国税庁の調査では、平成26年度の日本全体の法人数は規模の大小含めて、261万6,485社とされています。複数の企業を束ねる社長もいるため、実際の社長の数はこの数字を少し下回ると考えられますが、それでも日本人の約2%、100人に2人の割合で社長がいることになります。
あなたの知人の中にも、何人かは社長になっている人がいるのではないでしょうか?大きな企業の社長と、零細企業の社長では仕事の内容も求められる資質も異なってきますが、法人のトップとしての責任があることには変わりがありません。また、人の上に立つ仕事であるため、やはり、一般的な人とは異なる特徴を持っています。
そこで今回は、社長になる人の10の特徴に加え、社長になるメリット・デメリットをご紹介していきましょう。
目次
【その1】強い欲を持っている
社長になる人に共通しているのは、強い「欲」が企業経営の原動力になっているということです。欲には、「社長になりたい」、「お金持ちになりたい」、「豊かな生活を送りたい」などの自己の欲求を満たすための欲、「事業を通じて社会に貢献したい」、「雇用を増やして地域に貢献したい」など、周りから認められたり尊敬されたりしたいという、尊厳欲求を満たすための欲などがあります。それぞれ持っている欲求は違いますが、社長にとってこれらの欲が強い原動力となっていることに違いはありません。
アメリカの心理学者、マズローが提唱する「欲求5段階説」にあるように、人はひとつの欲求が満たされると、より高次元な欲求へと進展していくといわれています。社長になる人は「お金持ちになりたい」という欲が満たされると、次は「社会貢献して皆から尊敬されたい」という、より高度な欲を満たすために行動し、常に自己実現のための強い欲によって突き進んでいます。
このように、強い欲を自分だけでなく、人のため、世の中のために使うようになった社長が大成した社長といわれる人の特徴です。
【その2】心身ともにタフである
社長になる人は、タフでなければなりません。誰よりも多くの責任を抱える社長には、精神的に大きなプレッシャーがのしかかります。事業として一度やると決めたことはどんな困難に直面しても、やり遂げなくてはなりません。もし、社長が途中で挫折して逃げてしまえば、会社の危機に直結してしまうでしょう。
また、企業経営においては常に意思決定を迫られるプレッシャーもかかります。重要な意思決定で間違った判断をすることはできません、その都度最善の選択肢を見出していくことが求められます。
社長にはこのように、日々精神的に大きなプレッシャーがかかります。そのため、誰よりも心がタフである必要があります。そして、タフな心を維持するためには、肉体的にもタフである必要があります。また、社長の激務をこなすためにも、肉体的なタフさは重要です。
心身は一体です。心が弱くなると体への不調も現れます。心身ともにタフであり、どんなプレッシャーもはね退ける精神力、どんな激務やストレスにも耐えられる強靭な肉体、この2つを兼ね備えていることが社長になる人の特徴です。
【その3】人脈が豊富
社長になる人は、豊富な人脈を築いています。若いときから顔が広く、学生時代でも常に多くの人から慕われて、人の輪の中心にいることが多いのが、社長になる人の特徴です。また、どことなく愛嬌があり自然と人が周りに集まってくることも、社長になる人に見られる傾向です。
人脈が広いということは、それだけビジネスチャンスをつかみやすいことにつながります。事業を助けてくれる人、アイデアの実現をサポートしてくれる人など、自分の事業を進めるうえでのパートナーが身近にいれば、成功のチャンスをものにする可能性も高まります。
また、成功している社長の人間関係は、ただ顔が広いというだけではなく、「この人の頼みならば、絶対に断らない」「この人のためならば、努力は惜しまない」など、強い信頼関係によってつながっていることも特徴です。このような人脈を築くためには、当然自らも人のために努力を惜しまず、全力で助ける心構えでいることが大切です。
【その4】完璧ではなくスピードを重視する
社長になる人は、特にスピード感を重視します。日本人は完璧を求める傾向が強く見られます。しかし、目まぐるしく変わる世の中に適応して、会社のかじ取りをしていく必要がある社長は、素早い意思決定と迅速な行動が求められます。商品開発でも、細部まで細かくこだわって完璧主義で仕上げていては、あっという間に他社に先んじられてしまいます。
特にIT化が進んだ現代における経営では、世の中のトレンドを素早く察知して、いち早くサービスや商品を投入することが成功へとつながります。ただし、だからといって完璧を目指さないわけではありません。スピードを重視して行動し、そのうえで完璧を目指して磨き上げてゆく。この心構えが成功している社長の特徴です。
