多くの経営者や起業家は、銀行などから資金を借り入れることで、開業資金・運転資金を準備しています。そのため、起業後しばらくは返済を続けることになりますが、この返済金が経営の負担になるケースは珍しくありません。
そのような場合に、リスケジュールを行うと会社の負担を軽減できる可能性があります。リスケジュールに対して、あまり良くないイメージを持っている方もいるかもしれませんが、リスケジュールも立派な経営戦略のひとつであり、場合によっては会社の経営回復につながる手段となり得るでしょう。
そこで今回は、このリスケジュールを成功させるコツと、リスケジュールのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
■そもそもリスケジュールとは?
そもそも、リスケジュールとは一体どのような手段を指すのでしょうか?リスケジュールとは、会社の現状や今後の見通しを整理し、返済可能なスケジュールを計画した上で、銀行に対して返済条件の交渉を行うことを指します。
例えば、リスケジュールによって以下の条件が変更されると、会社の負担を一時的に抑えられる可能性があるでしょう。
・返済期間…現在よりも長い期間に変更することで、月々の負担を軽減する
・月々の返済額…月々の返済額を減らすことで、負担を軽減する
・返済方法…元金返済を一時的に繰延べ、当面は利息のみを支払う
一般的にリスケジュールは、会社の業績が悪化したケース、ほかからの資金調達の目途が立たないケースなどで活用されています。リスケジュールにより返済条件が変更されると、会社はある程度のキャッシュを維持しやすくなり、経営状況が好転する可能性も考えられます。
■リスケジュールを成立させる5つのコツ
リスケジュールが成立すると、会社にとっては負担軽減などのメリットが生じますが、融資元である金融機関にとってはデメリットになることもあります。例えば、当初の返済計画にズレが生じることで、金融機関側の資金計画が大きく変更される可能性があるでしょう。そのため、交渉方法や金融機関によっては、リスケジュールが成立しないケースも見られます。
ただし、事前にきちんと準備を済ませておけば、リスケジュールが成立する可能性は高まります。そこで以下では、リスケジュールを成立させる5つのコツをご紹介していきましょう。
【その1】金融機関の傾向を掴む
金融機関ごとに、リスケジュールに対する考え方には違いが見られます。「最終的に返済されるのであれば、返済期間を延ばしても構わない」という金融機関もいれば、「経営状況によって、リスケジュールの可否を判断する」といった金融機関もいることでしょう。
そのため、どのような金融機関から融資を受けているのかによって、行うべき準備は変えるべきです。まずは金融機関の傾向を掴み、その上で具体的な対策を進めていきましょう。
特に重要になるポイントは、「自社と同じようなケースの企業に対して、どのような対応をしているのか」という部分です。また、国の政策や経済状況などによっても金融機関の傾向は異なるので、リスケジュールを検討した時点での傾向をしっかりと調べておきましょう。
【その2】経営改善計画書を慎重に作成する
金融機関は基本的に、会社の経営が改善される見込みがなければ、リスケジュールを成立させることはありません。したがって、交渉をする前には経営改善の計画をまとめて、その内容を書類にした「経営改善計画書」が必要になります。この経営改善計画書の内容によって、リスケジュールの成立が大きく左右されると言っても過言ではありません。
では、経営改善計画書を作成する際には、具体的にどのようなポイントを押さえれば良いのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。
〇中長期の計画を組む
1年間や3年未満など、短期間の計画は評価されにくい傾向にあります。会社の経営状態を回復させ、全ての借入金を返済するためには、5年以上の期間が必要になるケースも珍しくないためです。
実際のリスケジュールでは、複数年にわたって返済条件が変更されるケースは稀です。成立したとしても、基本的には1年未満の対応となりますが、それでも金融機関は根拠のある資金計画を求めてきます。
ただし、期間が長すぎる計画も根拠性が失われてしまう恐れがあるので、望ましいとは言えません。そのため、基本的には5年間の計画を目安として、中長期の計画を組むようにしましょう。
〇簡易キャッシュフローの金額に着目する
簡易キャッシュフローとは、当期利益と減価償却費、引当金増加額の3つを合計した金額のことです。この簡易キャッシュフローの金額によって、借入金の返済に充てられる会社の資金は変わってくるので、簡易キャッシュフローは当然チェックされるポイントになります。
