社会情勢が混沌を極める、そんな時代こそ、起業のチャンスです。かつての1929年の世界恐慌の時でさえも、世界同時不況をチャンスとみてビジネスに成功した人もいるのですから。さらには、マイナス金利を黒田総裁は打ち出していますので、日本政府の方針は起業を後押ししていると言っても言いすぎではないでしょう。
しかし、起業するというのはそう簡単ではないのも事実です。その最たるものが「資金不足」です。先立つものはなんとやら、で、せっかく崇高な理念をもって起業したいと思っていても、資金がないからと諦めている人は多いかもしれませんね。
でも、せっかくの起業のチャンスを資金不足という理由で諦めるのはもったいないです。今すぐに、というのは無理かもしれませんが、1年かけてじっくり準備を進めれば、起業することは十分可能です。そして、資金不足を解決する切り札こそが創業融資なのです。
創業融資の話に入る前に、あなたがどのぐらい本気で起業したいか、その本気度をセルフチェックなさって下さい。その上で、創業融資を徹底活用する方法をご紹介いたします。
目次
今が創業のチャンス
政府が日本の開業率を現状の5%から10%に引き上げようとしています
ここで、一つ良い情報をお伝えしましょう。 それは、日本政府が“成長戦略”の一環で、日本国内にいる起業したい人を強力に後押ししていることです。 日本の開業率はせいぜい5%で、アメリカの10%に比べて極めて低い水準です。この開業率を、政府は10%に引き上げようとしているのです。
なぜ政府は起業を後押しするのか?
政府が起業を後押しする理由はいろいろ考えられますが、一番大きな理由は、日本という国の将来を考えてのことでしょう。すでに日本の大手企業の多くが、海外、とくに新興国の経済発展におされ、衰退の一途をたどっています。その典型例が日本の家電メーカーです。かつては世界を牽引してきた家電メーカーが、今は目も当てられない状況です。
また、三菱自動車の燃費データ不正問題に象徴されるように、日本のお家芸とも言われた自動車業界も非常に厳しい状況です。不正をするということは、不正をしなければ自動車が売れないということを意味しているのです。
そのような状況下でこのまま手をこまねいていたら、日本の産業が空洞化し、今後急速に少子高齢化が進む日本経済が破綻してしまいかねないのです。
開業率の内訳
では、日本ではどのような産業が起業されやすいのでしょうか?
比較的開業率が高いのは、「情報通信業」「金融・保険業」です。インターネットの発達に伴い、これらの産業が伸びているのはうなずけます。ただし、廃業率も同様に高いです。「飲食店」は昔から開業率が高い業種ですが、こちらも安易に開業に踏み切りやすい反面、すぐに挫折してしまいやすい業種です。「医療・福祉」は、近年の高齢化に伴って、デイサービスなど介護事業が急速に進展していることから、開業率の高さにつながっています。
マイナス金利は起業に有利!
そのような日本の開業に関する状況に加え、政府がマイナス金利に踏み込んだことも大きな優位点です。日本政府が景気刺激策としてゼロ金利政策を始めたのは1999年のことですが、2016年に入り、日銀の黒田総裁が、さらにその上を行くマイナス金利政策を打ち出したのです。その効果が十分に出ているかどうかはともかく、政府が開業率を本気で10%にしようとしている姿勢がうかがえるでしょう。
さて、このように起業するのに有利な条件は整っています。しかし、それはあくまで条件の話であって、一番大事なのはあなたが本気で1年以内に起業に成功したいかどうかです。そこで、簡単なセルフチェックをご用意しましたので、あなたの本気度をはかる参考になさってください。
今すぐセルフチェック!あなたは本当に開業したいですか?
チェックその① 起業に必要なメンタルは備わっているか?
メンタルの重要性
「メンタル」というと少し難しく捉えられるかもしれませんが、要は起業したいという気持ちが本物であるかどうか、ということです。このメンタルが弱いと、資金不足などの困難にぶつかったときにその壁を乗り越える力が湧いてこず、簡単に起業を諦める結果になってしまいかねないのです。 また、もし起業に成功しそうになっても、メンタルが弱いといざという時に起業をためらって、せっかくのチャンスを棒に振ってしまう、ということさえあるのです。
メンタルの高め方
メンタルは、簡単に高まるものではありません。子どもの頃からずっと起業を夢見ていて、具体的なイメージをずっと思い描いておられたのであれば、起業に対するメンタルは高いと言えます。 そうでなく、なんとなくサラリーマン生活に嫌気がさして起業でもしてみようかな、という程度のメンタルであれば、起業の途中で挫折したり、起業してもすぐに廃業する可能性が高いです。
メンタルを高める方法として、同じような起業をこころざす仲間と一緒の時間を過ごすことは有効です。「類は友を呼ぶ」と言う通り、そのような人と一緒に議論したり、プライベートの時間を過ごすことで、自分のメンタルも引き上げられます。
実際に顔を合わせるのが一番良い方法ですが、その時間がとれないのであれば、インターネットを活用して連絡を取り合うという方法もあります。または、可能であれば実際に起業して成功している成功者と頻繁に連絡を取り合うのも良いでしょう。
チェックその② 使命感があるか?
