性の向上によって、将来的に顧客や取引先の増加、売上向上などを期待できる可能性もあるでしょう。
また、資本金は会社の運転資金となるので、増資をすることで取り組める事業の幅は広がります。逆に言えば、資本金が減った状態では事業を進めることが難しいので、多くの利益することは難しいでしょう。
さらに、増資は企業買収への対策としても活用されています。例えば、自社の株式を大量に保有している企業が存在している場合、増資をすることで新株を発行し、その会社の持ち株保有率を下げることが可能です。
このように、資本金の増資にはいくつかのメリットが見られるので、増資は企業の経営戦略として活用されています。ただし、メリットがある反面で、増資には以下のようなデメリットも見られます。
・増資をするためには、ある程度の労力が必要になる
・増資をすることで、大企業として扱われる可能性がある
当然ですが、増資には資金が必要となるので、増資を検討している方は資金をねん出しなければなりません。現代では、融資や出資、助成金など多くの資金調達法がありますが、どの方法を選ぶ場合でも手続きや準備などの手間がかかります。
また、これまで中小企業として扱われてきた会社が、増資によって大企業として扱われる可能性も考えられます。「大企業になれるのはメリットでは?」と感じるかもしれませんが、中小企業から大企業として扱われると、中小企業に有利な税制などを利用できなくなってしまいます。
このように、増資にはメリットがある反面でデメリットもあり、ケースによっては増資をすることで経営リスクが拡大します。そのため、資本金の増資を検討中の方は、増資による会社への影響をしっかりと予測した上で、慎重に行動するようにしましょう。
■増資には3つの方法がある!
上記でご紹介した増資には、大きく分けて3つの方法があります。増資は方法ごとに特徴が異なるので、増資を検討している方は各方法の違いを理解しておく必要があるでしょう。
そこで以下では、3つの増資について各概要と特徴を解説していきます。
【その1】公募増資
公募増資とは、50名以上の一般投資家に対して、新株を発行する方法を指します。この際に発行した新株の価格は時価が基準となるので、公募増資を行うタイミングによって集められる資金が異なります。
では、この公募増資にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
〇メリット
・一般投資家を対象とした戦略なので、さまざまなところから資金を集められる
・株主資本比率の向上によって、経営状態や財務体質が回復する可能性がある
・株式の流通量が増えることで、株主が増加する可能性がある
〇デメリット
・株式の総数が増えるので、1株あたりの利益が少なくなる
・株価が下落する可能性がある
公募増資において注意をするべきポイントは、株価の下落です。公募増資では、新株価格が前日の終値から少し安い価格で取引されるケースが多いので、一般投資家にとっては魅力的な株式になる可能性があります。しかし、その反面で株価が以前よりも下落すると、公募増資以前からの既存株主は損失を被ることになるでしょう。その結果、既存株主からの信用を失ってしまう恐れがあります。
特に株式の相場が低調であり、取引量が少ないケースにおいては、需給の悪化が懸念されることで株価が下がりやすい傾向にあります。
【その2】第三者割当増資
公募融資に対して、特定の第三者に向けて新株を発行する増資方法のことを、第三者割当増資と言います。一般的には、企業や金融機関に向けて新株が発行されるケースが多く、新株を第三者に引き受けてもらうことで、資金をねん出することができます。
では、この第三者割当増資のメリット・デメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
〇メリット
・引き受け先が決まっているので、予定通りの増資を行える
・利益が少ない会社でも、引き受け先が見つかれば増資が実現する
〇デメリット
・ケースによっては、引き受け先を見つけることが難しい
第三者割当増資では、新株の引き受け先がすでに決まった状態で増資が行われるので、予定通りに資本金を増やせます。また、利益が少ない会社に関しては、公募増資では新株の買い手が見つからないこともありますが、第三者割当増資では新株の引き受け先さえ見つかれば、経営状況に関係なく増資を実現することが可能です。
ただし、自ら新株の引き受け先を探す必要があるので、会社によってはその引き受け先を見つけることが難しいでしょう。また、第三者探しが難航した場合、当初の予定より増資計画が遅れてしまう可能性もあります。
公募増資に比べると、第三者割当増資は実例が少ない傾向にありますが、主に以下のようなケースで第三者割当増資は活用されています。
・収益力が乏しい会社の増資
・第三者との関係強化を狙った増資
【その3】株主割当発行増資
株主割当発行増資とは、増資前からの既存株主に対して新株を発行する方法です。一般的には各株主の保有株数によって、新株が割り当てられるケースが多くなっています。ただし、各株主に払い込みの義務などはないので、新株を購入するかどうかは各株主の判断に任せられます。
では、この株主割当発行増資のメリット・デメリットについて、以下で見ていきましょう。
〇メリット
・既存株主の持ち株比率が増資前と変わらない
・資金調達の確実性が比較的高い
〇デメリット
・株式の時価が一時的に下落する可能性がある
株主割当発行増資では、既存株主に対して平等に新株が割り当てられるので、既存株主の持ち株比率が変動しません。つまり、既存株主が損失を被る可能性が低い増資方法と言えます。また、各株主が新株に対して申し込みを行えば、着実に増資の資金を集めることができるでしょう。
ただし、株主割当発行増資も公募増資と同じように、株価が下落する可能性があります。また、各株主が申し込みをしない場合は、新株が失権株として扱われ、課税関係が生じる可能性があるので注意が必要です。
このように同じ増資でも、上記3つのどの方法を選ぶのかによって、会社が得られるメリットや抱えるリスクは異なります。新株を発行するとなると、会社の経営状況にも影響を及ぼす可能性があるので、増資については慎重に物事を進めるようにしましょう。
増資を検討している場合は、株主や株式に関する情報をしっかりと収集した上で、会社に適した増資方法を選ぶことが大切です。
■まとめ
今回は資本金に関する概要と、3つの増資方法についてご紹介しました。
資本金は会社の運転資金になるお金であり、増資によって資本金を増やすことで事業の幅が広がったり、会社の信用性が高まったりします。ただし、増資には3つの方法があり、方法ごとにメリット・デメリットが異なるので、会社の状況に適した増資方法を選ばなくてはなりません。もちろん、増資を行う時期も慎重に判断するべきでしょう。
なお、新株発行による増資以外にも、会社の資金を調達する方法はあります。代表的な手段としては、金融機関からの融資や出資、ファクタリングなどが挙げられるでしょう。
中でもファクタリングは、中小企業の資金調達手段として近年注目されている手段です。「資金運用プロ」のホームページでは、ファクタリングの無料診断を短時間で受けることができるので、興味のある方は積極的に活用してみましょう。