具体的には、1年間の簡易キャッシュフローが、今後5年以内に債務の10分の1以上となるように、返済の目途が立つことをアピールできる計画を作成する必要があるでしょう。なお、5年間の計画を作成しても、金融機関が全面的にその計画を信用することはありません。したがって、経営改善計画書の提出は、その都度内容を見直した上で、毎年1回行う必要があると考えるべきです。
2年以上のリスケジュールを成立させることは簡単ではないので、常に金融機関からの信用を得られるように、計画の進捗をこまめに報告する姿勢を見せるようにしましょう。
【その3】自社の何を伝えるべきなのか見極める
リスケジュールを成立させるには、下記の2点を金融機関にアピールする必要があります。
・一時的に資金繰りが厳しくなっている
・中長期的には、経営状況が改善される見込みがある
逆に、経営改善計画書によって新たな資金調達が難しいこと、経営の改善が難しいことなどが伝わると、成立の可能性は限りなく下がると言えるでしょう。
したがって、自社の何を伝えるべきなのかという部分は、リスケジュールにおいて非常に重要なポイントになります。例えば、事業成功の可能性、資金調達の可能性がある場合には、根拠のある計画書でその部分を伝えることが必要になるでしょう。
【その4】すべての金融機関に対して同じ条件で依頼をする
リスケジュールでは、原則として全ての金融機関に対して、同じ条件を希望する必要があります。例えば、A行には返済期間を1年延長する条件、B行には2年延長する条件を希望するなど、金融機関によって差をつける行動は不適切です。
仮に、複数の金融機関に異なる条件を申し入れると、その事実が判明した際に、信用を大きく失ってしまう恐れがあるでしょう。そうなると当然リスケジュールは成立しませんし、将来的に融資を受けられるチャンスも失ってしまいます。
金融機関と良好な関係を築くことは、会社の経営をスムーズにする上で必須です。複数の金融機関にリスケジュールを申し込む際には、必ず同じ条件で交渉するようにしましょう。
【その5】プレゼン、交渉の方法を考える
質の高い経営改善計画を作成しても、その内容がうまく伝わらなければ意味がありません。そのため、リスケジュールでは効果的なプレゼン・交渉の方法も考えましょう。
プレゼン・交渉において押さえておきたいポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
〇自身の経営責任を認める
従業員の行動によって、会社の業績が悪化するケースは多く見られます。しかし、そのようなケースにおいても、経営者に責任がないわけではありません。その従業員を雇用した責任がありますし、その従業員を経営者がきちんと教育しておけば、リスクを回避できたと判断される可能性が高いでしょう。
そのため、リスケジュールの交渉の場においては、自身の経営責任をきちんと認める必要があります。逆に、自分の責任ではないことをアピールすると、「この経営者は経営改善を実施しないのでは?」と疑われてしまう恐れがあるでしょう。
真摯な姿勢を伝えるには、金融機関に対して事実を伝えた上で、経営者自身が反省をすることが大切です。
〇プレゼン・交渉の場には必ず同席する
「専門家に任せたほうが安心できる」「頭を下げるのはプライドが傷つく」などの安易な理由から、プレゼンや交渉を外部のコンサルタントに依頼するケースも見られます。確かに、専門家の意見や言葉が効果的になる場面もありますが、リスケジュールを他人任せにすると、金融機関から「経営改善を実施するほどの行動力がない」と判断されてしまう可能性も考えられます。
そのため、リスケジュールのプレゼン・交渉の場には、専門家に依頼する場合であっても必ず同席するようにしましょう。経営者本人でないと伝わらない部分もありますし、経営者本人の口から説明をすることで、経営改善への意欲が伝わる可能性が高まります。
〇基本的には資料で完結させる
リスケジュールの可否を決めるのは、プレゼンや交渉に対応する担当者ではありません。担当者はその情報を本部へと共有し、最終的には本部が決断を下すことになるでしょう。
したがって、口頭で伝えた情報は、担当者が情報を共有する際に漏れてしまう恐れがあります。そのリスクを考慮して、プレゼンや交渉の内容は資料を見れば全て分かるようにするべきです。
実際の面接では、口頭によって担当者により深く理解してもらうことを意識し、資料の情報を補足する程度に留めましょう。
■リスケジュールをするメリット・デメリットは?
