ビジネスコンテストとは、参加者が高い完成度や新規性を持たせたビジネスプランを作成し、その優劣を競うコンテストのことです。各プランの優劣を判断するのは主催である国や自治体、企業などであり、参加者は意欲の高い起業家や学生が中心なので、特に成績上位作品においては現実的に優れたプランも多く見られます。
中でも、ビジネスコンテストの優勝作品からは、ビジネス成功の法則を見出すことができます。これから事業計画を考える起業家にとっては、そのような法則が大きなヒントになるかもしれません。
そこで今回は、ビジネスコンテストから学べる、ビジネス勝利の法則をご紹介していきましょう。
■ビジネスコンテストから見る!経営で勝利する6つの法則
ビジネスコンテストの成績優秀者は、資金面などでのサポートを受けられるケースも多いので、そのままのプランで起業する方も珍しくありません。中には、もちろん事業として成功している方も見られるので、ビジネスコンテストの優勝作品は起業家にとってヒントになるはずです。
以下では、ビジネスコンテストの優勝作品を例に挙げて、経営で勝利する6つの法則をご紹介していきます。
【その1】現実的な初期費用を設定する
ビジネスコンテストと聞いて、「斬新なアイディア」「画期的なシステム」といったイメージを持たれる方も多いことでしょう。確かに、これらのポイントが重視されるコンテストも見られますが、ビジネスコンテストにおいては「事業の実現性」も強く求められます。
例えば、数億円にも上る初期費用がかかるプランは、現実的には起業家ひとりで資金調達をすることが難しいので、アイディア自体は優れていても評価されないことがあります。そのため、ビジネスコンテストの優勝作品・上位作品を見ると、現実的な初期費用が設定されているプランが多く見られます。
例えば、2012年に開催された「東三河ビジネスプランコンテスト」では、初期費用を12万円の少額に設定した作品が最優秀賞を受け取っています。現実社会に置き換えても、初期費用のほとんどを自己資金でまかなえるプランは、リスクが低く実現性が高いと言えるでしょう。
【その2】社会的な貢献度が高い
ビジネスコンテストでは、社会的な貢献度が高い作品も評価される傾向にあります。貢献度が高ければ、その分商品やサービスの評価は高まりますし、その結果として会社に多くの利益が生じるためです。
2015年に開催された「プレゼン龍」では、海外旅行者の不安や迷いを解決したり、現地人しか知らないような特別な情報を提供したりするプランがグランプリを受賞しました。困っている人々を助けることに重点を置いた事業は、ほかのコンテストにおいても評価されやすい傾向にあります。
現実社会においては、一般の方からの評価が、結果として金融機関からの評価につながるケースも見られます。つまり、社会に貢献できる事業は一定の需要を期待できる上に、資金調達にも困りにくいと言えるでしょう。
過去の受賞プラン | ビジネスプランコンテスト「プレゼン龍」
【その3】既存する技術や製品より、優れたモノを作る
これは当然とも言えますが、既存する技術や製品より優れたモノを作らなければ、商品・サービスの需要は高まりません。そのため、事業計画を作成する際には、既存する技術・製品の課題を全て明らかにし、その課題を解決できるアイディアを考える必要があります。
2012年に開催された「eco japan cup」では、汎用元素のみで作られた高性能透明断熱シートを考案したプランが大賞となりました。このプランでは、レアメタルが使用された従来の高性能透明断熱シートの課題が、新しいプランによってしっかりと解決されています。
既存する技術や製品をマネしただけでは、その事業が高く評価されることはないでしょう。技術などをマネするのではなく、新しいアイディアによってさらに質の高い技術・製品を生み出すことが大切です。
【その4】さまざまな分析が行われている
ビジネスプランの質を高めるには、多くの分析をする必要があります。多方面から分析を行い、課題や欠点への対策をその都度考えることで、プランの実現性や利益性を高めることができるためです。
学生を中心としたコンテスト「WEBプロモーショングランプリ」では、SWOT分析や社会環境分析、競合分析がしっかりと行われたプランがグランプリを受賞しました。また、ターゲット層を決めて市場分析をすることで、具体的な客層の人数も導いています。
事業計画書においても、これらの分析は必要不可欠と言えます。分析には手間やコストがかかりますが、金融機関から融資を受ける際にも、事業内容の分析結果は必須となるでしょう。
【その5】現代の社会問題に着目している
高齢化問題や特定地域の過疎化など、現代の日本はさまざまな社会問題を抱えています。社会問題は国全体で取り組むべき課題とされているので、これらの社会問題を解決に導くビジネスプランは、多くのコンテストで評価されやすい傾向にあります。
2013年に開催された「Digital Youth Award」では、高齢者の雇用を創出し、地域社会の活性化につながるプランがグランプリを受賞しました。もちろん、ビジネスの世界では事業の利益性が重要となりますが、社会問題としっかりと向き合った事業は、将来性があると評価されることもあります。
現代の社会問題に関する事業は、補助金・助成金制度を利用する上でも、有利に審査を進められる可能性があるでしょう。