【その5】他人に左右されない
社長になる人は、ほかの人の意見に左右されてはいけません。「朝令暮改」という言葉がありますが、一度決めた事業方針や計画などを外部からの意見に惑わされコロコロと変更するようでは、社員はどうしてよいかわからなくなり、会社全体の業務が滞ります。
ただし、これは人の話に耳を貸さないこととは異なります。社長は会社の経営に全責任を負っています。事業計画や経営方針を作り上げていく段階では、部下や取引先などからの意見にはよく耳を傾け、最善の方法を導き出す必要があります。
しかし、一度意思決定をしたら、他人の意見に左右されることなく、突き進む必要があるでしょう。「責任を負わない人の話には左右されない」、そんな頑固さも時には必要です。
【その6】周りに依存しない
社長になる人は、社員やビジネスパートナーなどに依存してはいけません。会社におけるすべての事柄は、基本的にすべて社長の責任です。例えば、「景気が悪くて業績が悪化した」「部下が起こしたトラブルで、取引先から契約を打ち切られた」などのトラブルも、社長が責任を取るべきことです。
「部下のせいでこうなった」「景気が悪いから仕方がない」など、誰かのせいにするようでは社長は務まらないでしょう。社長は常に孤独であり、誰に頼ることもできません。誰にも依存せず、自ら行動を起こすこと、自分が何とかしなければならないと自然に思えること、そんな強い意志が社長には必要です。
もちろん、会社全体でチームとして動くことは重要ですが、基本的にはどのようなトラブルにも自分ひとりで立ち向かうように、強い意志を持つようにしましょう。
【その7】投資をためらわない
社長になる人は、必要な時にはためらわず投資をする傾向にあります。経営には投資がつきものです。事業の拡大に必要な設備投資、会社の将来のためには欠かせない人材への投資など、会社を成長させていくためには、さまざまな投資をしていく必要があります。
しかし、投資といっても会社のお金を無駄遣いすることとは違います。豪華な社用車を買ったり、無駄に交際費を使ったりすることは、投資ではなく浪費です。投資とは、何でも構わずお金を使うことではありません。
会社の成長に必要な出費かどうかを冷静に判断して、リスクを恐れず最適なタイミングで投資を行えること、それが社長には必要な能力といえます。将来的に利益につながると判断したものに関しては、お金を惜しまないようにしましょう。
【その8】好奇心や探求心が強く、常に学習をする
社長になる人は好奇心や探求心が強く、貪欲に学び続けるという特徴があります。顧客のニーズや時代の変化、社会情勢など、広くアンテナを張って「なぜこうなるのだろう?」「どのような商品やサービスを開発するべきだろう?」などと、常に学び続けています。
また、自分の知らないこと、他人の体験談や失敗談などにも強い興味を持ちます。新しい知識を貪欲に吸収し、他人の経験や失敗までも自分の知識にしてしまう。そして、それを自分の会社の成長へと結びつけて、利用できる。そのような能力が、社長として成功するためには必要です。
常に学習することを怠らず、さまざまなことに対して疑問を持つようにしましょう。
【その9】失敗をしてもネガティブにならない
社長には失敗がつきものです。「なぜ失敗したのか?」「何が問題だったのか?」を考えて失敗から学び、次の一手につなげていかなくてはなりません。自己分析に基づいたトライ&エラーをくり返しながら、多くのことを学び、自分のものにしていくことが社長には必要です。
一度の失敗でひどく後悔し、いつまでも悔やんでいるような人は社長には向いていません。社長は社員を引っ張っていく立場にあるので、常に前を向いて進むことが大切です。
会社を引っ張る社長がいちいち落ち込んでいては、会社全体に影響して社員たちも不安になります。落ち込んで悔やんでいる暇があるなら、すぐにでも打開策を見つけ出して、社員と一丸になってそのピンチを乗り越えていく。そんな社長が会社を成長させます。
【その10】懐が深く、常に冷静
社長になる人には、冷静さが必要です。周りがパニックになってバタバタしているような場面でも、冷静に状況を分析して、正しい対策をとることが社長の仕事です。社長がパニックになっていては、会社は収拾がつかなくなってしまいます。何事にも動じない「不動心」を持っていることが、成功する社長の特徴でもあります。
また、社長には人徳も必要です。懐が深くその人がいるだけで周りの人が安心できる存在になれれば、社員も落ち着いて仕事にあたれるでしょう。困っている人がいたら相談に乗ってあげられる心のゆとり、さまざまな個性がある人たちを束ねていく包容力など、社長にはこれらのような懐の深さが必要です。
■社長のメリットって何だろう?