ここまでご紹介してきたリスケジュールは、会社にとってメリットがある反面で、当然デメリットも存在しています。いくら資金繰りが厳しいからと言って、メリットよりもデメリットのほうが大きい状況では、リスケジュールを進めるべきではありません。
そのため、リスケジュールを検討している場合は、メリット・デメリットを細かく比較した上で、行うべきかどうかを慎重に判断することが大切です。では、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのかについて、以下で詳しく見ていきましょう。
〇リスケジュールのメリット
・返済条件の変更により、月々の返済負担が軽減する
・会社のキャッシュが増えることで、経営状況が好転する可能性がある
・債務者区分の低下を防止できる
リスケジュールのメリットは、何と言っても返済の負担が軽減されることです。その結果会社のキャッシュが増えれば、停滞している事業を進めたり、新たな事業に取り組んだりすることで、経営状況が好転する可能性があるでしょう。
また、金融機関は全ての債務者を区分しており、借入金の返済遅延が生じた場合には、区分を「正常先」から「要注意先」、さらに遅延が続くと「要管理先」に下げて、融資に消極的な姿勢を見せるようになります。ただし、リスケジュールによって経営改善計画が評価されると、「要管理先」への区分低下を防止できる可能性があるとされています。
〇リスケジュールのデメリット
・返済金額が増える可能性がある
・リスケジュールが終わるまでは、新規の融資を受けられない
・会社の信用が失墜する可能性がある
リスケジュールを申し入れると、金融機関によっては返済期間を延ばす代わりに、金利の引き上げを提示してくることがあります。このケースでは、月々の返済負担は軽減されますが、最終的に支払う返済金額は増大してしまいます。つまり、長い目で見れば会社の損失が増える可能性があるので、慎重に交渉を進めることが大切になるでしょう。
また、リスケジュールが終わるまでは、基本的に新規の融資を受けることができません。リスケジュールが終わると、一般的には通常の返済条件へと戻されますが、この円滑に返済できる状況を半年程度は続けないと、融資を受けることは難しいとされています。
さらに、会社の信用が失墜する可能性がある点にも、細心の注意を払う必要があるでしょう。特に、リスケジュールをしたことが社外に漏れると、経営状況が悪化している印象を持たれるので、会社の信用は失墜します。その結果、顧客や取引先が減少したり、資金調達がさらに難しくなったりする可能性も考えられます。
このように、リスケジュールには会社の経営状況に影響するデメリットも見られます。上記のメリットとデメリットを見比べた上で、本当にリスケジュールをするべきかどうか慎重に判断することが大切です。
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
借入金の返済に悩んでいる場合は、ただ黙って返済遅延の状態になるよりも、リスケジュールによって返済条件を変更することが望ましいと言えます。ただし、リスケジュールにもデメリットやリスクがあるので、金融機関に交渉する時期については慎重に判断する必要があるでしょう。
また、借入金の返済に悩まされたら、新たに資金を調達する方法も効果的な手段になり得ます。例えば、事業の売掛金を売却することで資金を得られるファクタリングを活用すれば、短期間で借入金の返済資金をねん出できる可能性があります。
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