責任感と使命感の違い
メンタルと少し関連しますが、あなたが「使命感」を持っていることも起業に大事です。これは、あなたが開業したお店や企業が社会にとってどのように役立つか、そして役立たせていくかを追い求める上で大事です。
この「使命感」は「責任感」と似ていますが、両者は大きく違います。両方とも他の誰かのためにやる、という意味で一緒ですが、「責任感」が上司など他の誰かの指示で行うことなのに対し、「使命感」は自分の意思で行うという違いがあります。会社に勤めている限りは、「責任感」だけで十分かもしれませんが、開業して自分がトップに立つのであれば、「使命感」は必要不可欠です。
チェックその③ 周囲・家族の協力は得られるか?
ドリームキラーの存在
メンタルも整い、使命感もしっかりもって、いざ1年後の開業にむけて準備をするとしましょう。でも、その意思を妨げる、「ドリームキラー」という存在が居るかもしれません。それは会社の上司や同僚であったり、親しい友人であったり、家族や親戚であったりします。
彼らは、必ずしも悪意を持っているわけではありません。むしろ、あなたを心配して善意であなたの開業を止めるのです。だからこそやっかいなのです。もし周囲が全てあなたの開業を阻止しようと必死に止め、四面楚歌の状況で開業に踏み切れるでしょうか?
1人でも協力者がいれば百人力
きっと、周りが全て反対すれば、あなたがいくら強固な意志の持ち主であっても、1年後の開業の時まで精神が正常に保てないでしょう。でも、1人でもあなたを真剣に支えてくれる協力者が居れば、百人力です。
「思考は現実化する」という著書の中で、ナポレオン・ヒル氏が「思考は現実化する」の執筆を無給で依頼されたことを家族に打ち明けたとき、家族や親戚は当然のごとくたった1人を除いて猛反対しました。そのたった1人とは、ヒル氏の義母でした。その義母は、子どもの頃から変わり者だったヒル氏をことあるごとにほめてくれる唯一の存在でした。そのような存在があなたにもいるのであれば、最大の心の支えになるでしょう。
会社を作るのに必要な4要素
①目的と理念
4つのセルフチェックはいかがでしたか?大丈夫であれば、次に会社をつくるために必要な要素を備えているかに移りましょう。 まず、会社を作る「目的と理念」は大事です。これは、大きな会社であれば社訓や企業理念を著書などで公開していますので、参考にしましょう。
近年の不祥事を行っている企業の多くは、創業時の目的や理念を忘れてしまったかのようなケースも多く見られます。そうならないように、なぜ起業したいのか、その目的と理念については、夢に出てくるぐらい繰り返し自分で唱えておくぐらいにしましょう。
②市場リサーチ
企業の失敗の原因として、起業したいというあなたの思いと、実際の消費者が求めているものとのミスマッチがあります。例えば、スマートフォンが全盛の現代で、ガラケーやポケベルを取り扱う専門店を開業しようとしても、成功は難しいでしょう。 また、1年後開業を目指すのであれば、現代のトレンドでなく、1年後のトレンドを予測する先見性も必要になります。その元となるのが市場リサーチです。
書籍やインターネットで調べることに加えて、現場において肌で感じる市場リサーチも大事です。飲食店を開きたいのであれば、実際に有名店に食べに行きましょう。アパレル関係であれば、店舗に行って試着などしてみましょう。実際に足を運ぶことで、初めて気づくこともあります。
③同志を集める
同志の存在は、例え1人だけの力で起業する場合であっても必要不可欠です。困った時にアドバイスしてくれたり、援助してくれる存在や、ビジネスパートナーは欠かせないからです。もちろん、一緒に仕事をする仲間やサポートしてくれる仲間も大事です。
真っ先に思い浮かぶのが家族でしょう。そのために、先にも述べたように家族の協力が得られるかどうかは企業の成功への大きなポイントです。また、会社を退職するときにも、会社の仲間や取引先などとの関係が良好であれば、見込み顧客になるだけでなく、仲間として助けてくれる可能性もあります。
④お金(創業融資)
①~③はとても大事ですが、やはり現実的な問題として、お金が一番気になる問題です。いくら理念がしっかりしていても、リサーチが万全でも、仲間が協力してくれも、開業に必要な資金が乏しかったら、開業は絵に描いた餅に終わってしまいかねません。
あなたがこれまで稼いできたお金と、これから1年の間に開業に備えて必死にお金を稼いだり貯金したりされるかもしれませんが、起業には予想外の出費が伴うものですし、予想通りに売上がない場合は貯金もあっという間に底をついてしまうかもしれません。 ですので、自己資金だけでなく、資金調達する必要があるのです!
1年以内に成功するための最大の課題は資金調達
ここで興味深いデータがあります。それは、
“55.7%の人が「資金調達が課題」と創業萌芽期に回答している” (中小企業白書2013年版 60ページ)
というデータです。 なんと、過半数の創業準備をしている人が、資金調達の難しさを経験しているということです。これはあくまで創業前や創業準備をしている段階のデータなので、創業後の資金調達を含めると、さらに多くの人が資金調達を課題としていることでしょう。
創業融資を受ける方法2パターン
パターン① 日本政策金融公庫
おすすめ2パターン
創業融資を受けるおすすめの方法は2パターンあります。「日本政策金融公庫」からの融資と、「地方自治体の制度融資」の利用です。
銀行の利用は?