上記では、社長の特徴についてご紹介してきました。では、そもそも社長になると、どのようなメリットを得られるのでしょうか?
社長は会社のトップであり、時には大変な仕事もひとりでこなしますが、その分以下のようなメリットもあります。
〇年収が多い
社長は頑張れば頑張った分だけ、報酬を受け取ることができます。会社の業績を向上させ、大きな利益を獲得すれば、会社員では得られないような年収を得ることも可能です。
労務行政研究所の調査によると、2013年の社長の平均収入は約4,000万円とされています。この金額は、一般的なサラリーマンでは稼ぐことが難しいといえるでしょう。
将来的に上場し、中小企業から大企業へと会社を成長させれば、年間1億円以上の収入も夢ではありません。
〇仕事を選べる
仕事の内容を選べる点は、社長の最大のメリットと言えるかもしれません。社長は誰かから与えられた仕事をこなすわけではなく、自分で仕事を探す立場です。そのため、興味を持っている仕事、得意な仕事などを選ぶことができます。
ただし、経営を安定させる上では、他人がやりたがらない仕事もある程度はこなす必要があるでしょう。
〇仕事環境を自分で作れる
サラリーマンから社長になると、仕事の環境も大きく変わります。労働時間を自分の判断で設定し、時間を自由に使うことができます。働く時間の自由度が高ければ、趣味や家庭サービスの時間も大切にすることができるでしょう。
ただし、労働時間があまりにも少なすぎると、経営に悪影響が生じたり、社員のモチベーションが下がったりする恐れがあります。
〇社会的地位
社長は社会的にも認められる地位となります。個人事業主の「店長」などと呼ばれているオーナーと、株式会社○○の代表取締役社長という立場では、社会的な信用度が大きく変わります。
また、経営者の経験は社会的な実績にもなるので、将来的に就職活動や転職活動を有利に進められる可能性があります。
〇周りの人が変わってくる
社長になると、周囲に集まる人も変わってきます。社長は自然と、ほかの会社の社長との付き合いが増えてくるものです。
ビジネスパートナーや取引先など、直接ビジネスの話をする相手の地位も高くなってくるため、さらにビジネスチャンスをつかむ機会を得ることができます。
■社長のデメリットって何だろう?
社長にはメリットがある反面で、もちろんデメリットも存在しています。これから経営者・起業家を目指す方は、デメリットも把握した上で今後の計画を立てるようにしましょう。
〇資金調達をする必要がある
大企業の場合は別ですが、社長には資金繰りの心配が常につきまといます。業績が右肩上がりの場合は次の設備資金の調達、業績が悪くなれば運営資金の資金繰りに悩まされます。
基本的には、業績がどちらに転んでも資金調達をする必要性が生じるので、資金の調達方法については常に考えておく必要があるでしょう。
〇大きな責任を負う
社長は自分の生活だけではなく、雇用している従業員の生活を守る責任も負わなければいけません。従業員の生活が苦しくなると、ほとんどの方は転職を考えることになるので、結果として会社の首を絞めることになります。
「自分の判断が他人の生活を左右する」という部分をしっかりと意識し、熱意を持って仕事と向き合うようにしましょう。
〇生活や収入が不安定
社長は、会社の業績が直接自分の生活に跳ね返ってきます。業績の良いときには働き方の自由度が高まりますが、ひとたび業績が悪化すれば収入は不安定になるでしょう。
また、業績が悪化した場合には、会社を存続させるために自分の資産を売却する覚悟も必要となります。一時的に贅沢な暮らしができても、将来的に多額の借金を抱えるリスクがあるので、短期間で売上が伸びたからと言って安心することはできないでしょう。
■まとめ
いかがでしたか?あなたは社長としての特徴を備えていたでしょうか?
社長は責任が重く、大きなプレッシャーがかかる立場ですが、その分やりがいやメリットがあります。ただし、従業員の生活を支えており、社長の判断によっては従業員にリスクが及ぶ可能性がある点は、しっかりと理解しておくべきでしょう。
今回ご紹介した内容から、「社長にはどのような能力や考えが必要になるのか」を見極め、望ましい人物像になれるように努力していきましょう。