Digital Youth Award 結果レポート | Hello, NEW PC. ~社会人的パソコン使いこなし術~ | Digital Youth
【その6】継続性の高い事業を選ぶ
会社の経営を安定させるには、継続性の高い事業計画が必要となります。一時的に多くの商品やサービスを売り上げても、その状態が持続しなければ多くの在庫を抱える結末になってしまうでしょう。そのため、ビジネスコンテストにおいては、継続性の高い事業も高く評価されています。
2012年に開催された「Launch Pad」では、スマートフォンやタブレットユーザーを対象にした、絵本コンテンツを提供するプランが優勝に輝きました。ほかのコンテストにおいても、継続的にユーザー数を期待できるスマートフォンやタブレットに関する事業は、高く評価されているケースが多い傾向にあります。
実際の社会では、流行を取り入れたビジネスプランも多く見られますが、流行は時間の経過によって必ず去っていきます。ほとんどの事業は流行の影響を受けますが、流行が去った後でも問題なく経営できるように、継続性の高い事業計画を目指していきましょう。
IVSの恒例ピッチコンテスト「Launch Pad」、12社がしのぎを削る – CNET Japan
■ビジネスコンテストの失敗例から学ぶ!ビジネスモデルを考える際の注意点
上記でご紹介してきたように、ビジネスコンテストの優秀作品からは、実際の事業計画に関するヒントを得ることができます。しかし、失敗しない事業計画を作成するためには、失敗例にも目を向ける必要があるでしょう。
ビジネスプランの失敗例からは、ビジネスに存在するリスクや、具体的なリスク対策を学ぶことができます。そこで以下では、ビジネスプランの失敗例を軽く交えつつ、ビジネスモデルを考える際の注意点をご紹介していきましょう。
【その1】ビジネスの目的を明確にする
目的が定まっていないビジネスプランは、コンテストにおいても評価されにくい傾向があります。例えば、「ただ利益を追求するための事業」は、世間から注目されることが難しいので、コンテストだけでなく現実社会においても、高い評価を受けられない可能性があるでしょう。
したがって、ビジネスプランを作成する際には、利益以外の明確な目的を設定しておくべきです。最終的にどうなりたいのか、社会に対してどのように貢献したいのかが明確になると、実現に向けた必要な準備なども見えてくるでしょう。もちろん、ターゲット層へのアピールにもつながります。
また、事業に明確な目的を設定しておくと、金融機関の融資審査を受ける際にも審査担当者を説得しやすくなります。
【その2】事業内容にメリハリをつける
内容にメリハリがない事業も、コンテスト・現実社会の両方で評価されません。強みがない事業内容、特に魅力的なポイントが分からないビジネスプランは、消費者も取引先も興味を示さないためです。
事業にメリハリを持たせるには、あらゆる可能性を考えてみることが重要です。同様の事業内容でもビジネスプランは人それぞれですし、事業内容を細かく紐解くことで、さらに適したプランが見つかるかもしれません。
自分が持っている知識とスキルだけでビジネスプランを作ると、どうしても魅力の少ないプランになってしまいがちです。そのため、プランを作成する前に時間をかけて情報収集し、多くのビジネスプランに目を通してみましょう。
【その3】ターゲット層を明確にする
これは当然ですが、需要がない商品やサービスで事業を続けることはほぼ不可能です。需要がなければ利益は生じないので、会社を経営することができません。
ビジネスコンテストにおいても、アイディアが斬新なだけであり、利益性のないプランは評価されないでしょう。社会から評価されるには、斬新さと利益性を両立する必要があります。
そのため、事業計画を練る際には、必ずターゲット層を明確にしておきましょう。ターゲット層を明確にすることで、ターゲット層のどのような需要に応えるのか、需要に応えるにはどんな課題を解決するべきなのかが見えてきます。
可能であれば、そのターゲット層に何人の消費者がいるのか、加えて消費者の傾向なども分析しておきましょう。
【その4】資金の調達方法が明確でない
ほとんどの事業には設備資金と運転資金が必要であり、これらの資金を調達できなければ、事業をスタート・継続させることができません。そのため、初期費用は算出されているものの、その初期費用をねん出する手段が見当たらないビジネスプランは、コンテストでも現実社会でも評価されないでしょう。
現実社会で会社を経営すると、資金を調達する機会は多くあります。例えば、起業をする際には多くの資金が必要となりますし、売掛金が多く存在している状況では、一時的に会社のキャッシュが少なくなってしまいます。そのため、事業計画を作成する段階で資金調達の方法を確保し、スムーズに経営することを目指しましょう。
■まとめ
質の高い事業計画を作成するには、情報収集に多くの時間をかけて、さまざまなところからヒントを得ることが大切です。実際に存在するビジネスプランからもヒントは得られますが、ビジネスコンテストにも思わぬヒントが転がっているかもしれません。
また、ビジネスプランに目を通す場合は、成功例だけでなく失敗例にも着目するべきです。今回ご紹介したように、失敗例からも学べる部分は多くあるので、「自分だったらどのように対策をするのか」を考えながら、失敗例にも目を通すようにしましょう。