融資というと銀行がまず頭に浮かぶかもしれませんが、新規開業資金の融資という目的には銀行は適していません。ただ、事業を継続させていく上で、銀行とのやりとりは必要ですし、そのためにマイナス金利は有利な状況ではありますが、ここでは詳しく触れません。
ここが便利!日本政策金融公庫のメリット
日本政策金融公庫を活用すると、いろいろなメリットがあります。利率が安い、保証人が不要などです。これについては、次章で詳しくまとめます。
パターン② 地方自治体の制度融資
日本政策金融公庫の他にも、地方自治体の制度融資を活用する方法もあります。これは、「地方自治体」「信用保証協会」「金融機関」が三位一体となって融資をスムーズに行う制度です。
「信用保証協会」は、新規開業したい人にとって頼もしい存在です。これまでサラリーマンをしていて開業の実績がなくても、信用保証協会が金融機関に対し資金調達を促してくれるのです。自治体によって大きく融資内容が異なりますので、日本政策金融公庫と比較して利用を検討されても良いでしょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度を徹底活用すべき
日本政策金融公庫には、「新規開業資金」、「新創業融資制度」、「経営力強化資金」の3つが利用できます。その中で一番おすすめなのが、「新創業融資制度」です。以下にそれぞれの特徴を表にまとめました。 注目していただきたいのが「自己資金要件」です。 ただし書きとして「創業する業種で6年以上のキャリアがあれば、自己資金が不要」という要件は、サラリーマンとして実績がある人にとっては心強い優遇措置ですね。
新規開業資金の活用
担保・保証人 | 必要 |
融資限度額 | 7,200万円以内(うち運転資金4,800万円以内) |
金利 | 5年以内返済の場合、 1.25~1.85% |
返済期間 | 設備投資:20年以内、運転資金:7年以内 |
新創業融資制度の活用
担保・保証人 | 不要 |
融資限度額 | 3,000万円以内 注)自己資金要件 |
金利 | 5年以内返済の場合、 2.35% |
注)自己資金要件あり 「事業開始前、事業開始後で税務申告を終えていない場合には、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要」 ただし、創業する業種で6年以上のキャリアがあれば、自己資金が不要
経営力強化資金の活用
担保・保証人 | 不要 |
融資限度額 | 2,000万円以内 |
金利 | 5年以内返済の場合、 1.25~1.85% |
返済期間 | 設備投資:20年以内、運転資金:7年以内 |
どうしても起業したいけれども資金がえられない、そんな時は?
SOHO
どうしても資金が貯まらず、起業したくてもできない場合、諦めるしかないのでしょうか?実は少ない資本でも起業できる方法はあります。その一つがSOHOです。パソコンやスマホを通じてインターネットを活用し、会社に行かずに自宅など小規模のオフィスで仕事をする形態のことを指します。大企業でもSOHOとしての採用を薦めているケースもあるようです。
ですが、個人でSOHOとして仕事を受注、発注することで独立することもできます。これだと自宅以外に場所代はかかりませんし、パソコンや通信費さえ支払えば、それ以外の資金もそれほど必要がないのが特徴です。
フランチャイズに加盟
次に、古くからある方法としてフランチャイズへの加盟も考えられます。フランチャイジーになることで、営業のノウハウや仕入れ、集客などを教えてもらうことができます。 ただし、多額の加盟金を取られることは覚悟しないといけませんし、フランチャイズ本部の意向を遵守しなければなりません。起業したつもりが、サラリーマンと同じような不自由さを感じてしまうかもしれません。
共同経営者探し
また、自分一人だけでなく、共同経営者を探して起業するという方法もあります。自分と同じ志を持つ人を探し、一緒に力を出し合えば良いのですが、どちらかがどちらかに依存するだけだったり、方向性の違いが出てしまったり、権力争いをしてしまったりと、共同経営者ならではの難しさもあります。
もし共同経営を目指すのであれば、ソニーの共同経営者を見習いましょう。ソニーの盛田昭夫氏と井深大氏は優れた共同経営者の典型例ですが、技術なら井深氏、営業なら盛田氏というように、お互いの持ち味を出し、二人三脚で起業に成功できたのです。
まとめ
1年というのは長いようで、あっという間です。ですので、1年以内に起業に成功しようと思ったら、一日延ばしでやるべきことをずるずる引きのばしていたら、あっという間に1年が経過してしまいます。
まずは起業したいという想いを明確にすること、そして、スケジューリングすることが大事です。その中で、資金、人材、場所、その他の問題が多く出てくることでしょう。それれらをスケジューリングするのです。
日本政策金融公庫から創業融資を得る場合も、準備をしっかりしておかないと、「その資金は何にいくら必要で、どう使うのですか?」などの質問に答えられずに、必要な融資が受けられない、ということになってしまいかねません。